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フードプロデューサーさま、ニセ医学系の健康に関する異説を唱える前にせめて1次ソースを調べて下さい

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世の中では専門家であっても異説・珍説を唱える人がいますが、学会等では「そっとしとこうね」的状況下での発表をお願いする傾向があります。

牛乳・チーズ・ヨーグルトは発ガン性があり、骨折のリスクもあるし、寿命も縮まる??

牛乳・チーズ・ヨーグルト、発がん性の危険 寿命短縮や骨折増加との調査結果も___ビジネスジャーナル

http://biz-journal.jp/i/2015/01/post_8457_entry.html

私は専門家でない方、ビジネスとしていない方の疑似科学・偽医学に対しては攻撃的反論はしないというポリシーでブログを綴ってきました。今回俎上にあげる、この方はフードプロデューサーであり、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事という物々しい肩書きをお持ちで、食に関連するビジネスを行っているので批判の対象とさせていただきます。

なんで論文の詳細、元ネタを明記しないんですか?

テキトーな説をウェブで見つけたか、雑誌で見かけてご自分の異説を展開する人が目立ちます。この方も同様で

牛乳はカルシウムを多く含んでいるので、たくさん飲むと骨が強くなり健康になる、と勘違いしている人も多いですが、イギリスの医学誌「British Medical Journal」は、牛乳摂取量の多い人は、少ない人と比べて寿命が短く、女性では骨折が増えるとの研究結果を紹介しています

「牛乳・チーズ・ヨーグルト、発がん性の危険 寿命短縮や骨折増加との調査結果も」ビジネスジャーナル 南 清貴「すぐにできる、正しい食、間違った食」より) 
鬼の首をとったかのように海外の論文を元にとんでも説を展開しています。この論文って「Milk intake and risk of mortality and fractures in women and men: cohort studies」 (BMJ 2014; 349) のことですよね。せめて元の論文のタイトルを記載するか、論文の番号を併記するようにしてください、元ネタ探すのに時間が掛かりますし、信頼度がなくなりますから。この論文はかなりバイアスの掛かったもので

もともと骨折しやすい人が「骨折に注意してね」とアドバイスされたために、牛乳をガブ飲みしていた可能性

があり、かなり偏った結果になったと医学関係者の間では解釈されています。実はこのネタは以前ブログに「牛乳の飲み過ぎ問題、本当に骨粗鬆症に効果があるのか?死亡率が高まる、という論文は正しいのか??」というタイトルで昨年ブログにしていますので、気になる方はご覧くださいませ。

日本では牛乳は戦後飲まれるようになりました⋯嘘です

使い古された日本文化はGHQによって強制的にアメリカ化して、米国の巨大穀物メーカー・食品メーカーに支配された、なんて陰謀論の影響もあるのか、このようなこともおっしゃっています。

牛乳はもともと日本人が摂取してきた食品ではなく、戦後になって飲むようになったものです。終戦直後の食糧難の時代に、当初は援助物資としてアメリカから日本に送られたのが小麦と粉乳でした。このどちらもがその後、日本においての食生活の重要な位置を占めるようになったことは、単なる偶然とは到底思えません。

前述「牛乳・チーズ・ヨーグルト、発がん性の危険 寿命短縮や骨折増加との調査結果も」より

これって本当なんでしょうか?戦前は日本は地方独自の文化が今より根付いていましたので、土地土地によって特に食べ物は違いはあったでしょうね。しかし、牛乳は戦前から普通に摂取されていました。

江戸時代末期になると、乳牛を飼い、搾った乳を売る人が出始めましたが、一般に販売されたのは、明治の文明開化からです。大きなブリキの輸送缶で牛乳を運んで、柄杓で5勺(90ml)ずつ量って売られていました。明治10年頃には、小型(一合=180ml)のブリキ缶入り牛乳をかごに入れて天秤棒でかついで配達していました。

「一般社団法人 Jミルク」サイトより

さらに殺菌が義務付けられるくらい牛乳は普及していたこともわかります。

ブリキでできた輸送缶の時代を経て、明治20(1887)年頃からは、ビン詰めでの宅配に変化してきました。初期の牛乳ビンは口の長い、色の付いたガラスビンで、木や紙、綿などで栓をしたものでした。この頃まで、牛乳と言えば、しぼったままの、いわゆる生乳でした。明治30(1897)年代に王冠や陶器製の栓が登場すると、ビンごと熱湯につけて殺菌するようになります。ただし当時の処理技術では賞味期限も短く、朝と夕、1日に2度配達するようなケースも多かったようです。 昭和2(1927)年には、初めて牛乳の殺菌処理が義務づけられ、同時に牛乳ビンの統一が図られました。

一般社団法人全国牛乳流通改善協会」サイトより

これって明らかに戦前から牛乳って飲まれていたことなんじゃないですか?

このフードプロデューサーの方のようなセンセーショナルな話題を提供する人って、いくつかの傾向があります。

元ネタ、一次ソースを明らかにしない、計算・統計学に弱い自称・他称専門家の増加

先日も異説・擬似科学・ニセ医学を論ずる方は計算が弱く、統計学を知らない人が多いって話をブログにしました(「ニセ科学・トンデモ医学を主張する人の特徴は統計と数字に弱い、ということです❗」お時間があれば読んでいただけると嬉しいです)。なんでも断定すればいいわけではありませんが、さらに伝聞形というか、噂レベルの話を記述に混ぜ込む傾向もあります。

よくいわれることではありますが、戦前の日本人のほうが、今の日本人より健康的で、なおかつ強靭で敏捷な体であったようです。その頃の日本人で、牛乳を毎日飲んでいる人など一人もいなかったでしょう。

前述フードプロデューサーさんの記事から
これって「よくいわれる」「あったようです」という表現はで「反論しようにも元のネタが不明」「だれ主張しだしたのかをはっきりさせない」手法って擬似科学話の特徴なんです。あと、ご自分の都合の良い解釈だけで話を進めて、あえて検証する手間を省くのです(今は昔と違ってググれば肯定論・反論がすぐに見つけられるのに)。

しかし、この方本当に食に関わっている人なんですかね〜?牛乳が妊娠している牛から搾乳されることに驚いている表現が見られます。
乳牛って動物愛護的には問題あるかもしれませんけど、常に妊娠させられているんですけど、牛乳を得るために⋯。

ここの表現、少々誤解を招きますので訂正します。出産して子牛にお乳をあげるために妊娠させられて、子育て中の乳を牛乳として人間が頂いているのです。妊娠中の牛から搾乳はしていないと思うんですけどね。2018年3月9日13:20訂正

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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