fbpx

バリウム検査を受けると虫垂炎になりやすい⁉ってことは、大腸がんにもなるの?

更新日:

健康情報を提供するテレビ番組やネットのフェイク情報が近年問題となっています。

一般的には信頼度が高いと感じるNHKのガッテンも以前から医療関係者からは冷たい視線を浴びまくっていることは、一部の事情通の方はご存知だと思います。

今年に入っても睡眠薬であたかも糖尿病が治るかのような内容の番組に対して、正式に謝罪を出したことは記憶に新しいと思います。→睡眠薬で血糖値をコントロール⁉NHK「ガッテン」がまたやらかしちゃいました❗

なにかとお騒がせなNHKガッテンですが⋯

調子こいているガッテンをからかうつもりで、次回放送であった虫垂炎と大腸がんの関連がトンデモない内容になることを予想したブログで、私が取り上げた元ネタはハズレで実はは「Association between Appendectomy and Subsequent Colorectal Cancer Development」ではないかと、有名ニセ医学ウォッチャーのNATROMさんからご指摘いただいて、大いに恥をかきました(涙)。

画像

http://www9.nhk.or.jp/gatten/health/

名誉挽回のためにバリウム検査をすると虫垂炎になりやすいというガッテンがまだ取り上げていない話をしますね。

以前胃腸の検査のためにバリウム検査する人なんているのか、とブログで問いかけて放射線科のスペシャリストに「自分はバリウム検査をしているけど、何か?」というご意見を賜ったことに対してもリベンジいたしまーす。

バリウム検査と虫垂炎に深い関係があるなら、大腸がんのリスクとも関係しているんじゃない⁉

NHKのガッテンで虫垂炎になって手術をすると大腸がんのリスクが高まることを2017年3月8日「突然の激痛!盲腸(虫垂炎)の新事実」で放送していました。「俺はすでに虫垂炎の手術しちゃったぞ」と焦る人向けというか、エクスキューズ的にガッテンのサイトでは

リスクが上がったのは、手術後3年半までです。その後は、手術をした人としない人で大腸がんのリスクは変わらなくなりました。

と付け加えている点が結構笑えます(http://www9.nhk.or.jp/gatten/articles/20170308/index.html)。虫垂炎と大腸がんの関連性の手前として、バリウム検査を受けると虫垂炎になりやすいとの設があります。ようするに胃腸の検査でバリウム使用 → 虫垂炎になりやすい → 大腸がんのリスクが高まるとも読み取れる医学論文を見つけました。

虫垂炎と大腸がんの関連性を発表したのは台湾の研究チームですが、バリウム検査を受けると虫垂炎になりやすい可能性があると指摘したのも同じく台湾の研究チームです。虫垂炎と大腸がんの関連は2015年2月24日にPLPS ONEに掲載されましたが、バリウムと虫垂炎の関連性は2017年1月のThe American Journal of the Medical Sciencesに掲載されていますので、私の情報の方が新しいです(って、こんなことで大恥をカバーはできませんけど 涙)。

バリウム検査をすると虫垂炎のリスクが高まる、という研究は「The Association Between Barium Examination and Subsequent Appendicitis: A Nationwide Population-Based Study」(Am J Med. 2017 Jan;130 (1) :54-60)で簡単に内容をまとめると

・対象は2万4885人のバリウム検査を受けた人

・比較するグループはバリウム検査を受けなかった9万8384人

・両者で虫垂炎になった人を比較した

・バリウム検査を受けた人は1000人中は0.8人、バリウム検査を受けた人は1.19人が虫垂炎になった

上記からバリウム検査と虫垂炎の間には関連性があったことが統計学的に導き出されました。となると、ガッテンでやっていた虫垂炎の手術をすると大腸がんのリスクが高まることをこの研究に当てはめると、理屈としてはバリウム検査を受けると大腸がんのリスクが高まる可能性になるんじゃないでしょうか。

なんでバリウム検査をするんだろう??

以前ブログで「胃の検査でバリウム飲んでいる医師がいたら手を上げて❗」をアップしたところ、がんセンターの放射線のプロから「自分自身はバリウムやってるよ」という意外なご意見を賜りました。でもさあ、バリウム検査って放射線も浴びるし、便秘になる人もいるし、バリウムで病気の疑いが認められた場合は結局は胃カメラ(内視鏡)検査を受ける羽目になるわけで⋯。

虫垂炎の原因としても、虫垂に炎症が起きて血行が悪くなったところに微生物が繁殖することが考えられています。バリウムを飲んでそれが虫垂に詰まって炎症が起きる、とのメカニズムもあり得る訳になるんじゃないのかなぁ。

バリウム検査のメリットとデメリットを考えるとこうなる

集団検診でバリウム検査が採用されている理由の一つとして、一人当たりのコストが低いことがあげられます。また、バリウムを飲むことで、胃カメラでは検査することができない腸の様子も診断することが可能です。デメリットとしては病変を確認できても、病変部を採取することができないことなどが考えられます。

特に胃がんを疑う場合はバリウム検査で発見されても、結局は内視鏡検査を受けることになるので、合理的に考えて胃カメラを私は選択します。

国を挙げてがんの早期発見を促しているのですが、近藤誠氏のようにがん検診なんか受けるな、がんが見つかってもほっとけという極論もありますよね。となると、近藤氏は今回取り上げた「虫垂炎とバリウム検査の関連性」をまた大げさに拡散することを予想しておきますね⋯ガッテンの放送内容を先取りして大恥かいた件と同様の結果になる可能性も大きいかな?

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

Affiliated Medical Institutions

主な提携医療機関

一般診療
診療日
月・火・水・金
9:30~12:30/15:00~18:30

土 9:30~12:30
休診日
木・日・祝
受付時間
9:00〜12:15/14:30〜18:15

泌尿器科・内科・発熱外来

フリーダイヤルがご利用になれない場合は03-5721-7000

美容診療
診療日
月・火・水・木・金・土
10:00~18:30

※完全予約制です。ご予約はお電話ください。
休診日
日・祝
受付時間
10:00〜18:30

美容外科・美容皮膚科

フリーダイヤルがご利用になれない場合は03-5721-7015

© 2023 医療法人社団 萌隆会 五本木クリニック