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適切な睡眠時間ってあるのだろうか?

更新日:

不眠や入眠障害の患者さんが多くなっている気がします。人生の三分の一は寝ているんだから、という言い回しがあるくらいですから、8時間程度の睡眠が標準とされています。しかし、実際の8時間睡眠時間を確保することは仕事をしている方にとってはかなり難しいのではないでしょうか?

因みに私は睡眠の専門医ではありませんので、素人の方と同じような素朴な疑問に対しての自問自答ですので⋯。

正しい睡眠時間とは

厚生労働省が平成23年に発表した結果はこのようになっています。

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そもそもなぜ睡眠をしないといけないか?

今の所結論は出ていません。

休息説

一般的な考えです。体と脳を休ませ、疲労を残さないで翌日活動できるようにするためということです。でも睡眠中の脳の活動レベルは極端に低下しているわけでないことは研究によって解っています。

ホルモン説

成長ホルモンなどは睡眠時間に多く分泌されています。成長ホルモンは子供が育っていくためにはマストアイテムです。大人に対しては細胞を生まれ変わらせる働きがあり、美肌をキープするためも必要ですが、脳の細胞は一定年齢以上は増えませんので単純に成長するために睡眠が必要とは言えない気がします。

免疫説

睡眠中は免疫力が高まるという説がありますが、逆に考えると病気を戦うために体力を消耗したことにより睡眠が必要となって、休息によって免疫力が回復するとも解釈できます。ストレスを発散する、寝て嫌なことを忘れてしまう⋯よくやりませんか?でも、あまりに嫌なことだと眠れなくなることも多いのではないでしょうか?

体力を回復し、ストレスを発散して翌日に備えるために睡眠を取る、という素直な考えが正しそうですが余りストレスがなさそうで、運動も活発でないコアラは22時間、ナマケモノは20時間程度睡眠時間を取っているのはなんでだ?

世界の睡眠事情は

oecdの調査によると結果はこのようになっています。

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  • フランス人  8時間50分
  • 日本人    7時間50分
  • 韓国人    7時間49分

予想通り、日本は17番目に睡眠時間が少ないようです。逆に長期バカンスで有名なフランスはダントツ一位ですが、このデータはバカンスの期間も含めたデータですので、oecdの意図は日本・韓国は働き過ぎです、西欧のようにゆっくり休暇を取って睡眠時間も確保しましょう!的なものに見えてしまいます。 律儀な日本人は昔からの8時間睡眠を守っているのが国民性を表していて面白いですね。

不思議な見方もできます

一般的に高齢になると睡眠時間が長くなるという意見もあります。逆に年を取ると早起きになるという意見もあります。ここからはあくまで私が診療で感じ取っている私見ですので、データはありません。

  • なぜ睡眠が必要とされているか医学的に明快な解答はでていないが、赤ちゃんはよく眠る
  • 思春期以降はTV・ネット・勉強の為、眠たいのに睡眠時間が確保できない
  • 仕事を始めると自分の時間を確保するために睡眠時間を削る傾向がある
  • 老人だけの暮らしだと起床時間が遅い傾向にある
  • 高齢者は肉体的な疲労を回復するための睡眠はあまり必要とされない

高齢の患者さんに聞いてみた話 (当院での実話)

  • 早めに目が覚めても動き出すと家族に迷惑が掛かるので布団でラジオを聴いている
  • 早く起きてもやることがないので、もう一度布団にもぐりこむ
  • 面白いTVが無いので早めに寝てしまうが、外が明るくなるまで布団に入っている

上記のお話を読み込むと悲しくなってくるような状況が隠されているのです。高齢者ほど睡眠薬・睡眠導入剤を使用している率が高いことが知られています。ひょっとして8時間睡眠が頭にあるために「無理やり寝ている」状況を作り出すために薬を希望している可能性があります。やることが無い「趣味が無い」「仕事が無い」「家族としての役割が無い」とも解釈できます。高齢社会に向けて睡眠についての詳しい研究が求められているのではないでしょうか?

睡眠の質とは

これも厚生労働省のデータです。

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睡眠の質は年齢的に極端な差があるわけではないようです。高齢者は過活動膀胱や前立腺肥大によって夜間頻尿という症状がでるので、眠りの質が悪くなる傾向があることを予想したのですが、不思議な結果になっています。 一番最初にお見せしたデータですと、明らかに高齢者の方が睡眠時間を確保しています。しかし。眠りの質は高齢者が若干悪いようです。

医師が考えないといけない

ひょっとすると「やることが無いから眠っている、布団に入っている」でも目が覚めるので「睡眠薬等を使用している」という結果が導きだされたら、私たち医師が考えている処方は全くの検討違いの可能性がでてきます。医療関係者は患者さんの生活背景もよく把握してから薬の処方を考えないといけないと思います。

木を見て森を見ず、の可能性が大です

私は睡眠の専門家ではありませんので、ぜひその当たり専門家の先生のご意見をお伺いしたいと思います。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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