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「食べものだけでガンが消えた」のオーガニック薬膳料理研究家高遠智子さんの本がかなりヘン❗

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「食べものだけで余命3ヶ月のガンが消えた」(高籐智子 幻冬舎)という一般書籍があります。

食べ物だけでがんが消えたと主張する料理研究家高遠智子さんの著作に関しての疑問

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医学的な常識として進行がんが標準医療を行わないで食べ物だけで、寛解(著者によればガンが消えた)するのは非常に稀なことと考えられます。稀と書いたのは私の専門である泌尿器科領域、特に腎がんの場合、原発巣を切除すると肺の転移巣が消えてしまうことが、本当に稀なんですが起こりうるので、絶対に寛解しない、とは言い切れません。

この著作物は213ページで構成されていますが、ご自分が卵巣がんであり、それをフランス旅行でしった、トマトを積極的に食べるようになって、余命3ヶ月と宣告された卵巣がんが消えた、とう体験談が45ページ書かれています。

後半はネットや一般書籍から集めてきたような「体によい食べ物・料理」で構成されていますので、これは無視。

この本のP14にトンデモない記載があります。

なんと高籐智子さんはスキルス性の原発卵巣ガンだったのです❗

スキルス性の卵巣がんって何ですか?卵巣がんの分類法で「スキルス性」って無いのですけど⋯

「食べものだけで余命3ヶ月のガンが消えた」全体の信頼度が急降下

このスキルス性の原発卵巣ガンなる謎のガンによって「食べものだけで余命3ヶ月のガンが消えた」全体の信頼度が急降下です。健康雑誌に載っているような「末期がんからの生還、私は◯◯健康法でがんを克服」レベルであり、実際にがんであったのかの確定診断がなされていない、怪しげながん克服話に高籐智子さんの本は思えてしまいます。

自分に効果があったから、あなたにも効果がある⋯これは大間違い

非常に稀ですが、がんの自然治癒とも言えることが実際の臨床の現場で経験することがあります。先程も述べたように特に腎がんの場合は多い傾向がありますが、他のがんであっても自然治癒(自然にがんが小さくなる場合も含む)があることは医学論文「Spontaneous regression of cancer: possible mechanisms」(In Vivo. 1998 Nov-Dec;12 (6) :571-8)などで知られています。

自分のがんが自然治癒したからといって、他のがん患者さんに対して「あなたも自然治癒を目指しなさいよ」なんてことをいうのは、自分に起きた奇跡的なことの再現を第三者に勧めることと同じです。

高籐智子さんは薬膳を中心とした料理教室を開催している様子なので、医学的には存在しないスキルス性の卵巣がんを食事だけで治したことを生徒さんに話しているでしょうし、このような本を出されているということは、ご自分あるいは家族ががん闘病中の方で藁をもつかむ思いのへの宣伝の一つである、とも考えられます。

しかし、そもそも医学的にあり得ないがんに罹患してそれを食べ物だけで治したという話を真に受けて、高籐智子さんの薬膳料理教室に通われる人々のことを考えると胸が痛みます。

高籐智子さんの闘病記録自体がなんだかヘン

食事だけでがんを治したと主張する高藤さんですが、しっかりと手術も化学療法も放射線治療も受けています(P16)。精神的、体力的、あるいは薬の副作用によって食欲が落ちることがありますので、標準治療を受けた上での補助的に食事に工夫することは誰でも試みる、普通の考え方だと思います。高藤さんは卵巣がんの治療を受けつつ、仕事に復帰します(頭が下がります)が、余命半年と宣言されてから(普通、こんなしっかりとした期間限定の余命なんて宣告するかなあ)、3年後に

今度は肺にがんが発見されます⋯それも再度スキルス性⁉

本文中からは卵巣がんの肺転移なのか、肺原発のがんなのか判然としませんが、肺がんも卵巣がんも「スキルス性」はありません。高籐智子さんは腎臓や脊髄や乳房にも卵巣がんが転移している様子ですが、その治療はどのようにしていたのか?さらにこれだけ多臓器に転移していたのですから、肺のがんも多分卵巣がんの肺転移を考えられます。しかし、彼女の治療歴に「ランダムに放射線を照射した」との記載がありますが、これはしっかりと通院していなかったのか、適当にいろんな場所に放射線を照射(普通はあり得ない)のか、気になって仕方がありません。

がんを食事だけで治すことは不可能とお考え下さい

フランスでフレンチガストロノミー上級ディプロマ、アロマ・ハーブセラピストの資格を取得して(なんの資格はよくわかんないけど)、さらに中国に渡って国際中医薬膳師免許(こんなのあるのかな)を取得した高籐智子さんの行動力はがんと闘っている方への励みにはなると思います。

ご自分がたまたま進行がんに侵されていて、たまたま食事を工夫したら、たまたまがんを押さえ込むことに成功したという体験を元にしてオーガニック薬膳料理を開催しているのは、かなり気になります。本の途中にがんと診断された方に対して、食事療法をアドバイスしているのです。海外ではこんな事件が起きています。

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「自然療法でがん治癒」とうそ、ブロガーに有罪判決 豪(AFP

高藤さんもあまりに派手に食べものだけでがんが消えたとか、がんが治ったとか喧伝すると、落とし穴があるかもしれませんのでご注意下さいませ。

こんなのも書きました⋯

やっぱりヘンだよ!料理研究家の高遠智子さん、経歴詐称疑惑は別物としても⋯。

やっぱりヘンだよ!料理研究家の高遠智子さん、経歴詐称疑惑は別物としても⋯。

TokoTakato(旧ネーム高遠智子ベストセラー作家です!)さんは余命3カ月のガンの末期ガンから薬膳オーガニックな食生活によって生還したという体験を売りにしている料理研究家です。高遠さんが本当に末期がんだったのかどうかも医師からすると疑問なのです。ちなみに卵巣がんステージ4の生存率は28%あります。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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