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トンデモ系❗「親学」というニセ医学・疑似科学が子育てママに襲いかかっている⁉

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以前から私はニセ医学がいまターゲットをロックオンしている対象は子育てママである、と何度かブログで警告をしています。子育てに悩むママにいい加減な情報を流し、洗脳あるいは信者にしたてる一味がいます。その分派とも考えられるのが「親学」という言葉を流布している人たちです。

「親学」という怪しげな学問?これって単なる啓発セミナーのような気が⋯

昔から赤ちゃんを生む母親あるいは父親を対象に「母親教室」的なものがありました。助産師さんや産婦人科医、あるいは看護師らによって、赤ちゃんを健康的に育てる方法を指導する講座です。

核家族化が進んだために、周囲にオジイチャン・オバアチャンなどの子育て経験者が見当たらないで、初めての経験となる「子育て」にオタオタしているママやパパが増えてきたためと、世界に誇れる日本の乳幼児死亡率の低さを強化する意味もあったのかもしれません。

人間はある一定レベルを超えるとさらなる高みに挑戦したくなります。そこで登場したのが、いかに頭脳明晰・運動能力をそなえた子供に育てる方法です。◯田式教育とかの、幼児教育や早期教育、超早期幼児教育の教室が街中に溢れています。

そんな中で「昔の日本は良かった」的な基本理念で運営されているのが、高橋史朗さんが率いる「親学推進協会」です。

ちなみに高橋史朗さんは、政府機関などの役職を歴任している方であり、彼の主張は隣国の嫌がらせに困り果てている今の政府の琴線に触れるものだったのでしょうね。

なぜ「親学」は医学的・科学的に怪しげに見えてしまうのか?

親学の提言という文章があります。

「親学」提言のポイント
(1)子守歌を聞かせ、母乳で育児
(2)授乳中はテレビをつけない。5歳から子どもにテレビ、ビデオを長時間見せない
(3)早寝早起き朝ごはんの励行
(4)PTAに父親も参加。子どもと対話し教科書にも目を通す
(5)インターネットや携帯電話で有害サイトへの接続を制限する「フィルタリング」の実施
(6)企業は授乳休憩で母親を守る
(7)親子でテレビではなく演劇などの芸術を鑑賞
(8)乳幼児健診などに合わせて自治体が「親学」講座を実施
(9)遊び場確保に道路を一時開放
(10)幼児段階であいさつなど基本の徳目、思春期前までに社会性を持つ徳目を習得させる
(11)思春期からは自尊心が低下しないよう努める

毎日新聞 2007 年4月26日

まあ、昔の日本は良かったよね~(単なる思い込みも多い)という幻想に支配された提言と考えられます。この中で医学的および科学的に「えっ??❗」と思われる部分が多数ありますよね。母乳神話を拡散したのは「親学」の影響が大きい❗ってことは(1)から理解できます。

さらにテレビを異常に嫌っている傾向が伺えますが、授乳に専念しろ、授乳中は赤ちゃんのことだけ考えておけ、って意味でしょうね。あの~、昔のお母さんって野良仕事しながら赤ちゃんに母乳を与えていましたし、いまでも開発途上の国々ではおっぱいにしがみついている赤ちゃんを見かけます。

ってことは昔のお母さんは親学的にはダメな例であり、開発途上国のお母さんは親として失格なんですね、親学の提言に従えば。(6)の授乳休憩だって、実現可能なら素晴らしいことかもしれませんが、対応できる企業はホンの一握りでしょう。農作業中なら母乳を与えることが可能かもしれませんが、作業しながらだとやっぱり(1)(2)に抵触してしまいます。

「母乳神話」母乳で育てると赤ちゃんはもちろん、ママの病気も防ぐ、でも疑問だらけ。

「母乳神話」母乳で育てると赤ちゃんはもちろん、ママの病気も防ぐ、でも疑問だらけ。

母乳で哺育した母親は乳がんのリスクが低下する、母乳で育てた赤ちゃんの方が知能が高くなる可能性といった眉唾な情報がありますが、信じない人が大半とはいえ、一部の母乳こそ至高とする隔たった考えを持った人たちが母乳で育てないママさんは母親失格と決めつけるので医学的にきちんと批判しておきます。

提言の(7)でもテレビを嫌っています。演劇やコンサートを享受するには時間も費用もかかります。意識高い系の子育てママには魅力的なお誘いかもしれませんが、仕事をお持ちの方にはかなりの負担になることが予想されます。まだ調査中ですが一時期流行った「ゲーム脳」というニセ医学の影響を受けている様子です。

提言の(10)における「徳目」って言葉、普通は余り使用しませんよね。道徳と考えればいいのでしょうけど「徳目」という言葉によって戦前の教育勅語をイメージする方もいるので、この「親学」はオーガニックでロハスで脱原発で有機野菜大好きな、左寄りの方にも評判がよろしくない様子です。

「親学」は歴史学的にもテキトー??❗

「親学」って子育てに不安を感じているママ達を狙い撃ちしている感がひしひしと伝わってきます。医学的・科学的になんの裏付けもない主張であることは、明らかなんですけど文系的にもかなり怪しげなことを啓蒙しています。

それが例の「江戸しぐさ」。江戸時代の日本人は奥ゆかしくて、自分勝手じゃなくて常に人の迷惑をかけない生活を守ってきたという、学問的には偽史とされるものです。

江戸しぐさのインチキ加減は原田実さんの著書「江戸しぐさの終焉」(星海社新書)に詳しく分析解説されていますので、そちらをお読みください(ざっくりの内容はこちらでわかります 「江戸しぐさ」に「親学」。偽史が堂々採用の教育現場に唖然

このように理系的にも文系的にもいい加減な情報があふれている、かなり怪しげな「親学」です。

ニセ医学・疑似科学情報を教育者に拡散する例の団体も積極的に親学に参入❗

TOSSという「明日の授業を5分で準備できる指導案・授業コンテンツ」を提供して、教材や授業テーマにお悩みの教育者の情報源となっているサイト・団体があります。このTOSSの疑似科学を信じ込んじゃった教育者が教育現場で、トンデモ系の授業をおこなっている事実が懐疑主義ウォッチャーの間で以前から話題になっていました。

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http://www.toss.or.jp/homeed

このTOSSは「砂糖が体も心もぼろぼろにする」というニセ医学を教育者に拡散したことを知って以来、定点観測させていただいています(笑)

白砂糖は悪魔、さらに、体も心もぼろぼろにする⁉そこまで悪者にしなくても。

白砂糖は悪魔、さらに、体も心もぼろぼろにする⁉そこまで悪者にしなくても。

過剰な砂糖摂取が体に悪いことは当然です。しかし適切な砂糖摂取まで体に悪いと主張する人が絶えません。砂糖はエネルギー源として必要であり、適切な量で摂取することが大切です。天然の糖分や果物に含まれる糖分など、異なる種類の砂糖も考慮に入れる必要があります。白砂糖害悪説が蔓延る理由を医師として考察します。

こんなニセ医学・疑似科学・偽史をバックボーンにしている「親学」、これを再利用したニセ医学ビジネスが密かに子育てママにターゲットとしてロックオンしていることにご注意くださいね❗

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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