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遺伝子検査サービスは予防医学というよりは、単なるビジネスなんだよね⁉

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最近、ネット上で自宅で簡単に遺伝子検査を❗って感じの広告を見かけませんか?遺伝子検査サービスとも呼ばれています。

遺伝子検査って言っても全ての病気の原因ではありませんよ❗

アンジェリーナ・ジョリーがBRCA遺伝子の変異を元に両側の乳房切除術を受けた話に対して賛否両論があったことが記憶に新しいのではないでしょうか?乳がんは家族性の遺伝があるために、遺伝子が強く乳がんの発症と関連しているので予防医学として手術をすることを強く否定することはできません。

しかし、最近見かける自宅で簡単に遺伝子検査サービスを受けて、遺伝子配列をもとに将来発生するであろう病気を予測(あくまで予測です❗)することは果たして病気の予防につながるのか?という疑問が起きてきます。

なぜなら、BRCA遺伝子のように明らかに病気(この場合はがん)を引き起こしていることがわかっている遺伝子ってほんのわずかなのです。

通販遺伝子検査的な方法で「あなたはこのような病気になるリスクは何パーセントです」って言われても果たしてその検査結果を普通の人が十分に理解できるとは思えません。

右肩上がりの遺伝子検査受託市場

https://www.seedplanning.co.jp/press/2012/2012113001.html

遺伝子検査ビジネスはこんな感じで将来有望な市場のようで⋯。

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280項目近くの遺伝子を調べたところで⋯オッズ比って理解していますか?

遺伝子ビジネス的な通販遺伝子検査(こんな言葉があるのかは不明)は自宅で唾液や口腔粘膜を採取して、遺伝子検査会社に送付するとその結果がネット上で確認できる、という非常に便利な方法です。以前からこのような遺伝子検査方法はありましたが、海外の検査機関に採取した検体を送付して、検査結果を待つ、というシステムでかなり高額な検査でした。

遺伝子検査を行う医療機器の普及にともなって検査費用も安くなり今では数万円で検査を受けることができます。自分の遺伝子を知ることは、別に悪いことではないのですけど、検査上こんな結果がかえってきたらどうしますか?

あなたの遺伝子検査の結果、将来糖尿病になるリスクは平均の0.76倍です

このリスクを調べる方法は遺伝子を解析して、特定の遺伝子と生活習慣病やガンなどとの関連(あくまで関連であり、原因と結果ではありません)を調べた論文をもとに算出しています。このようなデータ処理にはオッズ比と呼ばれる数値が使われますけど、オッズ比ってなにか知っている人はかなり少ないのではないでしょうか?

ギャンブル、とくに競馬ではオッズという掛け金に対する払い戻し金が使われていますよね。でも、本当のオッズ比を知って競馬を行っている人、繁華街の場外馬券売り場周辺に生息しているオッサンからは予想するにかなり低い確率になると思います。高校で習う確率で数学を放棄した人はもちろん、簡単な統計学を学んだ人でも理解しがたいのがオッズ比です。

病気のリスクをオッズ比で伝えられても、あなたが掛けたルーレットの数字が当たる確率は0・76です、と言われているのと同じことになります。

ズルいぞ、遺伝子検査サービス会社さま

病気の診断を許されているのは医師免許所有者に限られます。検査技師さん、看護士さんを含め医師以外が病名を判断⋯つまり診断することは例外なく禁じられています。

大々的にネット上で広告をしている遺伝子検査サービス会社はその辺りを十分にご存知のようで、アンジェリーナ・ジョリーが受けた遺伝子検査であるBRCAは除外されています。そのほかにも明らかに特定の遺伝子が発症の原因と強く考えられている遺伝子は対象項目から外れています。これは多分、疾患の原因遺伝子を検査対象にしてしまうと、病気を診断した、という解釈がなりたつためにあえて除外したとかなりの確率で予想できます(オッズ比1.0 笑)。

遺伝子検査は単に遺伝子を調べるだけではなく、一定の配列の遺伝子がある病気と関連している可能性が高い、ということしか現在のほとんどの病気については判明していません。つまり遺伝子配列を調べることは、遺伝子配列と病気の発症リスクが平均化されたデータと比較してどれだけ発症しにくいか、発症しやすいか、と数値化しているだけで、リスクが低いからといって特定の病気にならない、ということは言えないのです。こんな感じで検査結果がでて理解できますか?

遺伝子検査の結果

https://mycode.jp/plans/sample-report.html

遺伝子検査サービス会社の結果は会社によって違いがある

明確に遺伝子配列や遺伝子の変異が特定の病気の原因になっている場合はかなり限られています。さらに各社が遺伝子によって将来病気になる、と判断(診断ではありません)している根拠となっている論文も会社ごとに違っています。

ということは、一定の基準のもとにリスクを計算しているわけではないのです。遺伝子検査会社のもとのなっている論文はもちろん一流の研究者によって発表されたものですから、信頼度はかなり高いのですが、それらの論文はまだまだ研究レベルであって、特定の遺伝子を調べることによって病気の発症を予想するには十分なデータが蓄積されているとは言い難い状況です。

さらにある遺伝子が特定の病気と強いつながりがあったとしても、生活習慣を変えるだけでその病気の発症が抑えられることが明らかになっている病気は極々限られています。つまり、遺伝子でリスクがわかって生活習慣を変えても病気を発症を防ぐことが可能なのかははっきりしてない、っていうことになります。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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