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女性はカルシウムを取り過ぎると死亡リスクが2.6倍高まるという話は本当か?

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女性は骨粗鬆症になりやすいのでカルシウムを積極的に摂りましょう!はウソ??って女性で特に整形外科を受診した人なんかしつこく医師にアドバイスを受けた経験があるのではないでしょうか?

カルシウムを魚からとっても意味がなく、動物性のカルシウムじゃないと効果が無いなんて話もありました。では、サプリなどから摂取するカルシウムは果たしてどんな効果があるのでしょうか?

カルシウムを取り過ぎのリスクもあります

広告などでは「加齢による骨量の低下を防ぐ」「イライラを防ぐ」「ダイエットすると骨が弱くなるのでその補助に」という表現が多い様です。今ではサプリは効果より吸収性の差別化が起きているくらいで、サプリでカルシウムを補うという行動はそれほど不思議ではないようです。もちろん成長盛りの子供には十分なカルシウムが必要であることは間違いありませんが、果たして摂り過ぎてしまうとどうなるか?という疑問が湧いてきます。

「カルシウムの摂り過ぎは死亡率が2.6倍になる」というショッキングな論文があります。
「Long term calcium intake and rates of all cause and cardiovascular mortality: community based prospective longitudinal cohort study」というタイトルでBMJに掲載されていました(BMJ 2013;346:f228)。

既に女性週刊誌等でも取り上げられているようですが、この論文を読み込んで疑問点がないか、検討を加えてみます。医学論文って実は欠点がありまして「因果関係」はハッキリしないくても「相互の関連性」があるかどうかを研究するものが多いのです。

今回の論文は長期にわたってカルシウムを摂取していることと心血管系の病気で死亡する人の関連を調べたものであり、カルシウムが心血管系の死亡率を高めると解釈するのは間違いであり、カルシウムをたくさん摂っている人は心血管系の死亡率が高いということを意味しています。

原因はカルシウムではなく、例えば「イライラしやすい人」がそれを改善するためにカルシウムをたくさん食べていて、実際はカルシウムが原因ではなく「イライラ」する原因であるストレスが心血管系の病気を引き起こすとも考えられます。

カルシウムを摂りすぎると心臓や血管の病気になりやすい、という論文の結論

50歳以上のスウェーデン人女性を61443人を対象として、19年間に渡って調査した結果です。

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上記論文より

・通常の欧米人の平均のカルシウム摂取量は1日600-1000㎎(0.6グラム―1グラムです)
・通常の食事で1日1400ミリグラム以上カルシウムを摂っていた人は1000ミリグラム以下の人に比べ死亡率が1.4倍高かった。
・さらにサプリメントをサプリメントでカルシウムを補っていた人は死亡率が2.57倍になっていた

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つまりカルシウムを必要以上に摂ると女性の場合は心臓や血管の病気になりやすく、死亡率が最高で2.6倍に高まってしまい非常に危険!という結果が導かれました。

なぜカルシウムを食べ過ぎると死亡の危険が増えるのか?

実は結構単純な事なんです。人間の体においてカルシウムは殆どが骨に存在しています。もちろんだからこそ骨を強くするために女性はカルシウムに気をつけるのです。

でも、過剰なカルシウムは血液中に存在することになります。ということは余分なカルシウムが血管内の内皮と呼ばれる部分に付着してしまいます⋯動脈硬化ですね!

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http://www.otsuka.co.jp/よりお借りしました
こんな感じで血管が詰まったり、血液の流れが悪くなります

これが原因で脳梗塞・心筋虚血が引き起され心血管系の病気での死亡率が高まってしまうのです。

吸収性にこだわったサプリ会社の努力が裏目にでた結果

前述しましたが、サプリはカルシウムは女性にとって必要なものであるという話は十分に世の中に伝わったので、今は「吸収性」が勝負どころとなっています。如何に吸収性を高めるか?ということですが、口から摂ったカルシウムは直接骨に吸収される訳ではありません。当然、腸などで消化・吸収されまずは血液に混じり込んで全身を駆けめぐります。

しかし、血液中に入ったカルシウムが多すぎると骨に吸収される以上の余ったものは血管内に血液に混じったままです。サプリが示す「吸収性」は殆どが血液濃度を高めるだけであって、骨にいかに吸収されるかというデータは提示されていないようです(私の調査不足でしたらゴメンナサイ)。

つまり吸収性が高いほどカルシウムの血中濃度が高まり、その結果心血管系の病気で死んでしまうリスクが2.6倍と跳ね上がってしまうのです。

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ずらりと並ぶカルシウム系のサプリ

日本では1000万人以上いる骨粗鬆症、さあどうする??

骨粗鬆症といって年齢によって骨がスカスカになるために骨折しやすくなることが高齢化社会を迎え問題になっています。多くの方が女性の問題と捉えていますが、例えば前立腺がんの治療でホルモン剤を使用すると男性も骨粗鬆症になってしまいます。

では、医療機関では骨粗鬆症に対してどんな治療をしているのでしょうか?もちろん処方用カルシウム製剤もありますが、カルシウムを直接処方することは殆ど行われていないと思います。日光に当たることでビタミンDが作られ、ビタミンDが小腸から食事によって摂られたカルシウムを吸収させることを促進する手伝いをします。その為、ビタミンD受容体を刺激する薬「活性型ビタミンD製剤」が一般的に処方されています。

さらに骨の形成を助ける働きがある「ビタミンK製剤」や骨が吸収されることを遅らせる「骨吸収抑制剤」が処方されています。

でも厚生労働省が推奨するカルシウムの摂取量は今回の論文によると危ないぞ❗

厚生労働省は下記のように推奨していますが⋯。

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この量を真面目に摂っているとリスクが高まるんですが⋯。

実際に日本人が食事から摂っているカルシウムは

  • 男性が515ミリグラム、女性が497ミリグラムとされています。

さらにサプリとしては

  • 男性が5ミリグラム、女性は8ミリグラムとなっています。

女性の方が意識してサプリでカルシウムを補っているのは明らかです。

サプリにおいて栄養機能食品として表示が許可されている量は
上限値は600ミリグラム、下限値は210 ミリグラムとなっています。
以上独立行政法人 国立健康・栄養研究所のHPより

このHPでは食事から摂取することを大前提にしていますので、急激に血中のカルシウム濃度が高まることはないので安心して良いと考えられます。

特に痩せるためのダイエットをしている方は栄養が足りなくなるとの情報からカルシウムのサプリを取られている方が女性が目立ちます。

とにかく他のサプリは別としてカルシウム系のサプリを使用するときは必ず医師にご確認ください!

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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