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医学的根拠の薄い「薬剤師は薬を飲まない」というトンデモ本のヘンな所はここ❗

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ここ数ヶ月にわたって週刊現代が医療不信・処方薬有害論を展開しています。まあ、週刊誌が騒ぐレベルですから内容はかなり「盛った」話になるのはしかたないとして(大人になったなあ⋯)、その記事に専門家としてヘンテコな意見をコメントする方が気になりました。

薬剤師さんの書いた「薬剤師は薬を飲まない」という本、なんかヘンなんですけど⋯。

特に宇多川久美子さんという薬剤師さんのコメントに違和感が。実は宇多川久美子さんって「薬剤師は薬を飲まない」(廣済堂出版)というベストセラー本を書かれた有名な薬剤師さんだったんですね。早速著作を取りよせて(Amazonさんの中古)読んでみると、「これって裏付けあるの?」「この話って論文じゃ見たこと無いぞ」「盛ってる、モッテル」と読みところ満載でした。

生活習慣病の薬はほとんど全否定、急性疾患のインフルエンザ治療薬は全否定、ワクチン否定、裏付けの理論があのニセ医学「酵素栄養学」となれば、トンデモ系ニセ医学の香ばしいかおりが強く漂います。

そして薬を飲まない生活を推進する上での体操、さらには団体(国際感食協会 http://kanshoku.org/)を立ち上げて

セミナー、グッズ販売となると、ニセ医学お約束のエリートコース驀進中

って感じです。

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かなり多くの健康本をお書きになっています。

やたらに薬に頼らないでとの主張はうなずける部分も多いのですが、あるものが病気の原因であったとしても、その原因を除けばなってしまった病気自体が治るわけではありません。そのへんの勘違いがトンデモ臭を醸し出しているようですので、著作のヘンテコな部分及び盛っていると思われる部分について考察をいたします。

タミフルを飲んで、ギラン・バレー症候群になった女性の話

全国に猛威を振るったインフルエンザ流行時に「タミフルによる異常行動」が問題となりました。果たしてそれがインフルエンザ自体によるものか、タミフル服用によるものかの議論がありましたが、行政的には結論がでています(反対の意見の方の感情的な反論が猛烈なので、どっちとは明記しません⋯大人になったなあ)。

宇多川さんの著作「薬剤師は薬を飲まない」のP21からp23にかけて、B型インフルエンザと診断された女性(文章からは成人と考えられる)はタミフルを一粒飲んだ所、体調が悪化して、全身がシビレ、立つこともできなくなったそうです。幾つかの医療機関受診後に医師「タミフルを飲んだことによるギラン・バレー症候群」と診断されました。ギラン・バレー症候群って10万人に1人程度が罹患する非常に稀な病気であり、発症の前になにがしらの感染症を伴った原因が特定しにくい病気です。

それを1医師が「タミフルによるギラン・バレー症候群です」って軽々しく診断するでしょうか?

これは気になったので調べましたです、私。普通このような特殊な症例は論文化されて医学専門誌に掲載されることが多いのです。ありました、インフルエンザとタミフルとギラン・バレー症候群の症例が⋯あれ、13歳の男児だし、18日目に退院しているし、宇多川久美子さんのおっしゃる症例とはまるっきり違っています(日本小児科学会雑誌 Vol.111 No.6 「球麻痺症状で発病した Guillain-Barre症候群の1男児例」)。この論文でさえ、インフルエンザになったよ、タミフルのんだよ、ギラン・バレーになったよ、との内容であり「タミフルでギラン・バレー症候群になった」とは一切書かれていません。

タミフルが原因でギラン・バレー症候群になった症例って無いんですけど❗

薬を飲まない薬剤師さんとして有名な宇多川さんが、知った症例をその医師は症例報告しなかったのでしょうか?あるいは少なくとも販売元の製薬会社に「重大な副作用」として連絡しなかったのでしょうか、と考えてタミフルの販売元の製薬会社に電凸。もちろん、この薬剤師さんが指摘する副作用報告はありませんでした。

薬は体内の酵素を奪う???例の「酵素栄養学」の登場だ❗

宇多川久美子さんはニセ医学の「酵素栄養学」の信奉者のようです。→なぜ多くの人が「酵素栄養学」に惑わされるのか、やっと理解できました❗ニセ医学に騙される純真な方へ。

この酵素栄養学独自の考え方というが原則として「一生のうちに人体で作られる酵素の量は限りがある」というものがあります。だから酵素の無駄使いをしないようにしましょう、足りない酵素を摂取しましょう、ということになるようです。この酵素栄養学自体があるオジサンが編み出した考え方であり、スタンダードな医学ではありません。

この酵素栄養学にもとづいて、この薬剤師さんは薬に対する考察を行っているので、当然正当な医学を学んだ私が違和感を持ったのも当然です。

体温を上げると免疫力アップする、ことの医学的信ぴょう性

またこのトンデモ系薬剤師さんは「薬を飲むと体温が下がる」「体温が下がると免疫力が低下する」とも主張しています。そりゃ解熱剤を飲めば体温は下がるでしょうけど(笑)、体温がさがると本当に免疫力が低下するのでしょうか?

巷には「体温を上げて免疫力アップ」的な読み物が出回っています。ということは、体温と免疫についての研究が行われて、その現象が確認されているはずなんですけど、未だに論文ベースでは見つかりません。たぶん、酵素栄養学のように、どなたかが言い出しっぺで論文としてではなく、読み物として発行したんでしょうね。

この「薬を飲まない薬剤師」として著明な宇多川久美子さんは、次から次と著作をお書きになられていますので、私もブログを次から次と書く予定です⋯お楽しみに❗

予告通りにこんなのも書きました。

トンデモ薬剤師さんの理論背景はやはりニセ医学でした❗

トンデモ薬剤師さんの理論背景はやはりニセ医学でした❗

酵素栄養学という一見もっともらしい権威ありそうに見える学問がありますが、ニセ医学の代表です。この酵素栄養学に心酔・傾倒してしまう人たちが医療関係者にも少なからずいます。酵素栄養学の世界にいってしまった薬剤師さんが「薬剤師は薬を飲まない」なる書籍を出しました。このトンデモ本のトンデモたる所以について解説します。

困った薬剤師さんです。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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