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「赤ワインはレスベラトロールたっぷりで健康にいいのよね」という周回遅れの方へ

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フレンチパラドックスと呼ばれる現象があります。フランス人の食事、フランス料理 (フレンチ) は世界3大料理のひとつで人気があります。食材は幅広いのですが、肉・乳製品が多用されます。一般的に健康にいいとされる食事と反するのに、フランス人は、なぜか心血管系の病気で亡くなる人が少ない⋯という現象がフレンチ・パラドックスです。

フレンチといえばワインは欠かせません。料理ごとに適したワインとセットが基本です。フレンチ・パラドックスの謎はワインにある!としてワイン業界がワインを健康飲料として世の中に広めたことが、赤ワイン健康に良い説の始まりです。ただのワイン業界の宣伝で、健康によい説は後付けなんです。

赤ワインはレスベラトロールが含まれているので健康に良い説は既に否定されているよ❗

赤ワインはポリフェノールのなかまのレスベラトロールが豊富なために、そのレスベラトロールを抽出した健康食品とかサプリメント(まあ、意味は同じですけど)がブームになりました。その赤ワイン体に良い説をどっかで仕入れてきた方がもっともらしく「赤ワインのレスベラトロールが体に良いのよねえ」的に会話しているのを聞いてしまった私。こんな周回遅れの人ってひょっとして「水素水っていいのよねえ(何にいいのか不明)」って会話もしていることが大いに予想されます。

以前こんなブログを書きました⋯悲報 レスベラトロールは効果なし⁉長寿・がん予防・心臓病予防の効果が全否定❗

これに対して自然派嗜好を拗らせた方から「ワインに入っている防腐剤が悪さをする」なんて反撃を受けた私は「心血管系で死ぬ前に肝硬変で死んでるんだよ」って感じで対抗して、火に油を注ぐ結果になったのも懐かしい思い出です(やせ我慢)。

さてさて、赤ワインはなんの効果もなかったよ、という論文の解説をします❗

以前ブログでレスベラトロールは効果なし、をもう一度違った観点から書いてみます。今回はイタリアのキャンティ地方の方の健康状況を11年間追跡したものがベースになっています。「Resveratrol in Red Wine, Chocolate, Grapes Not Associated With Improved Health」(The JAMA Network)によれば65歳以上の男女783人を1998年から2009年まで健康調査を行いました。追跡調査中に268人が死亡しています。また174人が心血管系の病気を発症していましたし、36人ががんに罹患しました。

結論としてレスベラトロールはがんとも心血管系疾患とも関連性がありませんでした

長寿遺伝子とレスベラトロールの関係

サーチュイン遺伝子がつい最近も某テレビで騒がれましたが⋯実はサーチュイン遺伝子が長寿遺伝子であることが予想されているのはハエと線虫くらいであり、人間のサーチュイン遺伝子、長寿遺伝子と大騒ぎするには、時期尚早ではないかと考えています。というのもレスベラトロールによってサーチュイン遺伝子が活性化する、との論文があります。

つまりレスベラトロールは長寿遺伝子をスイッチオンにする→赤ワインはレスベラトロールがたっぷりだから長寿効果があるとの論法が使用されています。

しかし、フレンチパラドックスに関する追っかけの研究は残念ながら赤ワインの長寿効果を明らかにするものはかなり少数と思われます(全てを調べたわけじゃないですが)。

実験で効果あり⋯それが人間に効果あり、とは言えない

がん治療に関して、医師間でかなり話が盛り上がっています。話の中心は「がん免疫療法」と称する自由診療のクリニックで取り上げられているものです。近年、がん細胞の免疫機能に影響を与える「免疫チェックポイント阻害薬」が話題になっており、これは標準治療の一つです。この薬って効果より値段が高価であることの方が一般の方には話題性があったようですが、ここで「免疫」という言葉が出てくるために、腫瘍内科の医師が「インチキ」と指摘するような「がん免疫療法」が多くの人に受け入れられている要因の一つなのではないでしょうか?

標準治療ではなく、代替医療をがん治療で選択するとこんな悲惨な結果になります

画像

https://academic.oup.com/jnci/article-abstract/110/1/djx145/4064136/Use-of-Alternative-Medicine-for-Cancer-and-Its

世界中の研究者があたらしいがん治療方法を研究しています。試験管内の細胞から始まり、動物実験、人に対する研究、より多くに人に対する投与という何段階もの厳しい過程を経て、初めて一般の方の治療に使用されるようになります。今、巷にあふれかえる「がん免疫療法」の多くが試験管レベル、よくて動物実験レベルなのです。新しい研究結果が即、ヒトに当てはまることは人体実験であり、エビデンスの無いものには手を出さないようにくれぐれも気をつけて欲しい、との気持ちから今回赤ワイン長寿説を例として取り上げました。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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