五本木クリニック院長ブログ

批判します!!小林製薬さま、「物忘れ改善薬 ワスノン」の作用機序をお教えください。


■物忘れと認知症は全く違う病状です、手遅れになったらどうするんでしょうか?

先日「物忘れに効果がある市販薬」に対して疑問を呈しました。

物忘れを改善する生薬「オンジ」、これが認知症に効果あり!!って本当??

漢方の成分である「オンジ」が物忘れを改善するために、認知症にも効果がありそうな記事になって日経MJ2017年4月9日に掲載されていました。ネーミングセンス抜群のあの

◎小林製薬もオンジが主成分の「ワスノン」という物忘れ改善薬をやっぱりね的に発売して、ニュースリリースまで出していたことに発見しました

これまでの小林製薬の商品のネーミングから予想すると、この薬は多分「忘れる+NONE」からつけられたと考えます。

https://www.kobayashi.co.jp/brand/wasnon/about/より

小林製薬の「ワスノン」プレスリリース(https://www.kobayashi.co.jp/corporate/news/2017/170607_01/index.html)にはこのように書かれています。

覚える力や思い出す力といった記憶力に着目した“物忘れ改善薬”「ワスノン」(第3類医薬品)を、6月28日(水)から全国の薬局・薬店・ドラッグストアなどで新発売いたします。生薬「オンジ」が脳内の情報伝達を活性化させることで、記憶力の低下にはたらきかけ、加齢に伴う物忘れを改善します。

◎これってどう見ても高齢者の認知症を改善する薬だ!!

って普通の人は考えるのではないでしょうか?物忘れと認知症は一見病態が似ているようですが、実は全く別の症状であり、認知症なのに手軽に入手できる「ワスノン」を長期服用していると、せっかくの治療機会を損失する危険性があります。

■小林製薬の広告手段・広報戦略は誤解を招きます

先日も私は小林製薬の「シイタゲン-α」という健康食品があたかも、がん治療に効果をあげる、あるいはがん治療をサポートするかのように受け止められる広告手法を批判しました。

小林製薬さま、これはちょっとやり過ぎなのではないでしょうか?

多大な広告宣伝費を使いながら、既存の薬をネーミングでカバーして効果・効能をイメージさせる小林製薬。小林製薬はたぶん優良企業として投資家等の評価を受けているかもしれませんが(私は投資等は全くの門外漢です)、そりゃそうでしょう、研究費がこんな感じなんですもん。

http://www.kenq.net/kenq/rdsch.nsf/det?OpenForm&cd=4967より

◎小林製薬の研究開発費はたったの4パーセント前後!!

日本最大の製薬メーカーである武田製薬の研究開発費は20パーセント前後です。

http://www.kenq.net/kenq/rdsch.nsf/det?OpenForm&cd=4502より

オロナミンCやオロナイン軟膏、今ではポカリスエット等の身近な製薬会社として知られる大塚製薬は実は医療業界では抗がん剤を作っている会社として認識されています。研究開発費はやはり15パーセント近く費やしています。

http://www.kenq.net/kenq/rdsch.nsf/det?OpenForm&cd=4578より

このように小林製薬は新薬の開発よりは、商品が売れることを優先しているとの評価になるのではないでしょうか、それも抜群のネーミングセンスで。

■物忘れ改善薬「ワスノン」の効果は認知症にも有効か?

小林製薬さんはきっと言うでしょうね「ワスノンは物忘れ改善薬であり、認知症改善薬ではないよ」って。でも、このニュースリリースを読む限りではどう見ても一般の方が考えている認知症を改善する、認知症に効果があると認識してしまいます。

記憶力や認知機能の低下は、脳内の神経機能の低下が原因です。年齢とともに脳内の神経細胞が萎縮することが原因です。脳海馬の神経萎縮や認知症の原因物質(アミロイドβ)による神経萎縮を保護することが、物忘れや記憶力の低下の改善につながります。

小林製薬「オンジ」ニュースリリースより

◎ここのはっきり「認知症」及び「認知機能の低下」と書かれています

実は認知症といっても種類が多数あり、原因と症状に違いがあります。

●アルツハイマー型認知症・・・一般の方は認知症といえば「アルツハイマー」と連想すると思います。この病気の特徴は「忘れていること自体を忘れる」ことです。私が実際の診療で使う説明は「朝食の献立を忘れたのはただの物忘れ、朝食を食べたこと自体を憶えていないのが認知症」です。物忘れを認知症とは普通考えません。進行する厄介な病気であるために、現在は複数の処方薬が開発され、実際に投与されています。

●脳血管性認知症・・・脳の血管障害が原因で発症します。認知症の20パーセント前後が脳血管性認知症と考えらえていますが、致命的な疾患にもつながりますので市販薬でどうのこうの言っている場合ではありません。即、医療機関の受診が必要となる病気です。動脈硬化や高血圧の治療を受け、リハビリを行うことで症状の緩和が期待できる認知症です。

●レビー小体型認知症・・・多くの場合、パーキンソン病との関連が強く示唆されています。幻視を伴うことが多く、頭脳がクリアな時とボンヤリした状態が繰り返される症状に波のある認知症です。パーキンソン病のように歩行に障害が出ますので、高齢者の場合は転倒に注意が必要であり、速やかに医療機関を受診するべき疾患です。

●前頭側頭型認知症・・・原因は現時点では解明されていません。モノの認識はできるけど、それの使い方がわからない(例えばハサミであることはわかっても、何にどのように使うかわからない)ような状態が見られます。なかにはお店の売り物を勝手に家に持ち帰ってしまうようなこともあります。残念ながら原因が解っていないために治療方法も確立されていません。

このように「認知症」と言っても種類は多数ですし、各疾患によっても治療法が違ってきます。それでは小林製薬の「ワスノン」はこれらの認知症のどのタイプに効果があるのでしょうか?

◎ニュースリリースにしっかり「認知症」「認知機能の低下」の改善につながると書いてあります

「ワスノン」は厚生労働省の認知の定義である記憶の障害・判断・計算・理解・学習・思考・言語のどれに効果があり、改善するのでしょうか?

■「ワスノン」が本当に記憶力を改善するエビデンスってあるの?

認知症と物忘れの違いが別物であること、それをあたかも記憶力を改善することによって両者に効果があるように思わせる表現が目立つ小林製薬の「ワスノン」。

この物忘れ改善薬に対してデジタル版朝日新聞でも厚労省の注意喚起が取り上げています。

厚労省はメーカーに対し「適切な医療を受ける機会が失われないよう、注意喚起を含めた配慮を求めている」としている。

http://digital.asahi.com/articles/ASK7724DNK77UBQU006.html

ワスノンの主要成分である「遠志(オンジ)」に実際に物忘れ、あるいは認知症に効果が期待できる可能性を示した医学論文は「Effects of Polygala tenuifolia root extract on proliferation of neural stem cells in the hippocampal CA1 region」(Phytother Res. 2008 Oct;22(10):1324-9)くらいしか私は見つけることができませんでした。

◎でもこれってラットを使った研究ですよね

小林製薬さま、人に対する物忘れや認知症に対する研究データがありましたらぜひご提示いただけると助かります。

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