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ネット依存症って本当に病気なの?と医学的な疑問が湧いてきた。

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自分自身、ブログを書いたり調べ物をしたりするために、長時間パソコンに向かっているために「ネット中毒」「ネット依存症」なんて感じで周囲から言われたことがあります。

でも、あんただって「テレビ依存症」だろうし、「アルコール依存症」だろうし「ニコチン中毒」じゃないのと言いたくなることもしばしばです。

インターネット依存症って単なる嗜癖と違うの???

日本ではネット依存の中高生が51万人もいると報道されたことがありました。2013年では成人を含めると420万人がネットに依存しているとの報告もあります(日本経済新聞 電子版 2014年8月20日)。

ネット依存傾向の国際比較を表したグラフ

総務省 ネット依存傾向の国際比較

WHOはインターネット依存症(ネット依存症)に対して、どのような定義を用いれば良いのか模索している段階であり、日本でも明確な診断基準はありません(詳しくは独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センターのサイトを御覧ください)。一般的にネット依存症と言われる問題をはっきりさせるためには「依存」と「嗜癖」の違いを知っておく必要があります。

  • 依存⋯英語では「dependence」であり、人間は何かに依存していないと生きてはいけませんが、医学的にはもう少し狭い意味合いで使用されるために「ネット依存症」という言葉は正しくない可能性があります。
  • 嗜癖⋯英語では「addiction」であり、医学的に使用する場合は「ネット嗜癖」の方が適切な使用例と考えます。

ネット依存症ではなくネット嗜癖と考える方が理解しやすい

ネット依存症を問題となっている症状を説明する場合、気の利いた小学生レベルでも「パパだっていつも移動に車を使っているんだか車依存症じゃん」とか「ママだって外出するときは、長時間お化粧をしているんだから、お化粧依存症じゃないの?」なんて反論を食らいます(こんな小学生がいたら即刻はり倒しましょうね、オッサンたち)。

一方医学的にも「嗜癖」の方が厳密に定義されていますので「ネット嗜癖」として考えた方が話を進めやすいので、こちらを採用しますね。「嗜癖」の定義としては「American Society of Addiction Medicin」(米国嗜癖医学協会とでも訳すのかな?)が明確にしています。

  • 「嗜癖」は脳の報酬、モチベーション、記憶に関する脳の慢性的な疾患である
  • 「嗜癖」は脳の機能不全・生物学的・心理学的・社会的・精神的な症状をもたらす

と述べ、具体的には

  • 行動を制御できない
  • 行動を切望する
  • 人間関係を捨ててまで行動する
  • 重要な問題を放棄してまで行動する
  • 感情面の反応の機能不全を引き起こす

このように、どう見ても異常な行動が見られる場合が「嗜癖」なのです(「American Society of Addiction Medicin の Definition of Addiction より)

これって誰が見たって異常な行動であり、こんな人が日本い420万人もいるとは思えませんよね❗

ネット依存と病気としての「ネット嗜癖」の具体例

例えば医師の場合、まず病院・診療所に着くとパソコンを立ち上げます。もちろん電子カルテを開くことが主目的ですが、電子版の新聞に目を通す人も多いですし、メールチェック(多くは講演会・勉強会のお誘い)して、今日のスケジュールをGoogleカレンダー等で確認します。診療中は電子カルテを使用していますが「先生、先日こんな健康情報が新聞に載っていたのですけど」と患者さんに尋ねられた場合、正確な回答をするためにググる時もあります。午前の診療が終わったら電子カルテは閉じて、医学論文等を読みます。論文をペーパーと呼びますが、自分が読みたい論文を探すためにはネット検索が一番です。そして午後の診療を終えたら、私の場合は患者さんからのメールでの質問に回答したあと、ブログを書くことに数時間取られます。PCに向かっている時間は電子カルテを含めれば1日12時間以上となります⋯これってネット嗜癖でしょうか?現在、多くの方は仕事をこなす上でネット環境は手放せないはずで、肉体労働系以外の方は医師である私と同じような生活パターンになっているのではないでしょうか?

わかりやすく言えば「ネットを丸一日使わないと仕事にならない」「緊急の事態に備えて、自分の休診日でもスマホは手放せない」「なるべくネットがつながる環境を確保したい」ってことになります。でもこれによって先ほど書きました「嗜癖」の症状が出ているとは思えません。

「嗜癖」は仕事中であってもFacebookをいじりまわしたり、LINEのチェックを怠らない、上司に怒られている際にツイートしちゃうような場合です。極端な例としてはネットに夢中になって赤ちゃんにミルクをあげないで放置しておくとか、有料アイテムをゲットするために強盗しちゃうような例も嗜癖にあたります。

ネット嗜癖の人って他の病気でも説明できるような気がするんだけど

ネット依存症、医学的にはネット嗜癖の場合、他の病気でも同じような行動をとるんじゃないかと考えます。例えば強迫神経症(強迫性障害)だったら、友人からのSNSに対しては速攻でレスポンスをしないといけないと感じる場合もあるでしょう。また、注意欠陥多動性障害(ADHD)があれば、授業中であろうと仕事中であろうとスマホをいじくり回すことが考えられます。

ネットは便利であることは間違いないのですから、空気と同じように現代人なネットに依存していることは間違いありません。しかし「ネット嗜癖」の場合は別の病気がベースにある可能性もあります。例えばネットでギャンブルをしている方は「ギャンブル障害」といった立派な診断名として存在してますのでオッサンたちは注意が必要です。また子供達や暇な主婦、仕事サボっているサラリーマンがよくスマホにかじりついてネットゲームをしていますが、この問題はインターネット障害として継続的な調査の必要性があることを、ネット嗜癖を取り上げていない「American Psychatric Assosiation (アメリカ精神医学会)」でさえ勧告しています(http://www.psychcongress.com/)。

非常にわかりにくいネット依存症、正しくはネット嗜癖問題、ぜひ精神科系の研究者による明確な定義や治療方法の確立を望みます。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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