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NHKガッテン「大注目の検査はこれだ!」は大問題、ニセ医学に使われちゃうぞ❗

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ガッテン!「目指せ健康長寿」

http://www9.nhk.or.jp/gatten/articles/20170 510/index.html?c=health

中途半端で説明不足、針小棒大でお馴染みのNHK「ガッテン」が予想通りにまたやらかしてくれました。

2017年5月10日水曜日で「めざせ健康長寿 大注目の検査はこれだ!」と題して大胆なる番組をお作りになりました。

毎度おなじみNHK「ガッテン」がまたやらかしちゃいました❗

ガッテン!「目指せ健康長寿」の内容は、

  • 健康長寿の秘けつは慢性炎症にあり!
  • 健康診断でわかる!「炎症」の数値
  • 慢性炎症 原因の1つは「肥満」

の3つから構成されています。NHKのガッテンの言いたいことを忖度しますと、

CRPが高いと慢性炎症がある → 慢性炎症が長寿を妨げている → 肥満の人はCRPが高いから寿命が短くなる可能性が出てくる

、という不思議なロジックで番組を構成された方の想像力はかなりキテいます。

大注目の検査というタイトルからして「CRP検査を受けましょう」と感じ取るのが一般的ではないでしょうか?この三段論法は一見なるほど、と思わせるものですが正確には三段跳びだよ〜❗

単純に肥満は長寿にとってリスクになる、といえばそれで終わり

そんな簡単な話をさも新しい医学では的に取り上げた時に利用されたのが「CRP」であり、さらに精度を上げた高感度CRPである「hsCRP」です。

世の中には不埒な医師もいますので長生きするためにNHKで紹介された高感度CRP検査を受けましょう❗と派手に広告宣伝する医療機関が出てきちゃう可能性があります。なぜガッテンの内容はヘンテコであるかを説明していきます。

記憶に新しいところではガッテンはあたかも睡眠薬が糖尿病に効果がある、なんて番組つくました。

睡眠薬で血糖値をコントロール⁉NHK「ガッテン!」がまたやらかしちゃいました❗

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睡眠と血糖値コントロールには密接な関係があります。ですが血糖値をコントロールできない糖尿病患者さんに対して不眠症改善薬「ベルソムラ」を処方する医師はいないはずです。適応外処方です。NHKで放送され厚労省が厳重注意する事態になった糖尿病に睡眠薬問題について解説します。

これで「また」という言葉を使っているのはまだ複数やらかしちゃってるワケで、

バリウム検査を受けると虫垂炎になりやすい⁉ってことは、大腸がんにもなるの?

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健康診断で行われるバリウム検査。好きな人はいないでしょう。そのバリウム検査を受けると虫垂炎になりやすいという話があります。さらにそこから推測されるのがバリウム検査を受けると大腸がんのリスクが増加する可能性です。バリウム検査のメリットとデメリットを考えてみました。

NHKのボトックス治療は間違いだらけ?!

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など多数の意味不明な医学情報、患者さんだけではなく、医療機関へもいい調子で迷惑をかけています。

そもそもCRPとはなんぞや、さらに高感度CRPで何がわかるの?

区健診や会社の健康診査の検査項目にCRPが入っていることは少ないはずです。強い腹痛が長期に渡って続く、高熱がなかなか治らない、そんな時に血液検査を受けたらまず間違いなくCRPも調べているはずです。

CRPは特定の疾患に特異的に反応する血液マーカーではありません。

CRPはたんに体内に炎症があるか否かを知るための目安にすぎません

CRPは正式にはC反応性蛋白定量検査というものです。

Cは肺炎球菌に含まれるC多糖体のCが元の意味で、Rはreactiveの頭文字、Pはproteinの頭文字です。要するに体内で炎症があるために血清中にC Reactive Protein (CRP)が増加していることを知る検査であり、標準的な医療では特定の病気を見つけるために使用することはありません。

従来のCRPだと0.1mg/dl以下は調べることができませんでしたが、高感度CRPは0.01mg/dlまで検出できますので、小さな炎症までも検査可能となったのです。

研究レベルでは高感度のCRPを調べる意味がありますが、実際の臨床では従来のCRP検査で十分用が足ります。今回のガッテンの早とちりは多分、動脈硬化が慢性の炎症と関連性が指摘されていることを受けて、一般的ではない高感度CRPなんて検査方法を引っ張り出してきたんでしょうね。

翌日の外来で「高感度CRPをお願いします」って患者さんが現れたと、知人はSNSで報告していました。

じゃあ、なぜCRPを調べるのとの素朴な疑問

例えば前立腺がんの早期発見を可能にしたPSAを例として説明しますね。PSAは前立腺特異抗原と呼ばれ、前立腺から出ているタンパク質の一つです。

男性の患者さんに対してPSAを調べて高値であったから即前立腺がんと診断することはありません。PSAは前立腺がんを見つける上ではかなり特異的な腫瘍マーカーではあるのですが、膀胱炎や前立腺炎を合併していると高い値を示すことがあります。膀胱炎なら簡単な尿検査や問診をすることによって、PSAは炎症があったから高い結果になったんだとわかります。

しかし、前立腺炎の場合は尿検査が陰性の場合が高頻度で見られ、排尿時痛などの特徴的な症状がない場合も多いのです。

そんな時に活躍するのがCRPなんです。PSAが高値であり、CRPも高値を示す場合、炎症によってPSAが高いと判断し、時間をおいて再検査をします(わかりやすく簡略に書いていますが、そのほかの検査も並行して行います)。

その結果CRPが低くPSAも低下していると、前立腺炎によってPSAが高値を示した、と判断します。

注意:実際はこんな簡単な流れではないのですが、CRPの使い方の一例として書きました、誤解なきように。

ヘンテコなガッテンの説明

慢性炎症の原因は肥満❗なんて大発見のような扱いをしておいて、前掲の番組サイトではこんなことを言っています。

「CRP」の数値が基準範囲内(0.3mg/dl以下)の方は必要以上に心配する必要はありませんじゃあ、最初から大注目の検査として高感度CRPなんて話を持ち出すなよ❗

長寿であるためには慢性の炎症がないことが必要 → 微小な炎症を見つけるために高感度CRPを紹介 → 肥満は慢性の炎症状態 → でもCRP検査は特に必要ない

このヘンテコな話に付き合ってきてかなり疲労困ぱい。単純に肥満は長寿の敵です、って言っちゃえばいいのに。

実際の医療を知らない人が番組を無理くり構成するとこんなヘンテコな番組に仕上がっちゃうお手本でした。

変な医学情報で一般の方を混乱させ、医療現場にも影響があることをNHKは十分に認識していただきたいです。この番組を利用して「あなたの寿命を予測します。長生きするために高感度CRP検査を受けましょう」って感じのヘンテコな医療機関が出てくる可能性もあることにご注意ください。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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