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「うつぶせ寝」、本当に健康にいいの?103才の日野原重明先生が実践しているけど。

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日野原 重明(ひのはら しげあき、1911年(明治44年)10月4日-2017年(平成29年)7月18日)先生が存命中に実践されていたという「うつぶせ寝」について医師が考察した記事(2015年に投稿)になります。

うつぶせで寝ることが健康に良いとか、熟睡するために最初の数分はうつ伏せになった方が良いといった健康情報を目にしたことがありませんか?俯せ寝が本当にカラダによいのかについて検証します。

長生きで健康な人の生活を真似たい気持ちもわかるけど

元気で今でも仕事をしてまっせ、という103才で現役でご活躍している日野原先生が実践している「うつぶせ寝」。赤ちゃんの頭の形が良くなる、なんて話が子育て中のママの間で噂され「欧米人のような頭のかたち」を目指してうつぶせ寝を行なった方もいるでしょう。

うつぶせ寝、って本当に健康にいいの?危険はないの?

実は赤ちゃんのうつぶせ寝は某大学病院でも行なわれていて、1995年1月に事故死が発生して看護師さんが罪に問われ損害賠償ということもありました。長寿で健康な人が行なっていること真似すれば長寿で健康になれるのかを、「うつぶせ寝」と例として検討してみます。

うつぶせ寝するにしてもこんな枕を使わなといけません。さらに寝るポーズは細かく決められて、初めて健康的なうつぶせ寝、「腹臥位療法」ってことになるのです。

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日本ユニセフ協会大使・日野原 重明先生が考案したうつぶせ寝枕「ピロー・オハラ」の販売を開始(https://www.atpress.ne.jp/news/6146)

寝ている間この姿勢をキープできるのかな?と、素朴な疑問もありまして。

うつぶせ寝の利点・長所

医学用語で「うつぶせ」は「腹臥位」と呼び、うつぶせ寝健康法は「腹臥位療法」 (これは廃用性症候群を避けるために寝たきり・脳血管障害のリハビリに利用 1日15分から30分程度)と呼んでいるものもありますが日野原先生の方法は寝る姿勢ですから、ちょっと違うものです。「うつ伏せ寝」の健康上のメリットは日野原先生の記事によれば

横隔膜を運動させる腹式呼吸が夜間の睡眠中に繰り返され、胃腸の運動も円滑に行われ、排尿も良くなる。

健康の秘訣は⋯ 食事、肺炎予防、うつぶせ寝

一般的にうつぶせ寝が体に良いとされているのは以下のような効果が期待されるとのこと。

  • 睡眠時無呼吸の予防
  • よだれや痰が排出されやすくなる
  • 体がリラックスできて、熟睡感が得られる

このような効果効能から「副交感神経がリラックスできる」的な健康法と判断します。

また、痰が排出されやすくなると、高齢者の場合は誤嚥性肺炎になりにくくなるので、確かに日野原先生がおっしゃる健康の秘訣である「肺炎の予防」にはなりますね。

実は危険な「うつぶせ寝」

大人にとっては健康に良くても、子供には害になる健康法はいくらでもあるでしょう。うつぶせ寝が頭の形を上から見た場合、前後に長い欧米人を目指してうつぶせ寝を赤ちゃんに行なったママ・パパもいます。日本人の頭の形は横広がりになりがちなので、少しでも見栄えがいいように、という親心ですね。しかし、頭の形は遺伝子情報によってもかなり影響をうけますので、いくらうつぶせ寝をしても、頭の形がイマイチという結果になるんです。

赤ちゃんの場合、乳幼児突然死症候群(SIDS)の原因として「うつぶせ寝」がある

と指摘されていますので、世界的に「赤ちゃんのうつぶせ寝はリスキー」という判断が各国の健康行政機関が判断しています(「乳幼児突然死症候群(SIDS)について」 厚生労働省)。

大人の場合にうつぶせ寝をする切っ掛けとして「いびき」を避けるため、と言う人が多いです(自分もその1人)。

いびきや睡眠時無呼吸症候群を避ける為の「うつぶせ寝」を実行している人が多い

しかし、よーく考えてみると、仰向けで寝ていて舌根が沈下していびきをかく、という理由であったら「苦し〜、でも眠い」といってそのうつ伏せ状態を持続するんでしょうか?普通、人間は睡眠中、右に左にゴロゴロと寝返りをうちますからね。記事中には

もう一つ大切な事は腹臥位(ふくがい)で睡眠をとる。いわゆるうつぶせ寝である。一般の脊椎動物がすべてとっている腹臥位での睡眠である。これにより横隔膜を運動させる腹式呼吸が夜間の睡眠中に繰り返され、胃腸の運動も円滑に行われ、排尿も良くなる。

健康の秘訣は⋯食事、肺炎予防、うつぶせ寝

人生の大先輩であり、医師としても尊敬する日野原先生のこの話、先生が本当におっしゃったのか疑問があります。一般の脊椎動物がすべてとっている腹臥位での睡眠である。とありますが、四本足歩行をしている動物と二本足歩行をしている人間の場合、解剖学的に形状に当然違いがあるのです。首の骨と頭の骨の位置関係も違いますし、骨盤と足の骨の接合の仕方も違っています。

自然界の動物が全てうつぶせ寝だとしても、構造が違う人間にとって自然な寝方である、とは言い切れません。動物も良く観察してみると腹臥位で寝ているように見えますが、実際は側臥位で寝ていることが多い様です。

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日野原先生はひたすら「うつ伏せで寝なさい」と言っているわけではありません。

おへそのあたりに幅広い枕を置き、その上にうつぶせ寝をするが、できれば薄い羽毛の枕を二重か三重にたたみ、頭は15%くらい右か左に向かせ、右か左の耳と側頭部に枕が当たるようにし、おなかは真下に向け、両足は少し曲げて休む。

日野原重明の100歳からの人生

と、非常に細かい注意点を挙げています。

人の発言を一部を引用しがちな健康情報の危険性

「うつぶせ寝が健康に良い」というイメージの方が「うつぶせ寝のリスク」より皆さんの健康知識としては強いのではないでしょうか?日野原先生が行なっている健康法を聞きかじりの情報に頼って、ご自分で実行するとそれなりのリスク、あるいは思った様な効果が得られません。

テレビの健康番組も同様です。はじめから終わりまで、見ていればある程度の健康情報を得ること(正しいか、間違っているかは別)ができます。しかし、ほとんどの方は途中から見たり、チャンネルとカチャカチャいじっている最中に目にした、耳にした興味のある部分しか見ていないのではないでしょうか?

私もある健康番組にコメントをしました(撮影には二時間近くかかりました)が、実際に放送された場面は極々一部でありそれも「オナラが臭くなります」というコメントのみかなり強調されていました。笑 私は一町医者ですので、患者さんも私のキャラをご存知なので「先生、面白かったよ」的なレスポンスで全く問題は発生していません。

しかし、友人・知人の権威ある医師の場合、番組の方向性にあわせたコメントのみが放送されて、怒りまくっている教授が若干名ではないところが気になります。健康情報が氾濫する今現在、なにが正しくて、なにが間違っているか、を判断するのは非常に難しい状況になっています。

健康番組、あるいは健康サイトで気になる情報があり、その点について質問がある方は、新聞の場合は切り抜くか、購読紙名と日付をメモる、ネット上の場合はURLとまでは言いませんので、タイトルくらいはメモってきていただけると非常に助かります。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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