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悲劇❗開業3ヶ月目で水疱瘡に感染、死の恐怖と倒産の恐怖に怯えたあの時。

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今から20年前の1997年2月に私はクリニックを開業しました。

自分の勤務していた病院の近くでもなく、土地勘もない場所、さらに駅からもちょっと遠く離れた場所での開業ですから、患者さんも本当にボチボチしか来院しないような状況でした。

家に帰るとまだ幼稚園に入っていない子供が「今日は何人だった?」と尋ねられるのが辛い日々。

そんな不安定なスタートを切った開業医生活でしたが、やっと1日に10数人患者さんが来院し出した、開業3ヶ月目に水疱瘡に感染してしまいました。

開業3ヶ月目に水疱瘡に感染してしまった私、死の恐怖と倒産に怯えた1週間

慣れない開業医生活、開業準備による疲労、資金繰り、初めて開業資金として銀行から借り入れをして、その返済のプレッシャーなど身も心もクッタクタだったことが原因となって水疱瘡になったようです。

最初、なんだか熱っぽいなから始まり、関節痛、特に腰の痛みを感じて体温計で測って見たら39度以上ありました。風邪を移されたのかな、って考えていたら翌日には体中に赤い発疹が出だしました。この時点ではまだ水疱瘡に感染したとは思いもしませんでした。その翌日は日曜日で、朝起きたら高熱と昨日出現した発疹が水ぶくれになっています。

そういえば先週、水疱瘡に感染した患者さんを診たっけ、こりゃ水疱瘡に間違いないと考えましたが、念のために母親に電話して「私って水疱瘡なったっけ?」「学校で流行ったことがあったけど、あなたは幸い水疱瘡にならなかったのよ」と呑気な返事が返ってきました。

大人になって水疱瘡に罹患すると重症化(肺炎になる確率は子供の20倍❗)しやすく、下手すりゃ死亡ってこともありえます。もちろん完治するまで、クリニックは休診です。死の恐怖とクリニック倒産なんてことに怯えながらの1週間、これまでの人生最大の危機に直面してしまったのです。万が一、死亡した場合、妻と幼子を残して、さらに開業資金の膨大な負債を残してしまいます。路頭に迷う妻子が脳裏に浮かびました。

成人の水疱瘡は稀、でも重症化しやすいし、最悪死亡ってことも

当時は今ほどネットが充実していなかったので、教科書を開いてみると大人の水疱瘡は肺炎などの合併症を起こしやすく重症化して、死亡率は10万人に30人程度と書かれていた記憶があります。

10万人に30人って必ずしも多い頻度ではありませんが稀とは言えません、開業3ヶ月目、膨大な借金、さらに妻と幼子がいての状況だと、普段はポジティブな私でさえ高熱で苦しみながら、どうしても最悪な考えになるのは致し方ないことだと思います。当時はバルトレックスがまだ販売されていませんでしたので、クリニックのスタッフに在庫のゾビラックスを持ってきてもらい、解熱剤と一緒に飲み続けました。

肺炎を起こしていないか自分で聴診器を胸にあて、2時間ごとにチェック。もちろん検温も2時間ごと。しょっちゅ聴診しても検温しても、病状の回復が早くなるわけないのに、こんな思考回路になってしまうんですよ、崖っぷちだと。

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成人しても水疱瘡になって入院した人です。重症化することが多いので、子供の入院と比較してもそれなりの数になっています。予防接種を受けることをお勧めいたします。

クリニックを休診にしたら運転資金が回らなくなり倒産の恐怖

余裕のある資金で開業した訳ではなく、もちろん貯金はすっからかん。1週間休診したら、月あたり単純計算で25パーセントの収入減になります。開業したてで、固定した患者さんも少ないですし、再診で来院したらいきなり休診の状態だと、間違いなく患者さんからの信用を落としてしまいます。

もちろん、今後固定患者さんになり得る新規の患者さんも失います。たった1週間程度の休診でも、今から患者さんの数を増やしていかなければならない時期では、当然後々の増患は難しくなってきます。薬の仕入れ代、テナントの家賃、従業員への給与の支払い、銀行への返済、そして家族の生活費。

私は死の恐怖より、倒産の恐怖の方が強くなってきました。

やっと回復してクリニックを再開

土日2回に挟まれた1週間の休診、述べ11日間の闘病生活の後、診療を再開しました。ボチボチ訪れる患者さんには正直に水疱瘡になっちゃって休診にしたことを伝えました。「あら、先生でも病気になるのね」「わっ、先生って子供みたい」なんて声をかけていただきました。スタッフからは「院長、今月の給与の支払い後回しでいいですよ」とも言われて涙が出そうでした。

これから開業を考えている医師の人にこれだけは伝えたい

医師は健康であって初めて的確な診断が行えます。ご自分が病気になって休診という事態が発生すると患者さんやスタッフに迷惑がかかります。休診になると当然収入が減ります。開業前はとにかく忙しいので、予想以上に肉体的精神的に疲労が溜まっていますので、今まで気づかなかった病気が発症することもあります。

開業前に行っておきたいチェックポイントは以下になります。

  • いくら忙しくても健康管理は今まで以上に気をつけましょう。
  • 開業にあたりたっぷりの運転資金と生活費を用意しましょう、カツカツだと精神的にまいります。
  • あらゆる予防接種を事前に受けましょう。
  • 休業補償制度には必ず加入しましょう。

おまけ:昨日水疱瘡の予防接種は任意、ってツイートしてしまいました。平成26年10月より、水痘ワクチンは定期予防接種になっています。妊婦さんが水疱瘡に罹患すると、生まれてきた赤ちゃんの17ー30パーセントが重症化して、致死率が20ー30パーセントにもなってしまいます(横浜市衛生研究所)。

水疱瘡になってカサブタを取ってしまうと凹んだ痕になります。私もいくつか痕になってしまったのですが、当院のフラクショナルレーザーで一個だけ残して消してしまいました。一個だけわざと残した理由は、人生って思わぬところに落とし穴があるということを忘れないためです。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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