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世界中のワクチンに対する懸念や批判を評価するシステムが開発された

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子宮頸がんに対するワクチンが騒動を引き起こし、日本ではワクチン自体にたいする不信感がつのる傾向がより一層強くなっています。

中にはワクチンの効果自体に疑問をもつグループもあるようです。さらにワクチンの有害性を科学的・医学的ではないアプローチで広めている団体も見かけます。

ワクチンに対する風評を監視するシステム

そのような動きは決して日本だけのものではありません。英国においても近年「はしか(麻疹)」が流行していますが、その原因は10年ほど前に三種混合ワクチン(麻疹・耳下腺炎・風疹)が自閉症の発症リスクとの関連が噂され、それをメディアが大々的に取り上げたためにワクチンの接種率が急激に低下したことによると考えられています。

日本でも一時期これらの予防接種のマイナスの面だけが取り上げられ、任意接種になった時期がありました。実際にアメリカに留学する手続きでワクチン接種の不備を指摘され、渡米直前にあわてて予防接種を追加した患者さんを当院でも複数経験しています。

アメリカではしかが流行した時は「日本人がはしかを持ち込んでいる」とまで言い出した州もありました。風評によって効果が医学的に証明されているワクチンの接種率が落ちることは世界中の医学者にとって頭の痛い問題となっていました。

そこでロンドン大学のHeidi J.Larson氏らが中心となって世界中のワクチンに関する評価や風評を監視するアプリケーションを開発しました。

世界144か国の状況を把握するシステム

Measuring vaccine confidence: analysis of data obtained by a media surveillance system used to analyse public concerns about vaccinesという題名でThe Lancet Infectious Diseasesに投稿されています。(Volume 13, Issue 7, Pages 606 – 613, July 2013)

HealthMapと呼ばれるもので、ニュース報道・ブログ・SNS・行政の発表などを電子データソースからピックアップして病気の流行を敏感に察知して地図上にマッピングしていくものが既に開発され稼働中ですが、このシステムによって集められたデータを論文発表者らはさらに解析しました。それが今回開発されたアプリケーションです。

集められた世界各国のワクチンに対する情報をワクチンを否定するもの、肯定するものなどに分類することができます。対象は144か国の1万380件の報告です。これらの報告のコンテンツは肯定的なものが69%、ワクチンに否定的なものが31%含まれていました。それらをさらに地域別・疾患別に分類してワクチン接種を妨げており、流行を許してしまう状況を検討しました。

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           当然、日本も監視されています

その結果は⋯・

ワクチンに対して否定的な内容は

・24%はワクチンプログラムや病気の流行の影響
・21%はワクチンに対する考え方や信念(宗教観、誤った考え方)に基づくもの
・16%はワクチンの安全性に関するもの

今回の日本の子宮頸がんワクチンに対するものは16%を占めた安全性に関するものに含まれるでしょう。今回の調査は2011年5月から2012年4月のデータが対象ですので、子宮頸がんワクチン騒動はこの解析の対象には入っていなかったようです。

更にこのシステムは各国における風評の広がりや実際の感染の拡大などを追跡調査できるようになっているそうです。

今後の見通し

これらのシステムを活用することで、ワクチンに関する懸念の広がりを監視することが可能になりますので、行政側はポイント、ポイントでワクチン接種の重要さを集中的にアナウンスすることが可能になる、と考えられています。

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子宮頸がんワクチンはインフォメーション不足だったことは否定できません。
しかし、確実に予防効果が証明されているものまで否定するのはまずいと考えます。

さらにこれを発展させれば「各地域の特性に合わせてタイムリーに有効なワクチン接種の計画を立てることが可能になる」と論文は訴えかけています。この情報監視システムが日本の子宮頸がんワクチンをどのように評価していたか、気になるところですが、引き続きこのプロジェクトが稼働していたならばデータとして蓄積されているはずです。

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今回のプロジェクトは多くのサイトで取り上げられています
http://childsurvival.net/のHPより

しかし、今までワクチン対してブログを数本書いてきた私ですが、イギリスの情報監視システムの監視されていたかと思うと少し複雑な気持ちもします⋯もちろんブログは多くの人に読んでいただくのが使命ではすので全くお門違いな「複雑な気持ち」なのはわかっています。私だって海外で発表された論文を見つけてきてはブログを書いていますのでお互いさまなんですけど。

先日、アメリカの国家安全保障局が世界中のネット情報・メールまでを監視していたというニュースの影響ですかね、変な気持ちがするのは。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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