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「横紋筋融解症」はコレステロールの薬の副作用で有名だけど、自己判断で中止しちゃダメ❗

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最近コレステロールの薬であるクレストールやリピトールの副作用である「横紋筋融解症」を気にする人が増えています。「横紋筋融解症って名前から「筋肉がドロドロに溶けちゃう」ようなイメージと某週刊誌がここ数回にわたって「危ない薬」「飲んではいけない薬」「医者に騙されて飲み続けては行けない薬」としてコレステロール治療薬を名指しで挙げている影響も大きいと思います。

副作用名が有名だからといって、よくある副作用じゃないよ❗

某週刊誌のタイトルに「売れている薬だからと言って安全ではない」的な表現がありましたが有名な副作用だからといって、しょっちゅう起こるわけではないのと有名な副作用だからといって必ずしも命を脅かすわけではないということを知ってもらいたいのです。

何十万人に一人しかでない、それも命を左右するわけでない副作用に怯えて、コレステロールの薬の効果である心血管系疾患の予防の機会を逃すことは、科学的な判断とは言えないのでは無いですか?

薬剤性横紋筋融解症で死亡する確率はかなり低い

コレステロールの薬でもスタチン系と呼ばれるものがあります。これらの薬で有名なのが「薬剤性横紋筋融解症」です。スタチン系のコレステロールの薬以外にも抗菌剤や高血圧の薬でも薬剤性の横紋筋融解症は報告されていますが、スタチン系の報告例が一番多いので今回はコレステロール治療薬を主に説明していきますね。

脂質異常症(高脂血症)___生活習慣病___一般社団法人_日本生活習慣病予防協会

http://www.seikatsusyukanbyo.com/guide/dyslipidemia.php

こんなに高脂血症の人は多いのです。某週刊誌の副作用の記事にそそのかされて薬を中止したら、どんなことが起こるんでしょうか?

この横紋筋が融解しちゃう、との言葉から筋肉が溶けちゃう副作用と考えて恐ろしい副作用がある薬を平然と処方しやがってと早合点してはいけません。横紋筋融解症は骨を動かす骨格筋の細胞が壊死することによって、筋肉の脱力感や痛みを感じるものです。筋肉細胞が破壊されます。

筋肉の細胞に含まれるミオグロビンが、腎臓に引っかかって腎機能までがダメージを受けることがあるために医師サイドも処方にあたっては注意が必要な症状であることには間違いはありません。しかし、重大な副作用であったとしても、滅多に起こらない副作用であるならば患者さん・医師共に注意をしながら服用処方をすれば良いんじゃないですか?

大騒ぎするスタチン系の薬の副作用の頻度は?

気になる発症頻度ですが、権威あるThe New England Journal of Medicine に掲載された「Cerivastatin and Reports of Fatal Rhabdomyolysis」(N Engl J Med 2002; 346:539-540)によれば、プラバスタチン(販売名はメバロチン)は8136万処方で3例、横紋筋融解症の発症が多いのではと言われているロバスタチン(販売名はクレストール、これは例の週刊誌で叩かれていました)は9919万処方で19例、最も売れているアトルバスタチン(販売名リピトール)は1億4036万処方で6例となっています。

なお死亡例の場合は一番多いのがセリバスタチン(販売名はセルタ、バイコール)で981万処方で31例ですが、この死亡例の多さによって現在は販売は中止されています。

コレステロールの治療の為に薬を飲んで横紋筋融解症になり、死に至った例はかなり稀なのです。

重症ではない横紋筋融解症はどんな感じ?

横紋筋融解症の症状は命には影響しないような軽度なものは当院のような一般の診療所でも経験します。自覚症状的には

  1. 筋肉痛、特に大腿部が多い
  2. 赤っぽい尿が出る
  3. 全身の倦怠感

が多いみられます。確定診断には筋肉の一部を取り出して顕微鏡で覗くことが必要になりますが、これでは手遅れになってしまいます。このような症状が出た場合はすぐに血液検査をします。筋肉の細胞に含まれていたクレアチンキナーゼ (CK) の上昇が血液検査で判明すると、横紋筋融解症を強く疑います。しかし、筋トレをした後でもクレアチンキナーゼは上昇しますので、血液検査前の問診が重要となります。

また筋肉の細胞には「ミオグロビン」が含まれていますので、これが腎臓を通過することによって尿が赤っぽくなるのです。この場合もすぐに血液検査を行いクレアチンキナーゼの上昇が認められるとコレステロールの薬による横紋筋融解症と診断されます。時期的には薬を飲み始めてすぐではなく、数週間〜数ヶ月後に発症することが多いです。ミオグロビンが腎機能障害を引き起こすために、重症化する場合もあります。

しかし、米国の調査によればコレステロールを改善するためにスタチン系の薬を飲んだ場合、筋肉痛は2〜7パーセント、クレアチンキナーゼの上昇は1.0パーセント異界であり

重篤な障害は0.008パーセント(10万人に8人)であり、死亡例は100万人中0.15人とかなり低い確率

になっています(厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル 横紋筋融解症」より)。それでも副作用が出て、死亡者まで出ているだろう❗と某週刊誌の記事を信じ込んでしまった人は言うでしょうね。

2015年における日本人の死因として31万2000人が心血管系の疾患で亡くなっています。コレステロールの値が高いと血管が弱くなってしまい心血管系の病気の大きな原因となります。滅多に起こらない副作用を心配して、服薬を拒否したり中止することは果たして賢い選択なんでしょうか?多いに疑問です。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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