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「不妊治療には祈られることが有効」⋯多分、ウソです。

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産科系に弱い私ですが、妊活方面にかなりトンデモさんが生息していることが判明して、最近はちょくちょく妊活に関する情報(医学情報以外も)収集している今日この頃です。そんな時、こんな記事を目にしてしまいました。

祈ってもらうことで妊娠率が2倍❗

祈られると妊娠率が上がる、という話が出回っていますが⋯ウソだと思うよ。

ご自分で祈るのではなく、祈ってもらうのだとさ。

画像

http://umiwakeseikou.com/huninn/huninngenninn-kennsa-taisyohou/huninn-sennzaiisiki-shizennninnshinn/2449.html

そこにはこんなことが書かれています。

ある驚く結果を出した研究があります。体外受精を受けている女性たちを2つのグループに分けて、一方のグループにだけ、あるキリスト教徒の団体が、妊娠祈願の祈りをささげたのです。祈ってもらったグループの妊娠率は約50%、祈ってもらわなかったグループの妊娠率は約25%。「祈ってもらうことで妊娠率が2倍」になったというのです。この論文がコロンビア大学の著名な研究者によって発表されてたのです。

要するに妊娠を希望する人を二つのグループに分けたら、祈ってもらった方が妊娠率が2倍になった、ってことですね。なんとなーく、怪しげなムードを醸し出している文章なんで、早速調べましたよ、コロンビア大学の著名な研究者による「祈ると妊娠率2倍説」について。

その論文はこれでしょうけど、この医学論文かなりトンデモ臭が⋯

祈ると妊娠率がアップする、という医学論文はこれですね、間違いないと思います。

「Does prayer influence the success of in vitro fertilization-embryo transfer? Report of a masked, randomized trial」(J Reprod Med. 2001 Sep;46 (9) :781-7)、実験方法は韓国で体外受精をした人に対して、米国・カナダ・オーストラリアの団体が祈る、いわゆる遠隔治療的に行われています(このあたりからかなり怪しい)。

この論文は2001年に掲載されていますのでこれが事実であったら少子化問題を抱えている日本は国をあげて祈りまくるはずです。少子化対策の一つとして、不妊治療に各自治体は助成金を支給していますので、祈ることによって妊娠率がアップするならば財政への負担も減るし、この助成金を保育園の拡充等に回すことも可能となります。

しかしこの祈ると妊娠率が二倍になるという論文、かなり臭います。主筆者の「Cha KY」って方、フルネームは「Kwang Yul-Cha」さんという方で韓国内で不妊治療専門クリニックを経営していて、米国の医師免許は持っていないために、この論文で使用されたデータは全て韓国内の「Kwang Yul-Cha」さんのクリニックのものです。

二番目に名前の載っている「Wirth DP」って方は「Daniel Wirth」さんがフルネームであり、「paranormal research」つまり超常現象の研究家のようです(https://www.centerforhealthjournalism.org/blogs/prayer-fertility-study-where-was-skepticism より)。

コロンビア大学の著名な研究者なんて名前が載ってないじゃん❗

前掲の不妊症・妊活で悩む赤ちゃんが欲しい方のためのカウンセリング「Salon Hagukumi」サイトにはコロンビア大学の著名な研究者によって発表された論文と書かれていますが、現時点で確認できるPubMedで検索可能な論文には「Cha KY」さんと「Wirth DP」さんの名前しかなく、両者ともにコロンビア大学の研究者ではありません。となると「祈ると妊娠率が2倍」って話の雲行きはかなり怪しくなってきます。

実はこの論文は初めは確かにコロンビア大学のRogerio A. Lobo教授の名前が掲載されていたのですが、今回の研究が規則に違反していることが明らかになり、論文から自分の名前を取り下げたようです(他の論文に彼らの論文が引用されていて「Cha KY, Worth DP, Lobo RA. Does prayer influence the success of in vitro fertilization-embryo transfer? Report of a masked, randomized trial. J Reprod Med. 2001;46 (9) :781–87. 」となっています)。

ちなみに「Kwang Yul-Cha」さんも韓国で起きたヒト胚性幹細胞捏造事件の影響を受けて米国で一悶着あったとの記事もありました。

たった一つの研究結果を信じ込んではいけないよ❗

医学論文が専門誌に掲載される場合、厳しい査読の後にやっと掲載されるものもありますが、会費さえ払っていれば掲載される基準の専門誌もあります。また高名な研究者の名前が添えられていれば、簡単な査読で掲載されちゃう場合もあります。

興味深い研究結果が専門誌に掲載された時、他の研究者は間違いなく自分たちも同じような研究を行う追試を行います。残念ながら私は「祈りと妊娠」に関する医学論文を他に見つけることができませんでした。

実は祈りと病気の関係は海外では多く研究されています。例えば「Intercessory prayer and cardiovascular disease progression in a coronary care unit population: a randomized controlled trial」(Mayo Clin Proc. 2001 Dec;76 (12) :1192-8)では心血管系の病気の患者さんに祈らせて医療的効果があるかを調べていますが、結果は影響なし。

さらに遠隔治療に関しては「Flying carpets and scientific prayers. Scientific experiments claiming that distant intercessory prayer produces salubrious effects are deeply flawed」(Sci Am. 2004 Nov;291 (5) :34)、遠くから祈ることが病気に対して有効である、という実験は深刻な欠陥があるよ、って論文です。

ご自分の精神状態を整えるために祈ることはそれなりに体に影響があるとは思いますが、はるか遠いところから祈られてそれによって妊娠しやすくなる、なんてことあるわけないです。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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