五本木クリニック院長ブログ

食事でがんは治せるのか?と素朴な疑問


■食事療法でがんを治す、これって本当?

がんになりやすい食事、あるいはがんになりにくい食事は疫学的な多くの研究によってわかりだしています。しかし、がんを発症してしまった場合、その治療方法として「がんを治す食事」って本当にあるのでしょうか?例えばAmazonさんで「がんを治す食事」で検索するとこんなにたくさんの書籍が結果として現れます。



これらの書籍は食事療法によって「がんを治す」と考えている代替療法支持者、自然派大好き医師などによって書かれています。食事内容によってがんを予防することはある程度可能であると考えても、一度なってしまったがんの治療法として食事を選択するのってどうなんでしょうか?実際の診療現場でも「どんな食事に気をつければいいの?」と尋ねられることが多いので

◎がんは食事で治すことは可能なのか?

と言う素朴な疑問を少々考えて見ます。

■がんを食事で治療する、がんが食事で消えた?残念ながら・・・無理!!

がんに対する治療は標準医学が一番、と考えている私のクリニックでも時々「抗がん剤は大っ嫌い」「西洋医学はインチキ」に洗脳された方が時々受診されます。彼ら彼女らが受診時に自分の選択肢が正しいことの裏付けとして持参されるのは、ほとんど99.9パーセントは一般書籍です。

多くの書籍は「食事でがんを治す」「食事療法でみるみるがんが縮小した」「なになにを食べて3ヶ月でがんが消失」的な内容であり、ほとんどが体験談の領域を超えません。医師が著作者であっても自分の治療方法が革新的であり「こんなに患者さんに感謝されています」って感じの医師の自己満足的な体験談、その後自院への誘導ってシステムが目立ちます。

◎がんを予防する食生活は確かにあります

例えば国立がん研究センターがん情報サービスの「食生活とがん」では食道がんとアルコールの関係、胃がんと食塩の関係、大腸がんと肉食の関係などが書かれています。その中で前立腺がんについては、動物性脂肪や乳製品との関係がありそうだけど、予防する食事はない、と記されています。つまり、明らかに発がん性がある食事でない限り、食生活とがんに罹患する関係は相関関係であり、因果関係とはなっていないことに注意が必要です。

◎どんな食生活でがんになるか、それ自体ほとんどが相関関係であり因果関係ではない

ってことになるのです。そうなると「食事でがんを治す」って話もかなり危なっかしいことになってしまいます。


http://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause/dietarylife.htmlより これちょっとわかりにくいので、説明を加えると↑はがんを発生させる、↓はがんの発生を抑制することを表しています(若尾くん、これ改善してくださいませ)。

■がんを食事で治す、信頼度の高い報告は少ないです

がんの標準医療を受けながら、がんを治した方々の食生活は前掲のがん情報センターによればこのように考えられています・・・バランスよく体力を温存するような多彩な食事を勧めているのです。


http://ganjoho.jp/public/support/dietarylife/poor_physical_condition.htmlより 


◎なになにを食べてがんを治そう、はスタンダードな医療とはかけ離れた考え方

なのです。

多くのがんを治すと称する食事療法はかなり偏った食生活を強いるものがほとんどです。強気でそのような食事療法を推奨する根拠ってどこから来るのでしょうか?少なくとも世界中の多くの医療関係者が検証して効果が実証されたものを私は寡聞にして存じません。

■極端な糖質制限をした「がんを治す食事」ってどうなんだろうか?

がん細胞のエネルギー源である糖質を極端に制限することによって、がん治療を行なっている医師がいます(http://toyokeizai.net/articles/-/144042)。この治療を行なっている医師が書かれた著作も拝読しましたが、結論的には「???」でした。Amazonさんで検索結果に表示されたような「化学療法完璧拒否」ではなく、標準医療を受けながら食事療法によって転移巣が消え去った症例を紹介しながら、その理論を披露している内容ですが

◎なんせ症例数の少なさと、併記されるべき臨床データの少なさ、フォローアップ期間の短さによって私的には全面的に肯定することができません。

この本に関して「そんなに素晴らしい治療方法なら論文にしろ」的な真っ当な意見が医療関係者の多くを占めていると考えます。

一町医者である私は必ずしも論文になっていなくても、ある程度その治療メカニズムが明確ならばいいじゃないのという立ち位置ですが、「7割の末期がんが改善」という表現にはかなり抵抗があります。というのも当院の泌尿器科で前立腺がんの確定診断のために、普通は入院することの多い針生検を日帰りで行った体験によります。一般的にPSAが高値であった場合、前立腺の針生検をした場合のがんの検出率は施設によっても違いがありますが、50ー60パーセント前後とされています。しかし、当院の場合、最初の20症例に関しては、なんと85パーセントもがんが検出されたのです、それも入院を必要としないで!!

この数字に対して多くの泌尿器科医から、ぜひ論文にするべき、とのアドバイスを受けたのですが・・・その後、症例を重ねるにつれて検出率は低下してしまいました。初期の頃は「これは間違いなく、がんが検出されるぞ」と考える症例だけ、つまりバイアスをかけてしまって生検を行なっていたのです。その後、当院の日帰り前立腺がん針生検がトラブルなく経過していることを評価してくれた大病院からの紹介患者さんに針生検をおこなっていたことによって、バイアスがかからなくなり検出率の低下を招いたと考察しています。

どんな治療方法も複数の施設で、同じ基準で多数の症例を積み重ねることによって信頼のできるデータを得ることができます。極端な糖質制限をした「がんを治す食事」に対して、多くの医療機関で採用する、あるいは著作者が多数の症例を経験することによって主張が証明されることになります。そのためにはやはり論文を書かれることを極端な糖質制限の著者は行うべきでしょう。

↑ページTOPへ

関連記事

胃の検査でバリウム飲んでいる医師がいたら手を上げて!!イメージ

胃の検査でバリウム飲んでいる医師がいたら手を上げて!!

■胃の検査でなぜ未だにバリウムを飲むのか?という素朴な疑問 胃がんの検診あるいは健康診断で未だにバリウムを飲ませているところがあります。人間ドックでも若干バリウムによる胃のチェックを行っているところも見受けられますが、バ … 続きを読む

抗生物質の処方は誤診だらけ??インフルエンザへ適切な処方はたったの16%!!イメージ

抗生物質の処方は誤診だらけ??インフルエンザへ適切な処方はたったの16%!!

■カゼやインフルエンザに抗生物質が効果ないのは常識だけど カゼを引いた場合に医療機関を受診するとなぜか抗生物質や抗菌剤を処方されることが多いと思います。教科書上の正しい処方としてはカゼと呼ばれるものの多くはインフルエンザ … 続きを読む

超簡単ダイエット、食物繊維を30グラム食べるだけで楽々減量成功!!って本当か??イメージ

超簡単ダイエット、食物繊維を30グラム食べるだけで楽々減量成功!!って本当か??

■ダイエットの決定版がでないワケだよね〜 毎年のように効果的なダイエット、楽チンにダイエット、健康を損なわないでダイエット、なんて記事が女性向け雑誌やネット記事で出ては消えるという状態が続いていますよね。とにかく決定的な … 続きを読む

花粉症にもインフルエンザにも効果がある「葛根湯(かっこんとう)」・・・エビデンスはあるの??

■市販の漢方薬といえば「葛根湯」・・・本当に効果あるの? 東京周辺では本年は暖冬のためか、2月になってインフルエンザが流行しました。それに伴い一般の風邪の患者さんも増えています。一般的な医療機関が休みである土日に風邪をひ … 続きを読む

「虫歯が痛くて、正露丸を詰めちゃった」人、いますか?確かに効果はあるようですけど・・・。イメージ

「虫歯が痛くて、正露丸を詰めちゃった」人、いますか?確かに効果はあるようですけど・・・。

■正露丸の効能に「むし歯痛」って確かに書いてあるけど、なんで効果あるんだ? 家庭の常備薬としてのナショナルブランドと言っても過言ではない「正露丸」。若い方は「むし歯の痛み」にも効果があることはご存知でしょうか?お腹のトラ … 続きを読む