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健康食品の機能のエビデンスを証明することは多分,不可能⁉

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先日もブログに書きましたが、「いわゆる健康食品」に分類されている、なんか効果があるかもしれない食品(行政はかならず「いわゆる」を付けトクホでもなく、栄養機能食品でもなく、現時点で当方は関知していないことを強調します)の健康面に対する影響(決して効果がではありません)を表示して、正しい情報を消費者に伝える仕組みを作ろうという動きが内閣府を中心としてあります。

健康食品に基準を作ろうとする動きがありますけど⋯

食品の新たな機能性表示制度に関する検討会_-_消費者庁

消費者庁

でもよくよく考えてみるとそれってかなり変な理屈に思えてしまいます。まず、どのようにして健康面への影響を調べるんでしょうか?非常に理屈っぽい話になりますので、理屈ぽいのがお嫌いな方はこれ以下の文章をお読みになることはご遠慮ください 笑

もともと健康な人をどうやって効果があったと比較するんだろう?

医療現場では薬の効果を調べるために「ランダム化比較試験」という手法を使用します。

ランダム化とは治療グループと実際には治療しないグループをバイアスをかけないで分類する
ことであり、無作為に二つのグループに別ける必要があります。あるグループに偏りができないようにすることが重要です。

比較試験とは一方のグループには実薬をもう片方のグループには偽薬を服用させる
というような、実際に治療する群としない群に別けるて比較対照する方法です。

さらに厳密に試験を行うためにはダブルブラインド(二重盲検)という方法が取られ、処方する側(通常は医師)でさえも、どれが実薬であるか、偽薬であるかを判らなくさせて、服用する側に憶測をもたれないようにします。でも、健康食品を対象としてこのテストを行なうと不都合な事実がでてくる恐れがあります。

そもそも健康食品は健康な人が「体にいいんじゃない」的に食べるものですから、研究に協力してくれる人は「健康」でなくてはなりません。万が一、がんの患者さんにある人にはいわゆる健康食品を食べてもらい、もう片方のひとには全く健康に影響を与えないものを食べてもらう必要が生じて来ます。

ガンと診断されている人に対して「無治療」と判っているものを摂取し続けて貰わないと結果はでません。これは倫理上許されないのではないでしょうか?ガンは極端なら「お肌がプルプルになるコラーゲン」の場合を考えてみます。例えば無作為に二つのグループに別けるのさえ、困難な作業になってしまいます、というのも喫煙は肌に影響を与えますので、喫煙習慣がある人は参加しないようにしたとしても、普段使用している化粧品に肌になにかの影響を与えるものが含まれていないかを調べないとなりません。

それを避けるためには二つのグループの日常生活が調査結果に影響を及ぼさないためにはスッピンで過ごしてもらう事が必要になってくることが予想されます。じゃないと、結果に差が出た場合、「化粧品の影響があるんじゃないの」という疑問が出てくる事は間違いありません。

もしも、効果のエビデンスがあったらそれは医薬品になるんじゃないの?

例えば膝の関節に良い影響(現在のルールとしては効果があると言った時点で違法になりますので)があるとされる、グルコサミンのランダム試験を行なったとします。

対象は膝に痛みを感じる人と限定して、あるグループにはグルコサミンを、もう一方のグループには偽薬(偽健康食品?)を食べてもらいます。この場合、ガンなどと違って一方のグループが無治療になってしまっても(治療という言葉自体既に違法ですけど)、倫理的には許される範囲だと考えます。そしてダブルブラインドで処方する側も処方を受ける側も実薬か偽薬か(薬じゃないけど)わからないように健康食品を処方して、それを摂取します。

データがそろってからキーオープンという儀式が行なわれます。キーオープンによって初めてどの人に実薬が渡され、どの人が偽薬だったかを判明するのです、薬の場合は製薬会社の治験担当者さえも前もってはどちらがどちらか知る事さえできない厳重に状況下でダブルブラインドのランダム化試験は行なわれます。

もしも、結果としてグルコサミンを食べていたグループが統計学的に有意に膝の痛みが軽快していたらグルコサミンは「膝の痛みに効果がある」というお墨付きになるのです、つまり治療効果があったということは⋯あれっ、効果があったらそれって「薬」に分類されるんじゃないですか、厚生労働省さま❗

多分、大手健康食品メーカーの陰謀があるかも

トクホ・栄養機能食品・いわゆる健康食品を分類して、監視指導しているのは消費者庁です。薬を承認しているのは厚生労働省です。以前は「トクホ」は厚生労働省の管轄でしたが、ある時点で消費者庁に権限が移行したことは以前ブログでお伝えしました

もともと食品の一部として考えられているサプリなどの機能は健康の維持と健康増進の為に役立つという解釈ですから、もともと健康である人に対してランダム化試験をしても差が出るわけがありませんし、明らかな差がでたらそれは薬効であり、食品の範疇を越えて消費者庁ではなく、厚生労働省の元で薬としての更なる治験を行なう必要がでてきます。

薬品類の治験には少なくとも数十億の費用が必要となりますので、中小企業が主体である健康食品メーカーがその負担に耐えられるワケがありません。日本の既存の製薬メーカーでさえ治験に失敗したら厳しい財政状況に追い込まれますので、新薬の開発は企業の死活問題になっていて、世界的な巨大製薬会社でないと新薬は開発できないのが現状です。

もしも、いわゆる健康食品(かならずいわゆるを付けることが必要)の機能性表示が可能となった場合、うるさ型の医療関係者は「エビデンスを示せ」と主張するでしょう。

長々と説明したようにエビデンスを証明することはいわゆる健康食品類という括りでは難しいことになりますので、日本の健康食品メーカーは大手中心になることが必至だと思われます。

私は消費者庁が管轄することになる健康に好影響を及ぼすとされる食品類は有害事象の報告をデータベース化することと誇大広告を取り締まることに集中するだけで、国民の健康は維持でき、健康増進に役立つ考えますがいかがでしょうか?野菜嫌いの私としては、食事のたびに「トマトは健康にいいから食べなさい」「ブロッコリーは健康にいいから食べなさいって」言われたら、泣いてしまいます。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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