ニキビ肌の方に朗報⁉「ニキビがあると将来肌は老化しにくい」は本当か?

スキンケア

ニキビで悩まされた分だけ将来若々しく見えるというテロメア長い説

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当院はニキビ・ニキビ跡にレーザーなどを使用して、かなり評判の高いクリニックとなっています(ちょっと自慢させてね)。ニキビに関する話題や論文の情報収集に力を入れてるのですが、先日こんな医学記事を発見しました。「Acne sufferers’ cells may be protected against ageing」(ロンドン大学キングスカレッジ発)でニキビだと細胞の老化を防ぐと読み取れる医学記事です。

若い時にニキビ肌だと、将来的には美肌をゲットできる⁉

この論文を要約しますね。

  • 若い時にニキビ肌の人は、長いテロメアをもつ
  • テロメアが長ければ、細胞が老化することを防ぐことができる
  • 過去にニキビだった人は年をとっても、若々しい肌を保つことができる

テロメアは長寿遺伝子とも言われていて、長ければ長いほど細胞分裂を起こすことができると考えられています。

このような内容です。えええっ〜、じゃあ現時点でニキビに悩んでいる人に対して「ニキビでも将来はきっとシワの無い、張りのある肌になれるから、今は辛抱してね」って言えるわけないじゃん⋯このロンドン大学のサイトに載っていた話って論文になっているの(医師は医学論文を伝家の宝刀とする傾向あります)と、調査の旅に出ました。

「ニキビだと肌の老化を防ぐ」は、しっかりした医学論文になっていました

リンクしているサイトや医学論文検索サイトを巡り巡って「Acne and telomere length. A new spectrum between senescence and apoptosis pathways」(http://dx.doi.org/10.1016/j.jid.2016.09.014)にたどり着きました。この論文はJournal of Investigative Dermatologyに2016年9月1日に受理されていて、35.95ドルでダウンロードしましたよ、勉強とブログのために。

acne_and_telomere_length__a_new_spectrum_between_senescence_and_apoptosis_pathways_pdf-2

PDF形式で論文全文が読めますが、「出版のための受理された未編集の原稿です」と書かれていますので、出来立てホヤホヤのニキビと老化について書かれたものであることがわかります。

なぜかロンドン大学キングスカレッジには双子を登録するサイトがありまして、遺伝子が同一あるいは遺伝子が似通った人を通じて、医学データを収集しています。

twinsuk

https://twinsuk.ac.uk/

ネットを使用して双子のボランティアを募集しています。ここに蓄積されたデータを使用して、今回の研究が行われました。研究の対象となったのは1205組の双子の女性です。彼女たちの4分の1がニキビ肌に悩まされた時期があると申告しました。彼女たちのテロメアを測定したところニキビに悩まされた人ほど、長いテロメアを持っていたことが判明したのです。

さらに双子のグループから、皮膚の一部を取り出して(皮膚生検❗)遺伝子の検査をしたところ、特定の一致する遺伝子(ZNF420 gene)が見つかりました。この遺伝子が細胞の増殖を抑制してアポトーシスを起こすP53遺伝子と密接な関連がある、と記載されています。

アポトーシスとは有害な細胞が死滅することであり、細胞が自殺するとの表現をすることもあります。

にきびに悩んだ人ほどアポローシスがおこりにくく、将来的に美肌になる可能性があると少々強引な結果を誘導することも可能な論文でした。

ニキビに悩まされていると、お肌の手入れを念入りにするんで、将来肌が綺麗になるんじゃないの?

今回の論文ですが、以下のいくつかの疑問点があります。

  1. 今回の研究の対象となった双子が一卵性か二卵性かが明確に記されていない
  2. 若い時はニキビだった、と自己申請となっている
  3. ニキビを治療したか、しなかったかは自己申請となっている

この3つが気になって仕方ありません。

また、大学のサイトに掲載されている内容中に、ニキビ患者さんの場合はシワや皮膚の菲薄化などの老化現象が遅く見られる (「Statistical analyses which adjusted for age, relatedness, weight and height showed that telomere length in acne sufferers was significantly longer」)と書かれていますが、その判定方法が医学専門誌に投稿された論文中には書かれていません。

ニキビに悩まされて、スキンケアを研究して美肌になった、なら理解できますが「テロメアが長いから、細胞死が起こりにくく、将来的に美肌になれる」との解釈はどうなんでしょうね?

ニキビになりやすいと、将来綺麗な肌になれる保証は無いようです

不規則な生活、間違ったスキンケアなどニキビの発症を左右する因子は複雑に絡み合っています。いくら双子であっても、洗顔料が違ったりメイク方法が違ってくると、一方はニキビになって、もう一方はニキビにない綺麗な肌、ってこともあり得ます。双子に協力してもらった論文は海外では多数見受けられます。

ニキビ治療薬として「エピデュオゲル」(アダパレンとBPOの合剤)が2016年8月31日に薬価収載され、保険適応となりました。ニキビにお悩みの方に対して「将来は美肌になれますよ」なんて間違った情報が一人歩きしないことを祈っています。

桑満おさむ(医師)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ(医師)への相談窓口

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