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「ほうれい線」を消すことは整形なんだろうか?美容整形って言葉の不思議。

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美容外科、美容皮膚科でシワを消したり、シミを消すことを「整形した」「美容整形した」と呼ぶ人が未だにいます。特にちょっと可愛くなった芸能人を見つけると「整形疑惑」的な記事がネット上にあふれ出ます(関連エントリー 亀田三兄弟の妹・亀田姫月が整形した、という噂を検証しました)。

ほうれい線を消す治療を「整形」って呼ぶことへの抵抗感

実は医学用語で「美容整形」って言葉は存在しません。

医療機関の治療する科目を標榜するには細かい規定が以前は厚生労働省の指導でありました。

「美容整形」という標榜科目はなく、正式には「美容外科」として現在は認められています(以前は美容外科という科目さえも標榜科目ではありませんでした)。切らない美容治療を主に行っているのが「美容皮膚科」であり、この標榜も以前は認められていませんでした。

そもそも整形外科という科目は骨・筋肉の痛みや障害を取り除くことを専門としていたので、「美容整形なんて軟弱な科目と一緒にしないでくれ❗」という感覚があり「美容+整形」という呼び方を嫌う傾向があります。整形外科の一分野とされた形成外科ですが、形成外科の一分野として1998年に東京大学が国立大学として初めて「美容外科」を標榜しました(東京大学医学部附属病院 形成外科・美容外科東大病院HPへより)。

となると美容整形って用語自体がお役所公認ではないわけで、シワの一つであるほうれい線を治療することを「美容整形でほうれい線を無くした」って言い方はあまり正確な言い方にはならないと言えます。

美容整形という医療の科目はなく美容外科あるいは美容皮膚科が正しい用語

「美容整形」という名前は一般の方が使用する慣用語であり(厚生労働省が美に対する国民のニーズを捉えきれなかった為)、学術的には切る治療は「美容外科」、切らない治療が「美容皮膚科」が正しい呼び方です。

しかし、話は簡単ではありません。切らない治療によってほうれい線やシワは改善できますので、「美容皮膚科」であっても治療が可能となっています。となると美容外科、美容皮膚科で治療できる症状にしっかりとした区別をつけることが難しい状況に陥っています。さらに厳密に言えば黒子などは皮膚科でも手術しますので、「皮膚科」は外科系に属し、さらに混乱を招きます。

もしも歯並びを矯正したら整形した、っていうんでしょうか?

最近の若い芸能人の歯並びってかなり綺麗ですし、白く輝く歯をお持ちの方を多く見受けます。芸能人のデビュー前の写真を探し出し、「八重歯が無くなった」とか「歯並びがこんなに綺麗になって」なんてことが話題になっています。この場合もなぜか「整形疑惑、誰々の歯が⋯」的な記事になっています。ちなみに「歯を整形した芸能人」ってキーワードでGoogle検索すると、画像の結果はこんな具合です。

歯を整形した芸能人_-_Google_検索

歯並びが悪いと噛み合わせが原因で肩こりや頭痛が起きることが知られていますし、歯磨きが上手くいかないために虫歯の原因にもなってしまいます。あまりにも歯並びが悪いと正しい発声が出来ないため、言葉が聞き取りにくい、という事態も生じてしまいます。

私が子供のころ歯を矯正している人ってかなり珍しかったんですけど、最近は米国並みに歯並びを気にする親が増えたために、歯を矯正している子供って普通に見かけますよね。

歯医者さんによれば、顎の成長に準じて矯正をする時期を選択するのがベストだそうで、小学校から高校・大学にかけて何段階かに分けて治療するものだそうです。中学生でデビューした芸能時の場合、たまたま売れ出した時期が歯の矯正の最終仕上げの時期と重なっていたら、当然「デビュー前に比べて歯並びが綺麗に」なるに決まっています。

ワイヤーを使用した誰が見ても歯を矯正している治療装具以外に目立たないで矯正する方法や、夜間だけ使用して歯を矯正することもできるそうなので、歯並びが綺麗になっただけで「整形疑惑」は過剰反応なのでは、と考えます。

一気に白い歯に変えてしまう方法もあります。インプラントというセラミックなどを利用した義歯をもともとある歯を抜いてしまって、これを歯の根元に埋め込む方法です。これは美容整形の考え方から言えば、歯茎を切って縫って血が出る治療ですから「美容歯科」あるいは「口腔外科」の分野に入るのでしょうけど、「美容整形」って呼ぶのが果たして適切なんでしょうか?

総入れ歯や部分入れ歯が不自由なためにインプラントにするお年寄りも多いので、

うちのおばあちゃん、こんど歯医者さんで美容整形を受けてインプラントにしたの❗

って普通は言わないですよね。

つまり、美容整形って言葉は限りなく怪しげなムードを醸し出し、積極的にほうれい線などのシワやたるみ、シミなどを治療する人に対して否定的な気持ちを込めた場合に使用される慣用語って位置付けと考えます。

ほうれい線を消す、という治療を美容外科で行った場合

ほうれい線を消す治療をする場合、切って治すということを前提とした場合は美容外科医は「フェイスリフト」と呼ばれるコメカミ周辺から耳にかけて余った皮膚を切り取って、たるんだ皮膚を一気に引き上げる治療を行います。かなり繊細な、そして数時間を要する美容外科の花形治療なんですけど、これを得意とする美容外科医が少なくなっているのが現状です(詳細はこちらを フェイスラインをしっかりと治療

世界的に見て、日本人は切る美容治療自体を敬遠すると評価されていますし、術後に包帯をまく(実際はフェイスリフトの手術で包帯をぐるぐる巻きにすることはありませんけど)イメージの治療を避けますので、美容外科での治療を避ける傾向があります。

一方で間違いなく美容先進国である米国の美容外科医は効果を出す治療の為には「no pain,no gain」という言葉を格言として日本の美容外科医の指導するのです。つまり、痛みを伴わない治療では多くの利益を得ることはできない、という意味です。

日本人でフェイスリフトの切る治療を積極的に受けたのは、以前は芸能人が多かったのは間違いありません(守秘義務、守秘義務❗)、だれそれがフェイスリフト治療を行ったということはここでは言及しません。今では結構若手の芸能人もフェイスリフト手術をおこなっていますけど(守秘義務、守秘義務❗)、極端にひきつれたような表情になってしまったいたらバレバレですから、30歳代で一回、40歳代後半になって追加、60歳に差し掛かって最終仕上げ、って感じで歯の矯正のように必要に応じて、適宜行っている賢い方が増えています。

顔自体がマネーメーカーである芸能人ですから、ここまで徹底した、ある意味割り切った考え方ができるんでしょう。一般の方はやはり切る治療法には抵抗感があるのは当然と思われます。そこで登場するのが「切らないフェイスリフト」「切らないでほうれい線を消す」治療⋯美容皮膚科の登場です。

ほうれい線を消す、という治療を美容皮膚科で行った場合

ある種のレーザーをほうれい線の原因となっているたるんだ皮膚に照射することによって、人工的にダメージを与えて創傷治癒過程を利用して肌を蘇らせる、って治療方法があります。レーザーでほうれい線を消す、なんて表現を使っている治療方法です。また、PRPという自分の血液を加工して、傷を治す力のある血小板や成長因子を濃縮して、それを注射でほうれい線部分に注入して、弾力のある肌を蘇らせてシワやたるみを改善する、って方法もあります。

もっとも知られているほうれい線を消す治療方法として、ヒアルロン酸の注入があります(関連エントリー ヒアルロン酸の効果と副作用を詳しく知ってからご使用ください、失敗しないために!)。細い針を使って、人体のもともとある成分であるヒアルロン酸をほうれい線に直接注入する方法です。

最近、費用対効果で注目されている治療方法が糸を使って頬の部分のたるんだ皮膚をつり上げる「切らないで糸をつかったフェイスリフト」治療がありますが、残念なこととにこんな簡単な治療で失敗して、集団提訴された美容クリニックがでてしまっています。

ここに列記した切らない治療方法は針穴から若干の血がでることがあるかもしれませんけど、切る治療方法ではないので、「美容外科」ではなく「美容皮膚科」の範疇になります。

美容外科的・美容皮膚科のどちらにしても、ほうれい線を消したくらいで、「ほうれい線を整形した」って表現は限りなく、実情を反映していない言葉の使い方、って気がしてたまりません。

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著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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