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食事でがんは治せるのか?と素朴な疑問

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がんになりやすい食事、あるいはがんになりにくい食事は疫学的な多くの研究によってわかりだしています。しかし、がんを発症してしまった場合、その治療方法として「がんを治す食事」って本当にあるのでしょうか?

食事療法でがんを治す、これって本当?

例えばAmazonさんで「がんを治す食事」で検索するとこんなにたくさんの書籍が結果として現れます。

「がんを治す食事」

これらの書籍は食事療法によって「がんを治す」と考えている代替療法支持者、自然派大好き医師などによって書かれています。

食事内容によってがんを予防することはある程度可能であると考えても、一度なってしまったがんの治療法として食事を選択するのってどうなんでしょうか?実際の診療現場でも「どんな食事に気をつければいいの?」と尋ねられることが多いのでがんは食事で治すことは可能なのか?と言う素朴な疑問を少々考えて見ます。

がんを食事で治療する、がんが食事で消えた?残念ながら⋯無理❗

がんに対する治療は標準医学が一番、と考えている私のクリニックでも時々「抗がん剤は大っ嫌い」「西洋医学はインチキ」に洗脳された方が時々受診されます。

彼ら彼女らが受診時に自分の選択肢が正しいことの裏付けとして持参されるのは、ほとんど99.9パーセントは一般書籍です。

多くの書籍は「食事でがんを治す」「食事療法でみるみるがんが縮小した」「なになにを食べて3ヶ月でがんが消失」的な内容であり、ほとんどが体験談の領域を超えません。医師が著作者であっても自分の治療方法が革新的であり「こんなに患者さんに感謝されています」って感じの医師の自己満足的な体験談、その後自院への誘導ってシステムが目立ちます。

がんを予防する食生活は確かにあります

例えば国立がん研究センターがん情報サービスの「食生活とがん」では食道がんとアルコールの関係、胃がんと食塩の関係、大腸がんと肉食の関係などが書かれています。その中で前立腺がんについては、動物性脂肪や乳製品との関係がありそうだけど、予防する食事はない、と記されています。

つまり、明らかに発がん性がある食事でない限り、食生活でがんに罹患する関係は相関関係であり、因果関係とはなっていないことに注意が必要です。

どんな食生活でがんになるか、それ自体ほとんどが相関関係であり因果関係ではない、ってことになるのです。そうなると「食事でがんを治す」って話もかなり危なっかしいことになってしまいます。

がんを発生させる食事

これちょっとわかりにくいので、説明を加えると↑はがんを発生させる、↓はがんの発生を抑制することを表しています(若尾くん、これ改善してくださいませ)。

がんを食事で治す、信頼度の高い報告は少ないです

がんの標準医療を受けながら、がんを治した方々の食生活は前掲のがん情報センターによればこのように考えられています⋯バランスよく体力を温存するような多彩な食事を勧めているのです。

がんと診断された時に注意する食生活

なになにを食べてがんを治そう、は科学的に確立された医療とはかけ離れた考え方なのです。

多くのがんを治すと称する食事療法はかなり偏った食生活を強いるものがほとんどです。強気でそのような食事療法を推奨する根拠ってどこから来るのでしょうか?少なくとも世界中の多くの医療関係者が検証して効果が実証されたものを私は寡聞にして存じません。

極端な糖質制限をした「がんを治す食事」ってどうなんだろうか?

がん細胞のエネルギー源である糖質を極端に制限することによって、がん治療を行なっている医師がいます(http://toyokeizai.net/articles/-/144042)。

この治療を行なっている医師が書かれた著作も拝読しましたが、結論的には「???」でした。Amazonさんで検索結果に表示されたような「化学療法完璧拒否」ではなく、標準医療を受けながら食事療法によって転移巣が消え去った症例を紹介しながら、その理論を披露している内容です。

なんせ症例数の少なさと、併記されるべき臨床データの少なさ、フォローアップ期間の短さによって私的には全面的に肯定することができません。

この本に関して「そんなに素晴らしい治療方法なら論文にしろ」的な真っ当な意見が医療関係者の多くを占めていると考えます。

一町医者である私は必ずしも論文になっていなくても、ある程度その治療メカニズムが明確ならばいいじゃないのという立ち位置ですが、「7割の末期がんが改善」という表現にはかなり抵抗があります。

なぜなら、当院の泌尿器科で前立腺がんの確定診断のために、普通は入院することの多い針生検を日帰りで行った体験によります。一般的にPSAが高値であった場合、前立腺の針生検をした場合のがんの検出率は施設によっても違いがありますが、50ー60パーセント前後とされています。

しかし、当院の場合、最初の20症例に関しては、なんと85パーセントもがんが検出されたのです、それも入院を必要としないで❗

この数字に対して多くの泌尿器科医から、ぜひ論文にするべき、とのアドバイスを受けたのですが⋯その後、症例を重ねるにつれて検出率は低下してしまいました。

初期の頃は「これは間違いなく、がんが検出されるぞ」と考える症例だけ、つまりバイアスをかけてしまって生検を行なっていたのです。その後、当院の日帰り前立腺がん針生検がトラブルなく経過していることを評価してくれた大病院からの紹介患者さんに針生検をおこなっていたことによって、バイアスがかからなくなり検出率の低下を招いたと考察しています。

どんな治療方法も複数の施設で、同じ基準で多数の症例を積み重ねることによって信頼のできるデータを得ることができます。

極端な糖質制限をした「がんを治す食事」に対して、多くの医療機関で採用する、あるいは著作者が多数の症例を経験することによって主張が証明されることになります。そのためにはやはり論文を書かれることを極端な糖質制限の著者は行うべきでしょう。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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