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「コーヒー浣腸」、こんなニセ医学的健康法は誰が始めたんだ??

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宿便は体内に毒素が溜まってしまう、腸をスッキリさせることが健康につながる⋯こんな妄想に取り付かれた方々がいます。

「コーヒー浣腸」は販売しただけで有罪だそうです

宿便の解決方法として「コロンクレンズ」(コロンはcolonで大腸のこと)を推奨している一派がいます。医療機関で大掛かりなコロンクレンズ(単なる浣腸なんだけどね)を行っているとことも見受けられますが、医学的な裏付けはかなーり薄いと考えていいでしょうね。だって宿便自体、まともな医師はだーれも見たことないことは、以前ブログで書きました。

第三者に医学的治療をする場合、当然医師免許が必要になりますが、自分で勝手に自分へ対して何らかの医学的な施術をする場合は医師法には反しません。これを上手く利用した健康業者が有罪判決を受けました。

「コーヒー浣腸」販売 元社長に有罪判決–日テレNEWS24

日テレNEWS24(http://www.news24.jp/articles/2016/06/30/07334030.html)

コーヒー浣腸が未承認の医薬品と判断され、薬事法違反で有罪判決になりました。この確信犯的元社長、なんと71歳とのこと。若く見えますので、コーヒー浣腸の効果なのか、コーヒー浣腸でよほど儲かって美容クリニック通い・エステ三昧・化粧品買いまくりの結果なのかは報道されていません(笑)。

便秘時に浣腸って医療機関ではあまり行いませんが、ドラッグストア等で手軽に入手できるために、診療しているとイチジク浣腸のヘビーユーザーに時々お目にかかることがあります。浣腸をするにあたって、なんでコーヒー浣腸なの?

コーヒーを使って浣腸することの意義を述べよ❗

的に滑稽なコーヒー浣腸について考えてみますね。ちなみに海外ではコーヒー浣腸による死亡例があります⋯「Deaths Related to Coffee Enemas」(JAMA. 1980;244 (14) :1608-1609)によれば2年間で二人の方が亡くなっています。

そもそもの言い出しっぺは、あの「ゲルソン療法」だね

マクロビの影響を受けたと思われるマックス・ゲルソンさんが「ゲルソン療法」というニセ医学・疑似科学と考えられる健康法を1900年代初期に唱えました。詳しくはこのブログをお読みください。

酵素療法って医学的には否定されています。その派生系であるニセ医学だけど今でも信者さんがいる「ローフード(生食)」の元祖がゲルソンさんです。ゲルソンさんの考え方の基本は

体内に毒素がたまることによって「がん」などが発症する、だからどんどん排便しましょう

と考えたようです(ゲルソン療法の信者さんにとってはそんな簡単なもんじゃない、との反論はあるでしょうけど)。食生活だけじゃ、排泄(まあデトックスと呼ぶのだろうけど)と考え、積極的に浣腸の使用を推奨しました。なぜ浣腸にコーヒーを使用するのかというと

コーヒーに含まれるカフェインがより多くの毒素を取り除くから

というなんだかワケのわからない理論に裏付けられたコーヒー浣腸です。しかし、あのノーベル賞を2回受賞(科学賞と平和賞)したライナス・ポーリングが晩年「とにかくビタミンCって体にいいのよね〜」とテレビの健康番組の影響を受けたオバさんのような思考の迷路にばっくりはまりこみ、大量のビタミンCががん治療に効果を発揮する、と主張しだしました(何がポーリング博士に起こったのか、詳細不明)。トンデモ系ニセ医学の大家となったライナス・ポーリングに評価されたゲルソン療法はニセ医学として一世を風靡しました。

でも、ライナス・ポーリングって大量のビタミンC療法を行いつつ、多分コーヒー浣腸もなさっていたのでしょうけど、前立腺がんでお亡くなりになっています。現代ではスタンダートな治療で前立腺がんの5年生存率は発見が早ければ100パーセント近いんだけどね。

コーヒー浣腸って全く意味ないことを証明した論文あるよ

コーヒーを浣腸に使用する理由として、マックス・ゲルソンさんはカフェインが小腸経由で肝臓に入ると、より毒素を含んだ胆汁が排泄される、つまりデトックスに大きな効果があるので「がんの予防」にもなるし「がんも治っちゃう」そうです。でも飲んだコーヒーと浣腸したコーヒーとの体内での動態を調べた医学論文があるんだなあ〜、コーヒー浣腸信者さん。

それは「Pharmacokinetics of Caffeine following a Single Administration of Coffee Enema versus Oral Coffee Consumption in Healthy Male Subjects」(ISRN Pharmacol. 2013; 2013: 147238.)です。この医学論文によれば

コーヒー浣腸した場合とコーヒーを普通に飲んだ場合ではカフェインの濃度に統計学的な差はなかった

って結果になっています。コーヒーのポリフェノールが健康に良い影響があるのじゃないか、と言われています。でも、カフェインはあんまり体に良くないんじゃないと考えらえていますよね。コーヒーは普通に飲めばいいのですよ、何も浣腸しなくても。

やっとニセ医学的トンデモ療法への風当たりが強くなってきていますが⋯

産経新聞の報道により、水素水の効果は否定されたことは多くの方がご存知だと思われます。また、私がブログで全く意味ないじゃん的に批判してきたマッサージや整体による「小顔」も「小顔効果 表示に根拠なし」と消費者庁から9業者へ行政処分を行いました。

「小顔効果 表示に根拠なし」と消費者庁

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160630/k10010578501000.html?utm_int=all_side_ranking-access_005

やれやれ、と思っていた矢先に今度は「ケイ素水」ってニセ医学臭プンプンの健康法が登場したようです。奇抜な健康法にハマる人って実は同じ人が次から次とシステム的にハマっていますが⋯そういえば昔「システム金融」という悪徳商法がありましたが、健康業界も同じような状況に思えてしまいます。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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