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「筋膜リリース」とか「筋膜はがし」とか⋯肩甲骨ダイエットが元ネタかな?

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一時期肩甲骨付近のストレッチやマッサージによって、褐色細胞が刺激されてダイエット効果が出る、という話が出回ったことを記憶している方も多いかと思われます。

となると重要なのは褐色脂肪細胞自体に脂肪を少なくする、あるいは体重を落とす効果があって、初めて褐色脂肪細胞を刺激してダイエット成功となるわけなんですけど⋯それって本当ですか?

ストレッチやマッサージは気持ちが良いけど⋯それでダイエットできるの?

褐色脂肪細胞と肩甲骨ダイエットの深くない関係、肩甲骨にはやせるポイントがある?!はニセ医学??というブログを書きました。

そもそも褐色細胞の発見は「マーモット」と呼ばれる動物の背中に脂肪でもないし、筋肉でもない細胞をConrad Gesnerというスイスの人が16世紀に発見し、褐色脂肪細胞と呼んだことに端を発していることが、確認できます(Mammalogy: Adaptation, Diversity, Ecology 著者: George A.et al) 。

この褐色脂肪細胞ですが、これが通常の脂肪細胞より、筋肉よりもエネルギーを産生することが、その後の研究によって判明したことにより、褐色脂肪細胞を刺激するとエネルギーをどんどん産生するという考え方がでてきました。

つまり褐色脂肪細胞はエネルギーを消費させることで、余計な脂肪を燃焼させて、その結果で痩せるんじゃなの的な考え方が出来上がったと予想されます(残念ながら、どなたが言い出しっぺかは現時点で捜索することは出来ませんでした)。

褐色脂肪細胞を肩甲骨をリリースしたり、はがすことで活性化されるか?

これは残念がら無理があります。褐色脂肪細胞に数世紀ぶりに光を当てた「Developmental origin of fat: tracking obesity to its source.」(Gesta S1, Tseng YH, Kahn CR. Cell. 2007 Oct 19;131 (2) :242-56.)という論文があります。この研究はみなさんが褐色脂肪細胞を刺激するとダイエット効果がある、それを裏付ける論文的に解釈しているようすが、いくつかの記事で伺えますが、成長期の肥満に関連しているんじゃない程度の内容になっているんです。

ここで肩甲骨方面において大問題が発生します。褐色脂肪細胞が肩甲骨周辺に集中して存在しているとの根拠は全くありません。今わかっている範囲では冬眠する動物には褐色脂肪細胞が多く存在している、たったそれだけ。さらに、肩甲骨をストレッチしたり、筋膜をリリースしたり、筋膜をはがすことで、褐色脂肪細胞が刺激されるなんて医学的な論文はありません(どなたか見つけたら、コッソリ教えて下さい)。

つまり、肩甲骨周辺を伸ばそうが、はがそうが見た目の筋肉の緊張は取れるでしょうけど、痩せるあるいはダイエット効果がある、という考え方は成り立ちません。

「肩甲骨」ダイエットの教科書のヘンな点

肩甲骨関連健康法の教科書的なものとして「最強の5分間『肩甲骨』ダイエット」(GETTAMAN 著 発行 光文社)があります。ダイエット関連本なんで、食生活に関して事細かな指導が書かれています。肩甲骨ダイエットという言葉は多分この著者が言い出しっぺと考えられますので(あるいみ元祖であり、非常に鋭い点に目をつけたのは称賛に値します)、その亜流系として「筋膜リリース」「筋膜はがし」との用語?が出現してきたと予測します。ひょっとして商標登録とかがなされているために、類似の健康法としてそれらの用語の使用が控えられている可能性もあります。

この本のなかで「よくかんで食べれば肥満防止に」(P80からP81)との項目があります。そこには時代とともに噛む回数は減っている、現代人ももっとよく噛みましょう的な主張とともに、

・弥生時代 3990回
・鎌倉時代2554回
・江戸時代初期1465回
・昭和10年ころ1420回
・現在620回噛んでいた

との図表があるのですが、私はこれの元ネタを見つけることが出来ないで、数年間過ごしてきました。でも、とうとう見つけたんですよね、この元とかんがえられる図表を⋯これです❗

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https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/iryo_hoken/shikahoken/pamphlet/shokuiku.files/06P62-75.pdf

東京都福祉保健局のサイトで、咀嚼の大切さと歯を守ることが健康につながることを広報したものであり、決してダイエット関連の内容ではありません。しかし、GETTAMANさん及び出版社さん、せめて元のソースの提示を書籍化するならお願いします。これ探すのに数年かかっちゃったじゃないか❗

もちろん柔らかいものだけでなく、硬いものをしっかり咀嚼することが、病気の原因になるとは考えられません。慌てないで、ゆっくりしっかり噛みながら食事をすることは大切です。しかし、この図の下にこんな図も実は付随しています。

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https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/iryo_hoken/shikahoken/pamphlet/shokuiku.files/06P62-75.pdf

3990回、食事のたびに咀嚼していれば一日で約3時間も噛むことに、専念しないといけません。古代は生きていくためには食べていかなければなりませんでした。食べ物をゲットするのも、今のように気軽にスーパーで買えるわけでなく、多大な労力=エネルギーを消耗していました。そんな時代のことをもちだされて、現代の人にダイエットを勧めるのは、ちょいと無理があるのではないでしょうか?

少なくともストレッチやマッサージを受けることによって、関節の可動域が広がり全身の柔軟性を取り戻し、運動もしやすくなります。それによっていつもより活動的になり、その結果体重が減るのは理解できますが、肩甲骨周りをゴチャゴチャ弄繰り回して、簡単にダイエット、そりゃ多分無理なんじゃないでしょうかね?

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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