ボトックス治療失敗⋯原因は3つに絞られる❗

スキンケア

ボトックス治療失敗の3つの原因

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ボトックスというシワを改善する治療方法が日本で行われだしたのが10数年前、一般的にシワを伸ばすと認知されだして女性ファッション誌などで取り上げられだして10年くらい経過しています。

以前は医師が直接海外からボトックスを輸入して、それを患者さんに使用する形を取っていました。ここ数年ボトックスのシワ以外の症状、例えば眼瞼痙攣、片側顔面痙攣、痙性斜頸、上下肢痙縮に対して保険治療が適用され、さらに自由診療としての使用しか認められてはいませんけど、厚生労働省がシワの治療に使用することを承認したため、爆発的に使用されだしたために、今までは考えられなかったような「ボトックスの失敗例」の話を聞くようになりました。

ボトックスで失敗した原因を追究してみると⋯

ボトックスはボツリヌス菌由来成分で作られる薬の商品名であり、ボトックスと同様の効果を発揮する薬は各国で製造されており、某中国産以外はボトックスという固有名詞の薬品同様の効果、あるいはボトックス以上の効果がある信頼度の高い医薬品として複数の製品名のものが保険治療の効かない美容医療では幅広く使用されています。

ボトックス系の薬の使用は痙縮に使用している整形系の医師よりダントツに美容系の医師の経験値の方が高いと言い切って良いです。

ボトックスの失敗とその責任の所在は?

このボトックスの失敗は大きく分けると以下の3つにわけることができます。

  1. ボトックスの使用量を間違ってしまった⋯医師側の責任
  2. ボトックスの保管方法を間違ってしまった⋯医師側の責任、販売会社の責任
  3. ボトックス治療を担当した医師が未熟⋯問題外❗論外❗

このように、それぞれ責任の所在もある程度推定できます。

今回は当然の結果を招く3を除いた原因の1と2について、医師側と販売会社の責任について考えてみます。

ボトックスの使用量を間違った失敗

各社のボツリヌス菌由来の医薬品は1単位、2単位といった数え方をして治療部位に対する適切な使用量を決定しています。効果が出にくい場所には多めに使用しますが、この使用量を間違ってしまうと患者さんへ大きな苦痛を与えてしまう結果になってしまいます。ボトックス使用量の間違いによる失敗は顔の筋肉を能面のように動かせなくなるというかなり不自然な表情になり、美容医療の経験値が高い医師だと「この人、ボトックス入れすぎだね」とテレビを見ながら、「こんな下手くそなボトックス治療どこでやったんだ?」って会話をすることがあります。

日本の芸能人・政治家だと、問題がありますので⋯某国副大統領の場合、ボトックスあるいはボトックスと同様の効果を表す注射薬の入れすぎが予想されます。

ボトックス治療を受けている可能性のあるバイデン大統領

この程度のボトックスの入れすぎによる失敗の場合は、おデコに全くシワがよらない症状でも患者さんとしては、失敗とは思わないで「ツルツルとしたハリのあるおでこ」が実現したと喜ばれる場合もあります。

しかし、おでこだけではなく目尻のシワにもボトックスは効果がありますし、眼輪筋という目を閉じる動作を行っている筋肉の緊張を緩めると目が大きくなったようにすることも可能なんで目の周りに入れすぎてしまうと「目が閉じることができない❗」という悲惨な結果を招いてしまいます。おでこと目の周囲のシワを気にしてボトックス治療を行った場合は能面のように表情がなくなってしまう、というかなり不自然な表情にボトックスの持続期間である半年近くを苦しまなければなりません。

最近、見かけるボトックスの使用量の間違いによる「能面顏」はボトックスが保険対象外だがシワの治療に効果があるということを宣伝しようとした、ボトックスビスタの販売会社であるアラガン・ジャパンが使用した「般若顏」というあまりにもデリカシーのない表現 (関連エントリー 外資系製薬会社のあまりにも酷い「表情シワ治療」の広告宣伝手法 (怒)般若顔だって❗)に対する戒めではないでしょうか?

初めてボトックス治療を行う医師に対して講習会を受講することを義務化したのに、なぜこのような失敗が起こってしまうのか(当院は他院であきらかにボトックスの過剰使用量による失敗症例を多数経験しています)、かなり不思議に思っています。ボトックスは冷凍状態で瓶に入って販売会社からクリニックに届き、それを必要に応じて生理食塩水で溶きながら使用するので、溶かす量というか倍率を間違えたか?あるいは単に効果がはっきりでるように多量に注入してしまったことが予想されます。

わざわざ講習会を行っているのに最近かなり増えているボトックスの過剰使用による失敗症例はチェーンクリニック系と今まではあまり自由診療を行ってきていない一般皮膚科で治療した患者さんに多く見られるので、販売会社であるアラガン・ジャパンはもう少し経験値の高い医師によって講習会を行うようにしていただきたいです。

ボトックスの保管方法の間違いによる失敗

ボトックスはボトックスであろうと、ボトックスビスタであろうと冷凍保存が必要です。しかし、販売会社から届いたもの(多く宅急便会社が届けてくる)をクリニックの職員が冷蔵保存であることを知らないと、一般薬と同様に常温、あるいは冷蔵庫保管するとボトックス自体の力価を失効してしまいます。

ボトックス自体が高価な医薬品ですので、院長や医師に怒られることを恐れたスタッフが「やっべー、部屋に出しっぱなしだった❗」と焦りまくって急遽冷蔵庫にいれて再冷凍しちゃった、なんてこともあるかもしれません。

このように効力が無くなったボトックスを使用しても当然、期待する治療効果はありませんので、ボトックス治療をしても効果が現れなかった❗という治療費をドブに捨てた感じになってしまう失敗を主訴として当院を訪れる患者さんが最近になって急増してきています。このようなボトックスの失敗は商品管理はしっかりしている(失うお金を少なくしよう常に企業努力を行っている)チェーンクリニックでは少なく、最近になってボトックス治療始めました的な経験値の少ない医療機関で治療をした患者さんに多く見られる傾向がありますので、保存状態の問題が原因と考えて間違いありません。

一方、経験の長い美容系医師の間で「以前、海外から並行輸入していたボトックスより、アラガン・ジャパンが取り扱いだしたボトックスビスタってなんだか効果が弱くね〜??」って言われています。これが販売会社が配達する会社に配達するときの注意を厳重に行っていないか、あるいは販売会社の冷蔵保存状態が悪い可能性があります。後者の場合はかなり考えにくいんですが、実際に「ボトックスビスタって効き弱くね〜??」って会話って最近特に経験値の高い医師間(実は美容系の医師って他のクリニックの医師とも同じ医局で修行した経験がある場合はかなり仲良しです)で多く交わされていることは間違いありません。

もともとボツリヌス菌に抗体を持っている患者さんが千人に一人くらいの確率で存在しますので、そのような方はボトックスを何回も、あるいはクリニックを変えて治療しても効果が現れません。「他の医療機関でボトックス治療を行ったんだけど、効果が全くでない」と言って来院する方に当院で治療を行うとキッチリと効果がでることを考えると、ボトックスが効かないという失敗は保管方法に原因があるとしか思えません。

ボトックス(並行輸入)、保険治療対象のボトックス、保険対象外のボトックスビスタ、これらの違いは?

固有名詞であるボトックスも三つに分けらます。海外から医師が直接買い付ける(全ての責任は輸入した医師にある)ボトックスが長く使用されてきました。ボトックスの使用方法に広がりがでて、脳梗塞の後遺症である痙縮にも治療効果があるために厚生労働省が使用を保険対象としたものが「ボトックス」であり販売会社はグラクソというところです。

一方で厚労省が健康保険の対象外だけど自由診療で使用する事を承認したのが、「ボトックス」に「ビスタ」という名前をプラスした「ボトックスビスタ」、これはアラガン・ジャパンって会社の取り扱いなのですが、この両者の成分に全く違いはありません。このアラガン・ジャパンって会社は「ビスタ」というのを製品名につけるのが好みのようで、まつげ美容液も「グラッシュビスタ」って名前で販売しています。このまつげ美容液は副作用があるのですけど、あまり販売会社は気にしていない様子が伺えます(関連エントリー)。

ボトックス、ボトックスビスタは単に瓶に入っている量が違っているだけなんです。グラクソのものが100単位、アガン・ジャパンのものがその半分の50単位となっています。

ボトックスとボトックスビスタの違い

左がグラクソのボトックスで100単位、右がアラガン・ジャパンのボトックスで50単位の違いがあります。

なんで50単位と100単位の違いが出ているのか、販売会社に尋ねても「さあ、わかりません」という頼りのない回答しか得られないんです。さらに今まで並行輸入で使用してきた「ボトックス」と「ボトックスビスタ」に違いがあるのでしょうか?実はボトックスとボトックスビスタは全く同じ成分です。なんで名前を変えたのな不思議って言えばかなり不思議です。ヘビーユーザーである当院でわかっていることは並行輸入していた「ボトックス」より、日本で販売されているアラガン・ジャパン取り扱いの「ボトックスビスタ」の方が全く同じ成分であるのに非常に値段が高くなっている、ということだけです。

さらに不思議なことに海外から並行輸入しようと思っても海外の医療業者が「今、ボトックス品薄で日本に回せないよ」との返事が常態化しています。日頃、海外の製薬メーカーが悪い陰謀を計画していると思い込んでいる人を「そんな話あるわけないじゃん」的に批判してきた私ですが

当院ではこのようにボトックスを行っています⋯五本木クリニックのボトックス治療

⋯あと他院でボトックス打ったら効きすぎて修正したいというボトックスの修正治療もニーズが高いです。

桑満おさむ(医師)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ(医師)への相談窓口

0120-70-5929

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