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げっ、デトックスの一つ「キレート治療」の心臓病への評価が上がった❗

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キレートレモンって飲み物の宣伝を見て「あっ、キレイになるとキレート治療を組み合わせただ❗」と感じた方はエイジングケアリテラシーの高い方なんですね。

心臓の血管が詰まってしまう心筋梗塞や狭心症の治療や予防、そして全身のデトックス治療としてキレーション療法やキレート治療という言葉が使われています。キレーションが一瞬注目を集めた10数年前新し物好きの私は当然キレート剤を米国から取り寄せていざ自分で試そうと思って手が止まりました。成分はEDTA(エチレンジアミン四酢酸)って血液検査の時に血液が固まらないように真空採血管(スピッツ)に含まれている成分であり、工場とかでパイプなどにくっ付いたしたカルシウム、マグネシウムを洗浄するのに使用されているんです。「俺の血管はパイプじゃないぜ」とキレート剤はそのまま冷蔵庫に放置しました。

キレート治療、いわゆるキレーションの評価が米国のガイドラインで評価された??

このキレート剤を使って虚血性の心疾患への治療が米国を中心に行なわれています。基本的に心臓病専門の医師は「キレーションなんてインチキ」的な評価をしています。しかし、心臓の病気になった場合、日本では考えられないほど高額な医療費を請求される米国では、高額医療費が払えない低所得者を中心に行なわれています。それに目を付けたエイジングケア系の医師がデトックスの一環として日本に持ち込んだのです。

この「デトックス」という言葉がかなり怪しげで、インチキ臭い商法に多用されている為に非常にマイナスイメージが強かったのですが⋯なんと米国でも効果に疑問視されてた「キレート治療」がアメリカの心臓病学会などのガイドライン見直しの時に「有効性は不確実だけど評価を上げよう」という不思議なポジションに置かれてしまいました(JACCより)。

TACT chelate stable_ischemic_heart_disease_guidelines_2014_-_Google_検索

どうもこの論文がキレート治療が格上げされた根拠となっているようです(JAMA 2013; 309: 1241-1250)。

そもそもキレート剤って⋯

毒ガスが戦争に使用され大量殺戮兵器と呼ばれたのが第一次世界大戦。その毒ガスを吸入した兵士の治療の為に「解毒剤」として使われたのが「キレート剤」です。現在も鉛中毒や鉄過剰症の治療として使われます。でも、いわゆる体に重金属が溜まって自閉症や心臓血管病になるから、キレーションしましょうっていうのはかなり疑問点がある、という解釈がコモンセンスです。その疑問点だらけのキレート剤を使用した解毒治療が虚血性心疾患に効果があるかもしんない的な評価を受けたのですから驚きです。

匠洗科のスタッフブログ__【教えて成分】キレート剤はどんな効果があるの?

匠洗科のスタッフブログ(http://stufftakumisenka.blog136.fc2.com/blog-entry-142.html
 

これは車の洗浄に使用されているものです。

こんなの点滴で体に注入するのって、やっぱり嫌です。

デトックスが振りまく怪しさ⋯でも女性は興味津々です

当院のスタッフ(ほとんどが女性)もよくデトックスを話題にしています。その話題を聞きつけてツッコミをいれると嫌われることは火を見るより明かですから、常に大人の対応を心がけている私です。

不健康な生活で溜まった毒素をデトックスで解毒・排出しましょう、って感じの民間療法が目につきます。これはハッキリ言って効果を期待することはプラセボ効果以上のものは無理です。しかし、デトックスという言葉が一般化されているために、デトックス=体に良い というイメージを拭い去る為には複数のデトックス法を取り上げ一つ一つ個別にその効果を疫学的データを収集して検討しなければなりません。「デトックス」でググると280万件以上ひっかりますんで。

中には腸内洗浄や汗を強制的に排出させることさえも「デトックス」と呼んでいますし、本屋さんには「デトックスレシピ」と明記した本が並んでいますし、商店街を散策しても中には「デトックス効果❗」なんて表示している野菜を販売している八百屋さんまで。まあ、皆さん現在の食生活や生活環境にかなり不満というか自信がないようなので、その点を上手くついた「デトックス商法」は増えることはあっても減ることはないかもです。

キレート治療を受ける場合はあくまで自己責任でお願いしますね!

今回の米国のstable ischemic heart disease 安定している虚血性心疾患へのガイドラインで、キレート剤を使用したキレーションは2012年のガイドラインでは「ベネフィットなし,エビデンスレベルC」だったのが、「クラスⅡb,エビデンスレベルB」に昇格しています。2014年のガイドラインの元となった論文ではキレート療法グループにおいて脱落率が高かったし、そもそもキレート剤の人体に対する効果自体の裏付けがとれていないことにご注意ください。この治療法を行なって死亡した人も米国ではいますので、ガイドラインを作成した人たちも有用性をあまり認めたくなかったようなコメントがありました。

In stable patients with a history of MI, the use of an intravenous chelation regimen with disodium EDTA, compared with placebo, modestly reduced the risk of a composite of adverse cardiovascular outcomes,many of which were revascularization procedures. These results provide evidence to guide further research but are not sufficient to support the routine use of chelation therapy for treatment of patients who have had an MI.

JAMA.2013;309 (12) :1241-1250.doi:10.1001/jama.2013.2107

と前述論文には書いてあります。

「キレート治療は日常の治療での使用をサポートしていない」ってことです。

アメリカの治療に対するガイドラインって基本的にトンでもない特殊な治療を排除しようという思惑もあります。一方で高額な治療費を負担する民間の保険会社にとって効果がハッキリしない高額な治療は保険の支払いの対象にならないものを選別する材料にもなっています。キレート剤を使用した虚血性心疾患への治療は安上がりである面によってガイドラインで「有効性は不確実だけど、ランクは上げとこう」という判断をなされたとしたらチョッと怖いです。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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