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牛乳の飲み過ぎ問題、本当に骨粗鬆症に効果があるのか?死亡率が高まる、という論文は正しいのか??

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先日、男性の患者さんからこんな質問がありました。

「知り合いの女性が骨折しにくいように骨を強くするために牛乳を1日2ℓ飲んでいるけど本当に骨が強くなるの?」

骨を強くするために牛乳をガブガブ飲んでいる人の話

その女性は別に骨粗鬆症と診断されている訳ではないのに、飲み過ぎは良くないんじゃない、先生、といった内容でした。

その女性はテレビの健康番組か雑誌で今から(多分、40才台と予想)将来骨が弱くなると骨粗鬆症になって骨が折れやすくなるから、牛乳でカルシウムを補給しましょう的な知識を得て実行しているそうです。その男性は「足りないと言われていないカルシウムを摂りすぎると、逆にカルシウムが過剰になってなにか健康上の問題がでるのでは」とのご心配の様子でした。牛乳は戦後の日本人の栄養不足を学校給食で出すことで栄養状態を改善したので、健康的になるというイメージがあります(オッサン友達へ 生ぬるい牛乳は最悪でしたね)。

一方で牛乳はガンなどの原因になるのでは、との論文も出てきて「牛乳悪者説」をとる方も多くなっています。中には牛乳とか小麦粉などの日本へ普及されたのは世界を裏で操る巨大陰謀組織の策略であるという方もいますがそれは無視します。牛乳を生産している酪農家の皆様にとってはあまり良い話ではないのですけど、牛乳の飲み過ぎはあまり健康に良くない、って話がでていますのでそれをご紹介します。

もちろん牛乳って健康にいいんだよ、という論文も紹介しますので、果たしてどっちが本当なのか皆さんで考えてみましょう❗

牛乳の飲み過ぎの問題点

牛乳って栄養価に富んでいて、特にカルシウム補給ができるというイメージがあります。スエーデンの研究者が発表した論文は

◎牛乳を多く飲んでも骨折のリスクは低下しなかった
◎牛乳を飲みすぎたひとは死亡率が高い可能性がある

と,とにかく牛乳悪者説を導くものです。Milk intake and risk of mortality and fractures in women and men: cohort studies (BMJ 2014; 349) という題名の論文であり、方法としては39〜74歳の女性61000人と45〜79才の男性45000人を20年間調査したデータをもとに検討されたものです。牛乳を1日3杯以上飲む人と飲まない人を分けました。女性の場合、

◎たくさん牛乳を飲む人は死亡率が90パーセント高くなっていた
◎骨折する人は牛乳をたくさん飲む人の方が15パーセント多かった

という常識に反するような結論になっています。一方男性では死亡率も骨折率も牛乳の摂取量とは関連性がありませんでした。その一方で皆さんを混乱させるような結果も出ています。

「チーズやヨーグルトなどの乳製品を多く食べている女性は死亡率も骨折率も低くなる」という牛乳は健康に良くないけど、牛乳を加工した発酵乳製品は健康の味方である的な内容になっています。

多分、この研究者たちは牛乳に含まれるD-ガラクトースを悪者にしたい気持ちでいっぱいだったようです。というのもこのD-ガラクトースは長寿の敵であり、エイジングケアの敵としての論文が存在するからです(動物実験レベルですから、実際に人間を対象にした疫学でそのような論文は見当たりません)。

酪農農家の方を私は守ります、この論文の少し変なとこ見つけました❗

ラクトースってそれに耐性が有る民族とない民族があることが知られています(牛乳でお腹がゴロゴロする人は日本人に多いですよ)。それがこの論文の疫学的研究では考慮に入れられていませんので、この結果が即日本人に当てはまるわけではないのです。さらに、因果律を取り間違えている可能性が大です。

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<上記論文より 骨折と牛乳を飲む量との関係を表しています。

骨折のリスクが高いと言われた人が牛乳をがぶ飲みしていた可能性が全く排除されていません。つまり、今まで骨折の経験があったとか、骨粗鬆症を指摘された人がカルシウム不足を薬は服用しないで、牛乳で補おうと思ったかもしれないのです。骨折しやすい人ほどカルシウムを意識して補給するために牛乳を積極的に飲んでいる、ってありがちなことですよね。

牛乳が健康に良いという論文の方が多数です

じゃあ、牛乳って健康に良いの、悪いのって言われたら、「飲み過ぎはいけないけど、決して牛乳を飲んだから健康を害する訳ではない」としか言いようがありません。

例えば同じスエーデンの研究者によって「牛乳を含む乳製品、特に高脂肪のものは糖尿病のリスクを低くする」というものもありますし(Food sources of fat may clarify the earlier inconsistent role of dietary fat intake for incidence of type 2 diabetes) 、「大腸ガンと診断されたら牛乳でカルシウムを補給すると死亡率が低下する」って論文も存在します(「Calcium, vitamin D, dairy products, and mortality among colorectal cancer survivors: the Cancer Prevention Study-II Nutrition Cohort.」J Clin Oncol. 2014 Aug 1;32 (22) :2335-43. ) 。

食事は毎日のものではありますから、健康を意識するのは仕方がないことです。でも、あまりにも健康重視の食生活を送った場合、ご自分の極端な食生活を否定する説が出る可能性もありますので、広く浅く季節季節の食べ物を腹八分目でという昔から言われているおばあちゃんの知恵を私は尊重することをお勧めします。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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