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無用の長物の代名詞「虫垂」は実は重要な働きをしていた⁉

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今から数十年前はお腹を開いた手術のとき「将来、盲腸になるといけないので取っておきましたよ」という会話が自然に病院内で行われていました。

実際は虫垂なんですが、なぜか一般的には「盲腸」って呼ばれていますよね。

その盲腸じゃなかった「虫垂」が実は重要な働きをしているという報告がお騒がせNatureに投稿されていました。

お腹の手術のついでに盲腸も取っておきました!

Natureに投稿といっても正確にはNature Communicationsです。ネイチャーって科学雑誌を取り扱った営利企業であるという点を理解の上、小保方さんの件に関してもお考えください、と書こうと思いましたがこれこそ虫垂appendixですかね。英語ではappendix(虫垂)は「おまけ」を意味する場合がありますので、「必ず必要である器官ではない」おまけ的なものとの認識を欧米でもしています。

その盲腸じゃなかった「虫垂が重要だよ❗」という論文がありました。

虫垂は免疫機能と腸内細菌叢のバランスに関連している、らしい

この論文は「Generation of colonic IgA-secreting cells in the caecal patch」(Nature CommunicationsISSN (online) : 2041-1723)というタイトルで日本人によって書かれたものです(私のように小保方さんもチャンと引用先を明記しておくべきでした)。IgAという免疫に関する物質が虫垂と関連していたと言う内容です。
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http://www.nature.com/ncomms/2014/140410/ncomms4704/images/ncomms4704-f1.jpgより
なんとはなしにSTAP細胞の写真のように見えますが、切り貼りはしていません。

上に並んでいるのが虫垂リンパ節、下に並んでいるのがパイエル板(小腸にあるリンバの集合体で免疫に関連している)の写真です。B220と書いてあるのはBリンパ球、CD4と書いてあるのはTリンパ球などで全て免疫に関する成分ですが、免疫に関連していることが明らかなパイエル板と同じように虫垂にもリンパがあつまっていることを示しています。また、腸内細菌叢にも影響を与えていることが判明しました。

でも、これってマウスなんじゃないかな

この実験で微妙な点はこのマウスって無菌状態で飼育されたものを使用していますので、直接人間の体には当てはまらないように思えます。また、マウスの虫垂ってかなり小さいことが予想されますが、実際に実験では「the appendix was gently pulled out,⋯at the border between the appendix and caecum」とありますので、盲腸との境目がハッキリしていたことがわかります。

私はマウスの膀胱とか腎臓とかは実際の実験で見ていますけど、さすがに虫垂までは見たことがないので、ひょっとしてマウスの虫垂って体の割には大きいんじゃないかと思っています。つまり、人間のように小さい必要ではない器官ではなく、マウスの虫垂はそれなりの働きをしているためにそれなりの大きさになっているような気がしないでもありません。

既に虫垂をとってしまった人はどうすればいいんだろう

この論文は非常に重要と思われます。腸内細菌(民間療法の人が大好き)と免疫(免疫力をアップも民間療法の人が好き)が密接に関連していることによって、免疫系等の問題で生じている潰瘍性大腸炎やクローン病の治療のヒントが潜んでいることです。となると既に盲腸の手術(正確には虫垂切除術)を受けた人が、虫垂を取ったことにより免疫系等の病気になってしまったとう事態も生じる可能性があります。

実際のところ、虫垂炎で開腹手術をすることは今では稀になっていて抗菌剤の投与で対応することが可能です(もちろん例外は多数あります)けど、昔のように「ついでに取っておきました」的な対応をしていると将来大訴訟問題に発展する可能性があるかもしれません。

とにかく、手術を受ける場合はしっかりインフォームド・コンセントを行いましょうね。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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