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歯周病と糖尿病の関係を逆に考えて、歯周病を治すと糖尿病は改善するか?

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糖尿病の患者さんは歯周病を合わせ持っている可能性が大きいのですが、この関連は「糖尿病だと歯周病になりやすい」という解釈が一般的です。

つまり糖尿病を改善すると歯周病も改善する、ということが言えるのですが、逆に考えて「歯周病を治せば糖尿病も改善するか?」という面白い研究を行った論文がありました。

糖尿病だと歯周病になるなら、歯周病を治せば血糖値は下がるか?

以前ブログで偏頭痛は肥満の人に多いことを書きましたが、これは肥満を解消すれば偏頭痛を治すことができる、ということにはなりません。それと同じように考えるとこの研究を計画した理由が判りやすいかと思います。

歯周病とは

http://dentiquethedentalstudio.blogspot.com/2010/11/laser-dentistry.htmlより

糖尿病と歯周病の関連

歯周病は糖尿病の患者さんが罹りやすい合併症と考えられてきました。糖尿病があると歯茎に炎症が起こりやすいために、歯肉炎や歯周炎といった歯周病なりやすいということです。糖尿病患者さんは病原菌がつき易く、感染に弱い状態であるとの考え方からこの合併症は説明されてきました。さらに歯周病になった場合、感染を起こした歯茎から細菌が全身にまき散らされるために、心内膜炎という命に関わる病気を起こすこともあります。

「歯槽膿漏が心臓病を引き起こす」なんてタイトルでテレビの健康番組が好きそうな題材でもあります。

歯周病が糖尿病を悪化させる 私たち医師はどうしても歯周病と糖尿病の関係を考える場合、糖尿病→歯周病を悪化させる、という方向になってしまうのですが、歯周病が糖尿病を悪化させるという流れもあります。そのメカニズムは歯周病の原因となったばい菌の死骸がエンドトキシンと呼ばれる毒が血管内に忍びこむと、TNF-αと呼ばれる血液中の糖分を体内に取り込む働きをする物質の機能を弱めてしまうのです。すると糖分が体内に吸収されると分泌して血糖値を下げる働きをするインスリンが、効率よく働かなくなる可能性が出てきます。

歯科による研究だと歯周病の患者さんで糖尿病を持病とする方にばい菌をやっつける「抗菌薬」を投与すると、糖尿病治療の目安とされる一ヶ月の間に血糖値が安定していたかを判断するヘモグロビンA1cの数値が低くなったというものがあります。

ということは

歯周病を改善させると糖尿病も良くなる、という考え方もあり得るのです。

糖尿病と歯周病

厚生労働省のHPより

やっぱり歯周病を治しても糖尿病は改善しませんでした

何とはなしに、原因と結果が入れ替わったような理論であり、しっくり行かない説明だった為に私の頭に残っていた疑問に答えてくれたのが今回の論文です。「The Effect of Nonsurgical Periodontal Therapy on Hemoglobin A1c Levels in Persons With Type 2 Diabetes and Chronic Periodontitis」で米国医師会誌に掲載されていて、私と同じような疑問を抱いた医師たちによって検討されました。歯周病を持っているけど治療をしていない糖尿尿患者さん514人を対象として研究は行われました。

一つのグループは歯周病の治療を開始しました。もう一つのグループは糖尿病の治療は続けながら、歯周病の治療は行ないませんでした。半年後に結果を集計しましたが、当たり前のことですけど「歯周病を治療していた人は歯周病が改善していた」そうです。

問題の糖尿病の方なんですけど、歯周病を治療しても血糖値の安定を見るHbA1cは残念ながら改善していませんでした。さらに追い打ちを掛けるような結果としてインスリンの感受性を示すHOMA2Sスコアもインスリンの分泌能力を示すHOMA2βスコアも両者に違いは認められませんでした。

糖尿病の改善を示すHbA1cの低下は歯周病の治療によっては変化しなかった

結論:糖尿病の改善を示すHbA1cの低下は歯周病の治療によっては変化しなかった

と、言うことになります。 歯周病を治療すると糖尿病も改善しますよ!的な広告?をネット上で行なっている歯医者さんがいますが、もしこのブログをお読みになって、ご意見を頂けると非常に勉強になりますので、ご連絡ください。ちなみに今回の研究で歯周病の治療としては ・スケーリング ・ルートプレーニング ・クロルヘキシジンのデンタルリンス を使用していますので、「抗菌剤」は内服していません。

でも歯周病の治療は糖尿病患者さんにとっていい面がいっぱいあります

歯周病を治療することによって、しっかりと食べ物を噛み締めて食事をすることが可能になりますので「飲み込み食い」を防ぐことができますし、十分に味わいながらゆっくりと食事をすることは高カロリーを摂らないでも、満腹感を得ることができるので、糖尿病患者さんにとっては利点もあると思われます。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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