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ストレスとがんの関係⋯実は有りそうで無いようです❗

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多大なストレスががんを発生する、って話はなんとはなしに「そうだよね」的な解釈をしてしまいがちです。

身近でも多忙、あるいは度重なるトラブルが原因となって「がん」になってしまった、と考えたくなるような知人があなたの周りにも入るんじゃないでしょうか?

ストレスでがんになる⋯どうもこの説は怪しいようです

がんとストレスに関連性は無い

がんとストレスは関係がない

https://thetruthaboutcancer.com/the-link-between-stress-and-cancer-how-fat-can-reverse-its-deadly-effects/

この一般向けサイトでは、ストレスががんにリンクしているとの主張ですが⋯どうもあまり医学的な話ではなく、日本でもよく見かける「何々を食べて健康になろう」的な広告の一環と考えられます。

今回がんとストレスは関係ないよ、との医学論文はEU加盟国の11万6056人を12年間追跡調査をする大掛かりな研究です。この医学論文は、がんの発生とストレスの間には深〜い関係はなかった、との意外な結論を出しています。

少なくとも長時間労働はがんの原因にならないようです

日本では長時間労働が社会問題となっています。今回、長時間労働はがん発症リスクと関連性がなかった、と主張している医学論文は「Long working hours and cancer risk: a multi-cohort study」(Br J Cancer.2016 Mar 29;114 (7) :813-8)です。私は何も長時間労働を推奨している訳でも有りませんし、ストレスフルな職場が健康状態に悪影響を及ぼさないという立場ではないので、誤解しないようにしてくださいませ。

この論文は調査スタート時にがんと診断されていない11万6056人の男女が対象です。観察期間中

  • 結腸がん・直腸がんになった人は393人
  • 肺がんになった人は247人
  • 乳がんになった人は833人
  • 前立腺がんになった人は534人

論文ではこれらのがんの発症リスクと労働時間との間には関連性が無かった、との結論となっています。

しかし、乳がんに関しては週55時間以上の勤務で発症率は1.6倍との結果も出ています。乳がんだけが長時間労働と関連性があるのは、多分出産歴を考慮しなかったことによる可能性は残っている、とこの論文は記述しています。

仕事のストレスとがん発症は関連なし説をもう一本紹介します

これは少し前に同じ研究対象を同じ研究者が解析したもので

仕事のストレスとがんの発症に関連性は無い、との結論を出したものがあります。

「Work stress and risk of cancer: meta-analysis of 5700 incident cancer events in 116,000 European men and women」 (BMJ 2013 Feb 7;346:f165.)。この医学論文が発表された当時は多くの医療関係者は「えええっ❗」的に解釈したものです。

中高年向けの健康雑誌には「ストレスによって、活性酸素を増えます。その結果がんを発症する可能性もあります」、だから活性酸素を減らす工夫(当時は例の水素水やサプリの摂取)をしましょう、との論調が目立っていました。現時点でも「ストレス 発がん」とかのキーワードで検索すると、「ストレスによって免疫力が低下します」って感じの記事が上位表示されますよね。でも、この大掛かりなEUの研究ではストレスと発がんリスクは関係ないよ、との結果になって入るのです。もう一度繰り返します

ストレスと発がんリスクに関連性は無かった❗

こうなるとストレスが免疫力にどんな影響があるかも怪しげになってきますし、ストレスってなによ?という根源的な問題が発生してしまうのです。

今までの考え方としては、ストレス(定義は漠然としてはいます)によってホルモンバランスが崩れ、このホルモンのアンバランスによって発がんが起きる、との説明がありました。緊張ばっかりしていると、免疫力が落ちてがんになっちゃうよ、だからとにかく副交感神経を優位にしましょう式の健康本も多数あります。

今回は長時間労働と発がん、ストレスと発がんについての関連性を否定するような論文を取り上げました。もちろん長時間労働やストレスは心血管系の病気のリスクを高めることは明らかになっています。

しかし、これだけ世界中に研究者が発がんと生活習慣、食習慣などを研究してもどうにも納得のいかない結論しか出てきません。これだけ科学が発展進化していても、人間の多様性を全て考慮に入れて考えれば「こんな生活をすればがんになりませんよ」と言い切るのは難しいのですね。

○○健康法の危うさ

今回取り上げた医学論文は今まで常識として多くの方が認識してきた「ストレスと発がん」の考え方を否定したものです。そうなると巷に出回って知る「なになにを食べるとがんになる」「なになにを食べでがんを防ぐ」的な健康法も一度は疑ってみる方が良さそうです。

例えば一卵性双生児であっても同じ病気に罹る訳ではありません。同じ遺伝子を持ちながら、環境や生活習慣によって別々の病気になるのです。医学はまだまだ宇宙の研究を同じくらいに未知の領域が残っているんで、そこにつけ込んでヘンテコな医療もあとをたたないのですね。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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