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花粉症にもインフルエンザにも効果がある「葛根湯(かっこんとう)」⋯エビデンスはあるの??

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暖冬のためか、東京周辺では2月になってインフルエンザが流行しました。それに伴い一般の風邪の患者さんも増えています。一般的な医療機関が休みである土日に風邪をひいたとき市販薬を服用する方も多いと思います。

しかし、風邪薬って眠くなるイメージがあるためか、おばあちゃんの知恵的な漢方薬「葛根湯」の愛用者ってこんなにいるんだあ、と思うほど多いのです。

市販の漢方薬といえば「葛根湯」⋯本当に効果あるの?

漢方薬って副作用がないのよね〜とおっしゃる方もいますが漢方薬でもしっかりと副作用はありますので、ご注意ください。漢方薬の代表選手である「葛根湯」、これって本当に風邪などの病気に効果があり、花粉症さえ効果があるのか考えていきます。

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この葛根湯には「鼻かぜ」と書かれていますが、「花粉症」とは書かれていませんね。「副作用救済制度」とは書かれていますけど(笑)。

とりあえず効果がありそうなんで、この成分も入れちゃえ⋯これが漢方薬です

病気に対して効果のある成分を抽出するか、合成するか(これを化学物質と思って拒否る方いますけどw)することによって作られのが西洋薬⋯普通に「薬」と呼ぶものですよね。

これに対して植物等の自然のものを混ぜ合わせるか、煎じて服用するものを「漢方薬」と呼んでいるはずです。

でも、漢方薬って「漢」つまり中国から伝わった薬の調合を日本風にアレンジした日本独自の伝統医学なんで、ほとんどが化学的に抽出されたエキス上のものです。最近中国の方が受診する機会が増えていますが、漢方薬を処方するとかなり嫌な顔をされます。特に上海などの大都会から日本に来ている方は「漢方なんて田舎の人の民間療法」と断言する人もいるくらいですから。

保険診療で漢方薬を処方することはできますが、一般薬のような臨床試験を受けないでなぜか保険薬として保険収載されている不思議なことについては今回は深く追求しません(漢方薬は非常に高度の政治的判断によって、ある時期に突然保険適用になったのです)。

漢方薬は副作用が無いと思っていませんか?高齢者ほど危険な漢方薬の副作用。

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人工のものは身体に悪く、自然界に存在するものは身体に優しいという一見もっともらしい考えですが大間違いです。対処方法なしの猛毒の存在は?天然由来のウイルスは?とちょっと考えればおかしいことは分かるはずです。同様に漢方薬には副作用がなくて身体にやさしいという謎のイメージがあるのですが漢方薬にも当然副作用はあります。

漢方薬というか中国の医学(中医)に使用されていた薬は経験上、これを煎じて飲めばこんな症状取れるんだよね〜、って感じの歴史の積み重ねから作られています。一般の西洋薬のようにバシッと効果がないと、これもプラスしちゃおう的な発想でどんどん原料の種類が増えちゃった⋯これが漢方薬の正体です。

例えば花粉症にもインフルエンザにも効果がある?と囁かれている「葛根湯」。これって葛根 (カッコン) ・麻黄 (マオウ) ・桂皮 (ケイヒ) ・芍薬 (シャクヤク) ・甘草 (カンゾウ) ・大棗(タイソウ)・生姜 (ショウキョウ) と7種類もの植物由来の原料が入っています。多分、インフルエンザにも、花粉症にも全く意味のない成分も含まれているような気がしないでもないですけどね(笑)。

これだけ多数の成分が入っているんで、もちろん副作用はあります。強烈な副作用としては肝機能障害のほか異常な発汗・不眠・イライラ感があります⋯これってなんだか変な薬で先日逮捕された元野球選手の症状ですね。そりゃそうです、葛根湯に含まれる「麻黄」って覚せい剤の原料である「メタンフェタミン」にそっくりな「エフェドリン」が薬効を表す本体ですからね。西洋薬大っ嫌い、なんでもかんでも自然派の方はそのあたりはどのように解釈しているのでしょうか?

葛根湯がインフルエンザや風邪に効果があるワケ、花粉症にも効果があるワケは⋯

これって効果あるんじゃない的にプラスの発想で進化してきた漢方薬ですが、葛根湯が花粉症に効果がある理由って、どの成分が効いているのでしょう?インフルエンザや風邪などの発熱性の病気の場合、「桂枝(けいし」)が発汗作用があるためと、「葛根(かっこん)」の鎮痛作用の効果と考えられます。

花粉症にも葛根湯が効果がある、との説明としては「甘草(かんぞう)」の成分である「グリチルリチン」の抗アレルギー作用に期待したものと考えます。となると、花粉症で葛根湯を服用してもその他の6つの成分は必要ないことになるんじゃないの??さすがプラスの発想と長〜い歴史に裏付けられた漢方薬です。

ちなみに甘草の副作用として有名なのが「低カリウム血症」「偽アルドステロン症」といった循環器系に関するものですし、自然派の方が絶対拒否するステロイドに似た構造式を持っていますので、ステロイドの副作用に類似した症状が出る可能性もあります。

なんでバシッと効果のある成分を嫌うのか?

西洋薬は病気を元から治すわけではなく、症状を緩和する。一方、漢方薬は病気そのものを治すために、効果が出るには時間がかかるし、長く服用継続しなければならない⋯このように多くの方がイメージしています。でも風邪にしろ、インフルエンザにしろ、急性の疾患なんだから漢方薬じゃなくて、スタンダードな薬の方が効果的なんじゃないの?花粉症にしてもI型アレルギー(即時性のアレルギー)なんだから、抗ヒスタミン剤を服用した方が症状を早く抑えてくれると思うんだけどなあ。眠気の少ない抗ヒスタミン剤も登場していますしね。

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そういえばこんなのも書きましたっけ。

イボに効く、というヨクイニン。肌荒れにも効果あり、という話はウソ?!本当⁉

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ハトムギから作られる薏苡仁(ヨクイニン)というイボを消す効果があるとされる漢方薬があります。ヨクイニンは処方薬として医療機関で使用されていても、肌荒れに効果がある、とは現時点では言い切れません。ヨクイニンの広告では肌荒れにも効果があると述べているものがありますが注意が必要です。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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