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「かしこい患者になるための基礎知識」⁉3000万人が加入する健保連のサイトが上から目線すぎる❗

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健康保険組合連合会(略して健保連)は一般的に社会保険(略して社保)と呼ばれる企業の健康保険組合が連合して組織して、国民の医療費を負担している団体です。

私たちが医業を営んで診療報酬をいただくのも健保連からなので、医療機関にとってはお金を払ってくれるありがたい団体とも考えられます。

日本国民3000万人が加入する健保連、こりゃどっちの味方だ?

医療機関は診療内容にしたがってレセプトを送付することによって、約二ヶ月遅れで診療報酬をいただくのですが、ちょっとした病名の記載漏れがあるとレセプトは返戻されて収入を得ることができません(このあたり、医療機関的には言いたいことは多数あるはずですが、今回はやめておきますね)。

この健保連は働く人たちが支払う保険料で運営されていますので、立ち位置としては被保険者である患者さん側だと思っていたら⋯健保連のサイトにこんな記載があります。

正しい知識を身につけて「かしこい患者」になりましょう

これ一瞬目を疑いました(健保連 かしこい患者になるための基礎知識)。医療機関として患者さんはお客様ではあります。しかし、へりくだって「f患者様」と呼ぶのことは当院では行なっていません、当院では「患者さん」と呼んでいます。

患者さんに対して「あなたはかしこい患者さんですね」とか「そんなことやっていたら賢い患者さんでは無いですよ」なんてことは常識的に言うわけありません。

なぜ、健保連は保険料を支払ってくれている被保険者に対して「かしこい患者」になりなさい❗なんてことを啓蒙しているのか不思議なんです。

国の財政を圧迫している医療費、健保連の考え方はこんなです

少子高齢化や高度医療によって国の医療費は破綻寸前であると報道されています。日本経済新聞によれば健保連の4分の1は2015年には財政悪化によって解散⋯破綻ってことと理解して間違いなさそうです。

大企業健保、25年までに4分の1解散危機

解散を避けるためには医療機関へ支払う診療報酬を下げ、被保険者からの保険料をアップさせるしか対策はなさそうです。

そこで医療機関へ支払われている医療費の無駄使いを避けるために被保険者(健保連にとってはお客様だと思うんだけど)向けに「かしこい患者になるための基礎知識」ってことを言いだしたと思われます。その詳細は以下のの3点で構成されています。

  1. はしご受診
  2. コンビニ受診
  3. 時間外受診

はしご受診、ってなんだ?

健保連のサイトで「はしご受診」との用語を初めて知ったのですが、それはこんなことらしいです。

同じ病気で複数の医療機関を転々と渡り歩く「はしご受診」。行く先々で同じ検査を受けるのは医療費の「ムダ」ですし、薬の重複による副作用などの危険もあります。どうしても医療機関を変更したい場合には、医師に「紹介状」をもらってから転院を。

ある病気に罹っていて、なかなか健康が取り戻せない、あるいは医師とうまくコミニケーションが取れない、あるいは医師の態度が気にくわない、あるいは待ち時間が長すぎるなどなど多数の理由が考えらます。ここにも記載されていますが、複数の医療機関で似たような検査を行なっていることは多々経験しています。

そんな時は「他のクリニックで検査したのなら、その結果を持参して」と伝えれば済むことなんじゃないでしょうか

実際に私はそのように対応しています。薬の重複に関しては例のお薬手帳が有効活用されれば対応可能です。→参考:「お薬手帳を断ろう!」という動きは当然です、本来の機能を果たしていないんですから!

患者さんが「はしご受診」する理由の1つとして、医師とコミニケーションがうまく取れない、があると考えます。

コミニケーションが取れない医師に対して「他の医療機関に変えたいので、紹介状を書いてくれませんか?」って言い出せないよ

多分、普通は。

多くの患者さんは理由を述べないで、ひっそりと他の医療機関を受診するはずです。現時点で通院している医療機関に不満がある、あるいは疑問がある場合はセカンドオピニオンを利用するべきですし、この方が現実的だと思います。

今のご時世、どんな医師だって「セカンドオピニオンを受けたいので、診療情報提供書を作成してくれますか」と申し出たら断ることはないはずです。まあ、時々セカンドオピニオンの意味をご存知ない患者さんもいますが、それこそ健保連のサイトで啓蒙すればいいだけじゃん。

セカンドオピニオンの受診料は健康保険でカバーされませんので、健保連の懐は痛みません。セカンドオピニオンの料金は全額自費となる点で患者さんの負担は増えますけど。

コンビニ受診、これは確かに問題です、医療サイド的には

自分の都合に合わせて医療機関を受診する、これを健保連は「コンビニ受診」と伝えています。

急病でもないのに時間外や深夜、休日に受診するコンビニ受診。単に「用事があるから」「都合がいいから」と診療時間外に受診するのは、割増料金ばかりでなく、救急医療の妨げにも。こういう「ムダ」は避けましょう。

時間外や深夜あるいは休日に医療機関を受診すると、加算料が追加されて請求されます。患者さんの窓口支払いの負担も増えますし、当然健保連が医療機関に対して支払う診療報酬も増加します。

コンビニ受診(この用語も健保連サイトで初めて知りました)の問題点を医師側から申しますと医療機関の疲弊を招く点です

時間外や深夜・祝日に対応しているのは医師会が運営する休日診療所(開業医が当番制で回しています)や大病院の救急外来です。医師の労働時間って以前は全く無視されて、労働基準監督署が介入したら、ほとんどの病院が指導及びペナルティーが課せられる状態でした。

勤務医特に若い医師の過重労働・酷使の実態が明らかになりつつあり、医師の労働時間が少なくとも表面上は規制する動きが強くなっています。

クッタクタになった状態でコンビニ受診すると、当然医療ミスも起きる可能性が大きくなりますし、大した病気でもないのに深夜に叩き起こされた医師の対応も悪くなることも考えらえます。ER的な職場についた医師が主人公となったテレビドラマがありますが、情熱溢れて急患対応の現場に就職した医師の多くが現実とのギャップの大きさに悩まされて、職場を去ることになります。

医療機関には応召義務があり、来院した患者さんを正当な理由なく診療を拒むことは禁じられています。

コンビニ受診なのか、本当に急を要する状態なのかの選別をすることが健保連の対応策だと思われます。東京都の場合、「救急受診ガイド」というサイトがあり、すぐに救急車を呼ぶべきか、あるいは今すぐ医療機関を受診するべき症状かを教えてくれるサービスがありますので、このようなサイトあるいは電話サービスを健保連は開始してはいかがでしょうか?

「救急受診ガイド」というサイトがあり、すぐに救急車を呼ぶべきか、あるいは今すぐ医療機関を受診するべき症状かを教えてくれるサービス

http://www.tfd.metro.tokyo.jp/hp-kyuuimuka/guide/main/index.html

時間外受診、これってコンビニ受診の項目とダブっているような⋯

深夜に受診する場合、休日に受診する場合、そして時間外に受診する場合、これらの受診料は細かく分かれています。

画像

全国健康保険協会サイト「医療機関のかかり方で上手に節約 

「協会けんぽ」という団体は健保連とは別ものです。

健保連の「かしこい患者」では時間外受診についてこのように書いています。

医療機関が表示する診療時間以外に受診すると、原則として通常の診療費用のほかに、「時間外加算」が請求されてしまいます。

この時間外受診の件は前掲のコンビニ受診の項で述べられていることと同じなんじゃないの?

医療機関の診療時間終了後の受診、お店の場合だったらシャッター下ろした後のお客さんの対応と同じかな?

お店の場合、時間外だからと定価に加算して料金を頂くことはありえないけど、医療機関の場合は「時間外加算が請求されてしまいます」⋯この表現、なんとなーく風俗とかの延長料金いただきます的な意味合いに感じてしまうのは自分だけでしょうか?

医療機関は診療時間を明記して、それを管轄保健所に届け出る必要があり、電子カルテを使用している医療機関だと自動的に加算される仕組みになっているので、各医療機関ごとの対応、例えば「時間外だけど、今日はおまけしておくね」なんてことは不可能です。

これはどう見ても解決方法が無いかも

国の財政、健康保険組合の破綻を招く高騰する一方の医療費です。これをいかに削減するかは大問題なんで、無駄な医療費を無くすことは大いに賛成です。例えば先日「ヒルドイド」という処方薬の塗り薬の適応外使用についてブログを書きました。

怒号飛び交う「ヒルドイド逆ギレおばさん」?どうして処方してくれないのよ❗?

怒号飛び交う「ヒルドイド逆ギレおばさん」?どうして処方してくれないのよ❗?

医療用保湿剤「ヒルドイド(成分名:ヘパリン類似物質)」を美容目的で使う人が急増し社会問題化しましたが五本木クリニックでも「わたしは客よ、出しなさいよ」的な勘違い女性に突撃されました。なんと子供を使った悪質なケースもありましたので紹介します。患者さんはお客様ではありません!美容目的のヒルドイド処方は不正行為です。

極端な考え方かもしれませんが、軽症一部の病気に対しては健康保険の取り扱いを止めるなんてアイディアはいかがでしょうか?また、マイナンバー制度を活用して保険証に今までの治療歴を入れ込むなんて方法で無駄な検査や重複する薬を排除することも可能になると思います。さらに海外では取り入れている国もありますが、スーパーなどで簡単な検査や診察(診断じゃ無いけど)を医師以外に任せる、なんて方法もありえます。

医師は既得権を守ろうとする巨大な利権組織ガー、なんて考え方をする人も多数ですが、お金を支払ってくれる健保連等が解散・破綻したら医業自体が成り立たなくなってしまいます。

追伸:健保連さま、STDが疑われる尿道炎の患者さんに対して淋菌及びクラミジア・トラコマチス同時核酸検出と細菌培養を同時に行うと、なぜレセプトが返戻されちゃうのでしょうか?原因微生物を確実に把握することで、適正な抗菌剤等の処方が可能になりますし、耐性菌の増加も防げるので、確実に医療費は削減できると思うのですけど。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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