五本木クリニック院長ブログ

悪貨が良貨を駆逐する?ヘルスケア大学のトンデモパワーに脱帽。


■ヘルスケア大学で正しいのは最初の1行だけ、と内輪でばかうけ

非常に深刻な病気についても、さらっと書き流しちゃうのがヘルスケア大学の特徴です。がんに関する記事の正誤表を作ろうと試みて、複数の真っ当な医師に協力を求めたところ

◎ヘルスケア大学って最初の1行しか正しいことが書かれていない

と言われちゃいました。ヘルスケア大学の間違っている点を訂正すること自体バカバカしいからやめろとのアドバイスも受けました。

病気の名前や症状で検索するとWELQの時のように複数の記事が上位に表示されます。正しい情報であるならば何も問題視する必要はないんですが、多くのというかほとんどの記事が医師監修となっていながらレベルはWELQクラス。

そこで、自分の知識だけでやりくりできる私の専門である泌尿器領域で気になって気になって眠れなくなってしまったヘルスケア大学の記事を紹介しつつ、どこがどのようにヘンテコなのかを解説してみます。

■薬の適応症やメカニズムを全く理解していない監修ドクター

ヘルスケア大学のがんに関する記事は「最初の1行以外はデタラメ」とがん専門医数人に言われてしまって、私の試みは頓挫してしまいました。

そこで命には関わらないけど日常生活で厄介な問題である「頻尿」の記事を例として取り上げてみます。

実は私は泌尿器科を専門としてます(なぜか美容外科・美容皮膚科医と思っている人が多いのですけど・・・このブログを当院の美容部サイトの中で書かせてもらっているためだと思います)。ヘルスケア大学では「病院での頻尿の検査と治療」と称したページがあります。


http://www.skincare-univ.com/article/006737/

これを監修した医師が泌尿器科医でないからこんな記事書いちゃったレベルではないのです。医師としての常識的知識を持ち合わせ、ちょっと調べればわかることさえも間違っています。

■頻尿の検査でこんなことして・・・

頻尿とは必要以上に尿意を催してします病態でお年寄りは頻尿によって外出を控える傾向があるので生活の質(QOL)が低下してしまいます。命に関わるとは言えないけど、楽しい日々を送るためには厄介な病気・症状です。この頻尿に対してヘルスケア大学の監修医師は検査として検尿・採血・残尿検査を挙げています。でもね〜、あなたが主張することなんか泌尿器科医は期待して検査してんじゃねーよ。

●検尿 これは尿を取るだけであり患者さんが苦痛を伴うものではありませんし、検査料も安いのですが多大な情報を得ることができます。感染症であれば白血球の増加、悪性腫瘍が疑われるのは赤血球の増加(感染症でも認められます)、タンパクの検出で腎臓自体の問題、糖の検出によって神経因性膀胱の疑いなどなど。でもヘルスケア大学の解釈は

健康診断などでも行われる検尿検尿において膿(うみ)が混ざった膿尿(のうにょう)が検出された場合は膀胱炎など尿路感染の疑いが強くなります。よって、頻尿も尿路感染の症状のひとつとして現れていると考えられます。

だそうです。膀胱炎の三大症状ってご存知なんでしょうか?健康診断で白血球は検査対象外であることさえご存知ないようです。

●採血 頻尿でいきなり採血ですか!!膀胱炎で採血ですか!!私は行なったことないですが、間違いなくレセプト切られますぜ。腎盂腎炎や急性前立腺炎の場合、採血によって白血球の増加やCRPが陽性になります。でもねー、尿路感染症だと炎症によって前立腺がんのマーカーであるPSAって高値になるんですぜ。ヘルスケア大学監修医師のようにルーチーンワークとして頻尿の人に採血しちゃうって

採血で前立腺特異抗原の値が正常範囲を超えていた場合には前立腺がんの疑いが出てきます。

なんて無慈悲な診断を軽々しくしちゃダメだよ。

●残尿検査 ヘルスケア大学監修医師はかなりエコー検査のスキルが高いようです。普通、排尿障害が疑われる場合に残尿検査(ほとんどはエコー検査)を行うのは過活動膀胱の薬の副作用、あるいは神経因性膀胱を疑った時です。排尿した後は通常は前立腺肥大症があっても膀胱はすっからかん、どうやって前立腺肥大の有無を判断するのでしょうか、神の手を持ったエコー使いでもない限り見分けることはかなり難易度高しです。前立腺肥大が原因となって残尿を認めることもあり、そんな時は同時に前立腺の容積と残尿量を同時に測定できることもありますけど、前後の文章から判断してこの医師にそんなスキルがあるとは思えません。

■泌尿器で使う薬を添付文書でなくても、論文でなくても一回でも読んだことありますか?

頻尿と診断された場合の治療方法が記載されています。

前立腺肥大症の場合はハルナール、ユリーフなどのαブロッカー、あるいはパーセリン、プロスタールなどの抗男性ホルモン薬を投与する治療が一般的です。

えええっ、前立腺肥大にプロスタールって一般的なんですか?このプロスタールは今のようにがんの告知がされていなかった時代に頻用された前立腺肥大症薬です。しかし、適応症として前立腺がんが併記されいますので「俺、前立腺肥大って先生に言われているけど本当は前立腺がんなんじゃないのか」との不安を抱く患者さんが数十年前は多発しておりました。パーセリンは前立腺がんにも有効な薬ですが、プロスタールのような誤解を招かないようにあえて適応症として「前立腺がん」を外したという裏話があります。

プロスタール、パーセリンのように抗男性ホルモン薬と言われると非常にイメージが悪いので、今では前立腺を直接小さくする効果のある5α還元酵素阻害薬を処方するのが一般的です。

さらにこんなヘンなこともおっしゃっています。

神経因性膀胱では、デトルシトール、ポラキス、ベシケア、ウリトスといった薬剤を投与するなど、頻尿の原因によって投与するべき薬は変わりますので、治療前には、原因を特定する検査が必要不可欠です。他には、抗コリン薬、β受容体刺激薬なども、頻尿の薬として広く知られるようになってきました。


ああ、複数の知人が「最初の1行しか正しいことが書かれていない」と評した気持ち、よーくわかります。これどっから手をつけたらいいのか・・・。


●神経因性膀胱に対してデトルシトール、ポラキス、ベシケア、ウリトスといった薬剤は適応ありません。

●「他には、抗コリン薬」と述べていますが、数行前に書いた「デトルシトール、ポラキス、ベシケア、ウリトス」のことを抗コリン薬と呼びます。デトルシトール、ポラキス、ベシケア、ウリトスが抗コリン薬だってことをご存知なかったようですね。

●前立腺肥大症・神経因性膀胱に対して安易に抗コリン薬を使用すると尿閉と言って、尿が全く出せない状態になる可能性が高くなり、特に神経因性膀胱が疑われるときは、泌尿器科医でさえビビって使いません。

さらに薬の副作用として

薬にはこのような効果が認められますが、口がかゆくなる、便秘になるといった副作用が出る場合もある

って書いてあります。多分、抗コリン薬の副作用について書いているつもりなんでしょうけど「口がかゆくなる」は聞いたことありませんねえ、アナフィラキシーショックでしょうか?作用機序としてどうしても発現しやすい「口渇」をなぜか口が痒くなると思い込んじゃったんでしょうね。

長期的な服用になると、患者さんへの負担が大きいこともあります。

これ頻尿・過活動膀胱・前立腺肥大症の一番の原因が歳をとること、老化だってご存知で書いているのでしょうか?

やっぱり、最初の1行しか正しくないわ、と思ったのですがこの記事の最初の1行は「頻尿は、軽度の場合はセルフケアで改善できることもあります」です。過活動膀胱による頻尿に悩まされる方の原因の多くは「老化」です。老化をセルフケアで改善できるのでしょうか?最後の方にこんなことが書かれています

症状が重くない場合は、運動療法や食事療法、または頻尿の緩和に作用する成分が配合されたサプリメントを補助的に服用するなど、薬に頼らない方法から取り入れてみてもよいでしょう。

多分ノコギリヤシとかのことなんでしょうけど、複数回行われたノコギリヤシの前立腺肥大症による頻尿への効果の医学的検証では現時点では効果は認められていません。食事療法に至っては全く確立されておりません。

ヘルスケア大学及び監修した医師は泌尿器科医に喧嘩売ってんの?

ニセ医学情報が拡散するという現象についてこんなのも書きました、よろしければどうぞ。

コピペ騒動に巻き込まれちゃうぞ!!ヘルスケア大学さま、第二のWELQになってしまいますのでご注意を。

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