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「風邪をひいたら,ノドにネギを巻く」を間違えて「にんにくをノドに巻いた」ら火傷になっちゃった??❗

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おばあちゃんの知恵は大好きです。昔から伝えられている民間療法も迷信のたぐいではなく、現代の西洋治療(?)・スタンダード治療よりはるかに効果が上回るものもあります。例えば『「しゃっくりを止める方法」医学的治療VS民間療法、一発で治すことができるのは?

そのような民間療法のなかで「風邪を引いた場合、ネギを首に巻く」っていうのがあります。

風邪にまつわる民間療法

風邪に効果がある食べ物としては梅茶・はちみつ・生姜・大根などがあります。風邪で頭が痛いときは梅干しをこめかみに貼る、熱を下げるために豆腐を額にはる、そして焼いた長ネギを首に巻くっていうのがあります。

この焼いた長ネギを首に巻く、っていうのと似た治療法で「にんにくを首に巻く」という方法が海外でおばあちゃんの知恵的に使用されていて、この治療で火傷が起きた❗という症例報告がありました。

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この論文の正式な番号はBMJ case reports. 2014;2014; doi: 10.1136/bcr-2013-203285.ですが、一般の方は見ることができないので、http://www.readcube.com/というサイトにリンクさせました。

風邪をひいて喉が腫れるときに首のリンパ節も同時に腫れてしまいますので、そこににんにくを貼るのがポイントとなっているようで、症例写真の火傷 (やけどというよりは強烈なかぶれのように見受けられます)の場所と頸部リンパ節の位置が一致しているのはそのためなんですね❗

風邪をひいたらにんにくを喉にまく、という民間療法

にんにくは疲労回復効果があるとされていますから、「にんにく注射」なんてものがスポーツ選手や芸能人に好まれていたために、一般の方にも広く知られています。その効果を食べることではなく、のどに巻いちゃうという日本で言えば長ねぎと同じ使用法で風邪に対抗する民間療法が海外にはあります。

にんにくを喉に巻く治療法で火傷を引き起こすことは海外ではちょこちょこ見受けられる症例であり論文にもあるように「garlic burn 」つまり「にんにく火傷」という言葉が使われています。今回の症例はトルコ発の論文ですので、長ネギよりにんにくが身近にあった点に十分納得がいきます。この喉に直接なんだか効果がありそうな食品類を風邪で喉が痛いときに貼っちゃう、って方法は多分このような理論に基づいていることが予想されます。

Sore_Throat_Home_Remedies__Treatment__Symptoms__Causes__Prevention___Diet

そもそもなぜ「風邪に長ネギ」なのか?

風邪を引いたときに使用する長ネギに含まれる「ネギオール」が殺菌効果があり、この成分が風邪に効く、という最もらしい説を見かけます。でも、この「ネギオール」に対して植物の専門家の考えはこのようになっています。

質問:ネギオールに生化学的裏づけありますか
ネギの含有成分として「ネギオール」記事がネット上に多数あります。
白部に含有し殺菌・抗ウィルス作用があるとか。
回答:
天然物の名前の付け方については、1960-1970年代迄は研究者が植物から単離し、構造を決定した研究者が勝手につけてもよいという慣習があって、ショウガから単離したからShogaol、フウロソウから取ったからFurosin、もっとひどいものになると横野さんが単離したからYokonoside とか、それぞれ、発見者が命名自体を楽しんでいた時代がありました。しかし、現在は植物の学名に準拠するようになり、ある植物から新しい成分を単離し、その構造を決めても、ネギの学名 (Allium) を入れることが、論文投稿の際に求められます。1970年代までに構造が決定され、名前が決まった化合物については、当時の化合物名はそのまま正式名称として現在でも用いられています。ショーガオールが正式にあるのですから、ネギオールもあってよさそうですが、このような命名が許されたのは30年以前であり、もしその頃に単離されていれば現在の多くの専門辞典に掲載されているはずです。

研究分野によっては、植物のエキスにあたかも化合物のような名前を付ける例もあります。例えば、セイヨウニワトコ (学名 Sambucus nigra L.) のエキスをサンブコール (sambucol) とよんで、習慣的にそのまま学術論文に記載したりすることもあります。ネギオールの場合、名前の根拠そのものが見つからなかったのでこれと同じケースかは不明ですが、こうした可能性もあろうかと想像できます。

以上のような理由から、ネギオールとよばれる、ネギの地上部の白い組織に多いとされる成分についての研究成果は、学会誌に投稿されていないか、または、多くの専門家の審査を経て掲載される状態になっていないように思われます。

矢崎 一史(京都大学生存圏研究所森林圏遺伝子統御分野)

と日本植物生理学会のサイトではなっています(ハンドルネームなど一部省略させていただいています)。

つまり、ネギオールなんてもの自体学問的には認められていないのです。玉ねぎやネギそしてにんにくに含まれる「硫化アリル」という涙が出てしまう刺激物の殺菌効果、ビタミンB系の疲労回復効果を期待して長ネギやにんにくが風邪で弱った体に効果がある、と昔の人は経験上知っていて、さらに効果を出すために直接のどに巻くって方法を編み出したことが予想されます。

経験値による治療法「風邪だと喉ににんにくを巻く」??

長ネギが取れない地域もありますから、同様の効果を期待して風邪を引いた場合、にんにくを食べる、という民間療法があっても不思議はありません。所変われば品かわる的に喉に長ネギを巻くのではなく、喉ににんにくを巻くという別流派が発生してもそれも不思議はありません。にんにくには「ネギオール」は当然含まれていませんから、喉に巻いても全く効果がないような気がします。

ネギもにんにくも強烈な匂いがして、なんだか元気がでそう的な強壮成分効果が期待できそうですので、食べるぶんには問題ないでしょうけど、食べて効果があるものを貼っちゃうとなると、「にんにく火傷」を起こす危険がありますから、良い子の皆さんは真似をしないようにしましょう。「長ネギ火傷」っていう症例報告は私の知見不足の可能性も否定はできませんが、見かけませんので安全性は確保されているとお考えください。

医学用語・科学用語を使用することによって根拠のないもっともらしい説明を「おばあちゃんの知恵的民間療法」を解説している専門家の話を耳にする・目にするとどうしても「それほんとうかよ?」とツッコンでしまう傾向があるのは、実はおばあちゃんの知恵の大ファンであるからなんです。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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