五本木クリニック院長ブログ

腎結石の患者さん,今まで間違った指導をしてきてごめんなさい


☆一生のうちに10人に一人は経験する尿路系の結石

なぜいきなり泌尿器科領域の病気について私がブログを書いているか疑問をお持ちの方はこのブログをお読みください。尿管結石、腎結石といわれる非常に痛みを伴う病気があります。


この病気は腎臓で作られた石が尿の流れにのって尿管に詰まることによって発作的な痛みを起こしてしまいます。


stone_2

アメリカでの発症状況ですhttp://www.kidneystoners.org/より


この痛みは人間が感じる「三大痛みの一つ」なんて言われていた時代もあります。一番痛いのがくも膜下出血。二番目が心筋梗塞。三番目がこの尿路系の結石です。


一番目と二番目は数十年前は即死亡につながる病気でしたので、その痛みを感じた方は痛み方を人に伝えられないね、なんて軽口を私たちは言っていました。つまり、尿管結石・腎結石はそこまで痛い病気であり、再発もする患者さんにとっては非常につらいものだったのです。


stone_4

私たちは金平糖の様な形と表現します。こんなのが内臓に引っかかるのですからメチャクチャ痛いのは単純に推測できますよねhttp://www.medicinenet.com/より


☆腎臓結石の治療は?

腎臓に石がある状態では痛みは起こりません。石が尿管に落ちてきた時に痛みが生じるの出す。その痛みの治療ですが、単に痛みどめを処方して「自然に出るのを待ちましょうね!」という非常に非情な方針が一般的です(少し日本語変ですが)。


痛みどめも飲み薬から麻薬系の注射薬まで色々ありますが、対処療法であって石を積極的にだす薬はあまり使用しません。


stone_3

尿路系に詰まった石が痛みの発作を起こしますhttp://newsblog.mayoclinic.org/より


石を出す働きがあるとされている薬はあることはあるのですが、泌尿器専門の医師はそれの効果をあまり信用していません。「おまじない程度ですが、飲まないよりは飲んだ方がいいかもしれません」程度の処方の仕方です。


裏ワザ的には前立腺肥大症に使用する薬を処方すると尿管が拡がり石が出やすくなることはなるのですが、保険診療では適応疾患とされていませんので、
「石が出るようにいっぱい水分をなんで好きなものでいいのでを摂ってくださいね!」なんていう言葉を添えるしかないのです。


stone_1

腎臓内に留まっている場合は体外衝撃波ESWLで積極的に治療できます(腎臓内にある場合は痛みはありません)。また、尿管に挟み込まったものは内視鏡手術で取り出すことは可能です。


☆今まで私たちが言っていたことは間違っている可能性が・・・

結石の発作は水分補給と関連があるために、夏場に増える傾向があります。結石発作でのた打ち回る患者さんに効果的で積極的な治療法を持っていない私たちは痛みどめ等の処方をしたのち、水分を積極的に摂ってもらうことを告げます。


「水分をいっぱい摂ってください。夏ですからビールとかでもいいのでじゃんじゃん飲んでね」なんて言い方をしていました。患者さんに十分な治療が出来ない罪悪感からか「ビールでもなんでもいいよ」といってしまっていたのです。


しかし、今回この指導法が間違っていることを示唆する論文が出されました。


☆加糖炭酸飲料と腎結石の関係

Soda and Other Beverages and the Risk of Kidney StonesというタイトルでClinical Journal of the American Society of Nephrologyに掲載されています。(CJASN August 07, 2013 8): (8) 1389-1395
この論文によりますと


・腎結石の発生リスクは飲み物によって違いがあった
・コーラやソーダなどの糖を加えた炭酸飲料は結石のリスクを高めていた
・コーラを一日一杯以上飲む人は飲まない人と比較して腎結石のリスクが23%上昇
・コーヒーや紅茶は結石のリスクの低下と関連していた


ということでした。
この調査は19万4095人のデータを8年間フォローアップしたもので、かなり大がかりで調査対象も多いので信用に値する研究と判断してもいいと考えます。


なお、ワインはコーヒー等と同じように結石のリスクを低下させていました。しかし、排石させるくらいワインを飲んだら多分肝臓が壊れますけど。


☆じゃぁ、どうすればいいの?

飲料摂取量が腎結石のリスクを低減することは間違いがありません。しかし、ある種の飲み物・・・糖が加えられている飲み物は腎結石のリスクを上昇させます(ビールも含まれます)。


石を経験した人は今までのように予防的に意識して飲水をしなければいけませんが、コーラや炭酸系の飲み物は避けるべきです。そこで問題があります。


コーヒーや紅茶は予防につながるようですが妊娠中の方や妊娠を考えている方はカフェインのリスクがあることを知っておいてほしいのです。となりますとどの様な方にもおすすめできる方法は・・・水を一杯飲んでくださいね!が間違いないようです。


今まで「何でもいいからイッパイ飲んでね」と言ってしまった患者さんにここでお詫びを申し上げます。ごめんなさい!

↑ページTOPへ

関連記事

風邪っていっても色々ありまして、カゼの予防と対策イメージ

風邪っていっても色々ありまして、カゼの予防と対策

■カゼは風邪症候群と言うことは広く知られていますけど・・・。 「風邪って病名じゃないんだよね」と今では多くの方がご存知のことだと思います。正式名称は「風邪症候群」で「感冒」なんて言い方もされます。多くの原因はウイルス感染 … 続きを読む

長寿のカギであるサーチュイン遺伝子、実はその効果はウソという説があります 追記ありイメージ

長寿のカギであるサーチュイン遺伝子、実はその効果はウソという説があります 追記あり

■長寿遺伝子サーチュインをスイッチオン!!ってサプリとか健康法がありますけど、ウソっていう話もあります 長寿というか長生きの為にサプリや健康法でサーチュイン遺伝子を活性化するのがコツ、という表現が巷に出回っています。それ … 続きを読む

鵜呑みは危険!!「妊娠中に葛根湯を飲んでも大丈夫」というネット情報は間違いだらけ!!イメージ

鵜呑みは危険!!「妊娠中に葛根湯を飲んでも大丈夫」というネット情報は間違いだらけ!!

■妊婦さんが風邪をひいたとき「葛根湯は漢方なんで安心して服用できる」は間違った情報です 先日、葛根湯が花粉症にも効果がある、との話を検討しました。その時ネット上でかなり気になる情報を複数見かけました。それは ◎漢方薬は効 … 続きを読む

告白します、実はインフルエンザワクチンの効果が弱まっていましたイメージ

告白します、実はインフルエンザワクチンの効果が弱まっていました

■ワクチン推進派として痛いデータ 積極的にインフルエンザワクチン等の摂取を推進している私ですが、ここで告白します。2012年から2013年のシーズン、つまり一昨年のインフルエンザワクチンはイマイチでした。現時点でエポラ出 … 続きを読む

メタボ健診って、義務化されていてなんか変です・・・当院が健診を止めたワケイメージ

メタボ健診って、義務化されていてなんか変です・・・当院が健診を止めたワケ

■メタボ健診ってなんだろうか? メタボ、メタボという言葉は10年前には聞いたことが無かったんじゃないでしょうか。でも、最近ではお腹の出たオッサンは即「メタボ」と指摘されてしまいますね。メタボ健診は本式には特定健康診査と言 … 続きを読む