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糖質制限で死亡率は減少する、でも糖尿病になりやすい⁉

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ファミレスとかに行くとライスやパンなしのおかずだけ単品メニューを食べている人が目立ちます。

中にはライスを半分くらいしか食べないで残している人が目に入ると「最初から半ライスを頼めよ」なんて感じてしまう今日この頃です。

まあブームとして一時的な流行で過ぎ去るかと思っていた糖質制限食や低炭水化物食ですが、果たしてこれは本当に健康に良いかどうか、賛否両論があります

糖質制限はダイエット法の一つとして確立されつつあるけど⋯

基本的に糖尿病の治療食として考案された糖質制限食・低炭水化物食ですが、メディア等の影響でダイエットの基本中の基本として根付いていることは間違いありません。しかし、

糖質制限食あるいは低炭水化物食が病気の予防になるか、あるいは寿命を延ばすかについてはまだまだ研究が行われている段階

とお考え下さい。

医学専門誌としては非常にクオリティの高い「Lancet」に「Associations of fats and carbohydrate intake with cardiovascular disease and mortality in 18 countries from five continents (PURE) : a prospective cohort study」(Lancet. 2017 Aug 28)は

炭水化物の摂取量が増えれば増えるほど死亡率が高くなる

という内容になっています。一方でクオリティが高いとはいい難い一般週刊誌「週刊ポスト」(2017年9月22日号)では

糖質制限をすると糖尿病になる

なんて衝撃的な記事が掲載されるしまつ。

どっちが正しいのか一般の人はもちろんのこと、医師でも混乱してしまう状況が今の日本の健康関連情報だといえます。このランセットVS週刊ポスト、ポイントを紹介しますね。

炭水化物をたくさん食べるとは死亡リスクを高める❗

クオリティの高いランセットによれば、世界18カ国の高所得・中所得・低所得の国の35から70歳の13万5335人を対象に5.3年から9.3年間追跡調査しました。その結果、炭水化物を沢山摂取している方が全死亡リスクが高まっていました。しかし、なぜか心血管疾患による死亡リスクも罹患のリスクは炭水化物の摂取量とは関連がありませんでした。

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前述ランセットより 糖質制限食の亜流の一つとして肉を中心に食生活を送ろう、というものがあります。今回の研究では脂質の場合、摂取量が多ければ多いほど死亡リスクは低下していました。

つまり

糖質制限食(炭水化物制限食)は死亡リスクを低くして、肉をバンバン食べると死亡リスクが更に低くなる

との結果になっています(実はこの研究はいくつかの問題点があるのですが、メディア的にはそのような糖質制限食によって長生きできる、って感じで報道すると考えます)。

糖質制限をすると糖尿病になっちゃう⁉

厳密にいえば糖質制限食と炭水化物制限食は別物です。炭水化物は糖質と食物繊維を含むので、両者の使い分けに非常に厳しい流派もありますが、多くの方が糖質制限=炭水化物制限と考えていると思いますので、同一のものとして今回は取り扱います。

クオリティ的には東スポよりは上で、週刊新潮・週刊文春よりは下と多くの方が考えている週刊ポストさん(先日非常に優れた医療関連記事を掲載していたので「さん」つけ)では「糖質制限すると糖尿病になる」と直球的なタイトルの記事が掲載されていました。

糖質制限をすると糖尿病になることを「糖尿病のパラドックス」と呼ぶそうです

が、私は初めて知りました。

週刊ポストが2010年にハーバード大学の公衆衛生大学院のコニング教授が発表した研究として、「低炭水化物食と動物性たんぱく質と動物性脂肪を多く食べると糖尿病発生リスクが高まった」とありますが、これば多分2010年の第70回米国糖尿病学会学術集会でLawrence De Koningさんが発表したものだと思われます。この記事は日経メディカルに「低炭水化物食に男性の2型糖尿病リスクを高める可能性」とのタイトルで掲載されましたが、これは非常に誤解を招くタイトルです。詳細は普通の食事と低炭水化物食の摂取による違いを見つけるための研究ではなく、3種類の低炭水化物食を設定してどのような組み合わせが糖尿病のリスクと関連があるかを調べているものです。日経メディカル(2010/6/29)では

動物性タンパク質と脂質が多い低炭水化物食、特に大量の赤身肉や加工肉が含まれている食事は、2型糖尿病リスクを増加させる可能性がある

と後半に書かれていますので、糖質制限すると糖尿病になる、は少しばかり大げさなんじゃないのかな?

いつまで続くのやら「◯◯を食べると☓☓病になる」的な記事

ネット・週刊誌・一般書籍・テレビは今も昔も健康関連記事で溢れかえっています。多くの情報は「◯◯にならない為には☓☓を食べろ」「◯◯を食べると☓☓になる」って感じのものです。

医学的に裏付けの取れている(いわゆるエビデンスのある)食生活は「だけ食い」を推奨するものは殆どありませんし、個人個人を対象に研究されたものではなく「疫学的」「統計学的」に研究されたものが中心です。処方薬であっても100人に処方すればその100人全員に薬効があるとは限りません。

がんになってしまった時に医師も意識しますし、患者さんも気にするのが「5年生存率」です。例えば5年後に生存している率が95パーセントのがんだと比較的予後の良いものとされますが、患者さん個人で考えてみると5年後に生きている確率は0パーセントか100パーセントになるわけです。

と、なるとお前がいつも批判しているトンデモ医学と同じじゃん、とのご意見もあるかと思いますが⋯標準医学・標準医療の場合はエビデンスがありますし、なぜ効果があるかが科学的に解明されています。一方のトンデモ系はエビデンスというよりお客様の個人的感想がほとんどであり、効果の説明も限りなく疑似科学であることが一般的です。

食に関して言えば多種多様のものを摂取することは別の観点から見れば「リスクの分散」とも考えられますので、「◯◯だけ食い」が将来的に健康によい、長生きできることを証明する医学論文が出る可能性はかなり低いと考えます。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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