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昔はインフルエンザの予防接種って集団接種だったよね?

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以前から感染症のワクチンって自分を守るだけじゃなくて、体質的な理由などでワクチン接種できない人に感染症が移らないという面もあるんだよ、と伝えてきました。

集団でワクチン接種はこれだけ効果的❗

予防接種は

  1. 個人の健康のため
  2. 集団の健康のため

の二つの目的があるのです。以前は2の集団の健康のために、学校で予防接種の集団接種が行われていたことをご記憶の方も多いと思います。副反応問題に関して特に重篤な後遺症が残ってしまったために国に損害賠償を求める訴訟が増えたことにより、国側が弱気になったため、強制的な集団接種は行われなくなりました。

先日のハフィントンポストに

インフルエンザ大流行。日本から失われた「集団免疫」とは?

という非常に興味深い、下手すりゃ反ワクチン派が猛攻撃してくるような良記事が掲載されています。

この中で都内のある小学校の24年間に渡る調査結果が紹介されています。この小学校は超有名私立学校であり、女性誌等が「芸能人の誰々の子供がお受験」とか「あのスポーツ選手の息子が合格」とか、どうでもいいゴシップで取り上げられることが多いです。

実はこの有名私立小学校、健康面のデータ蓄積に以前から力を入れており、関連大学の医学部併設の健康管理センター(?)でデータの解析を行なっていました。そこで研究された医学論文がハフィントンポストで提示されたデータです。論文は「Influenza Vaccination of Schoolchildren and Influenza Outbreaks in a School」というタイトルでネット上、どなたでもご覧になれます → https://academic.oup.com

当院の周辺からこの小学校に通学している小学生が多くいるため、この記事と論文を読んで「ああ、あそこね」ってわかりました。

セレブの子供が通う小学校だから、予防接種率が高いわけじゃない

実はお金持ちが多いから、予防接種の費用負担が重圧にならない、だからこの小学校はインフルエンザの接種率が高く、学級閉鎖も少ないことにはなっていません。

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前掲のハフィントンポストの図を見てみる、強制接種が行われた時代と比較して任意になった1995年から1999年の間は学級閉鎖の期間がその前後の時期より誰が見ても長くなっています。

ここの小学校は関連する医学部から医師が派遣され常駐している恵まれて環境なのですけど、やはりインフルエンザの予防接種を受けるような指導が始まった時期から任意接種率が高くなるとともに、学級閉鎖日数が激減しています。保護者会の初めの方で必ず生徒の健康について校医(論文中にもその名前は書かれています)が長々と解説をするとの話を聞いています。

集団接種、任意接種、定期接種の違いは?

予防接種は国の法律でその運用が定められ各自治体が行なっています。定期接種と任意接種の大きな違いは費用を行政が負担するか、しないか。

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ワクチン.netというサイトにわかりやすい表がありました。

もっと分かりやすく言えば

定期接種は無料で任意接種は有料

ってことです。例えば季節性インフルエンザ(普通、インフルエンザワクチン接種と呼んでいるやつ)は有料、つまり自己負担する必要があります。高齢者の場合、自治体によって補助金(助成金?)が出るには出ますけど、やっぱり自己負担0円にはなっていません。探せばあるのでしょうけど、子供に対するインフルエンザの予防接種はほとんどが自己負担100パーセント。これじゃあ、集団接種による感染の流行を抑制することは不可能ですね。

予防接種が安く受けられるのは1月31日まで、なんでだ?

あと、現時点でもインフルエンザのさらなる流行が懸念されています。昨年はインフルエンザワクチン不足が報道されました。昨年末になってやっと流通が通年の状態に戻りました。このワクチン不足の影響を受けて、インフルエンザワクチン接種を希望していても、受けられなかった方多数。年明けに予防接種をしようと思っていても、医療機関はインフルエンザ患者さんで溢れかえっているので感染が心配、じゃあ2月に入って予防接種を受けようと思うと⋯自治体のワクチン補助の期間は無情にも1月31日で終了となっています。

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これ横浜市のもの、当院がある目黒区はページが既に削除されている。

行政側が本気でインフルエンザの流行を抑えようと考えているのなら、もう少しフレキシブルに制度を運用する必要があるでしょうし、インフルエンザワクチン接種を定期接種にできないの?なんて考えてしまいます。

集団接種の問題点

誰でも一律に無料で受けられる定期接種、それを受ける側の利便性と接種する医療サイドの利便性を考えるとなんでインフルエンザワクチンは定期接種や集団接種にならないのか、不思議でしかたありません。

ある集団において、一定の割合の人が予防接種を受けるとその集団で感染症は大流行しないと考えられています。体質の問題等で予防接種を受けられない人も周囲の人が予防接種を受けることによって、感染する可能性が低くなります。ワクチン接種は危険、危険との騒いでいる人たちがいることは知られています。この方達は本当にワクチンが危険だと考えるのなら、安全なワクチン開発等を支援する方がよろしいのではないでしょうか?気をつけなければならない注意点として、非科学的な思考回路にズッポリはまり込んで、医学的根拠なく「ワクチン反対ーい❗」と言っている人たちの中には、インフルエンザを防ぐと称するグッズや健康法(もちろん医学的根拠なし)へ誘導しようとの目論見がミエミエの連中がいます。気をつけましょう❗

こんなヘンテコな意見の人もいますから → 無責任にもほどがある❗「はしか、水ぼうそう、おたふく風邪はかかったほうがいい」とフードプロデューサー。

おまけ:C型肝炎は集団接種が原因と考えられています。しかし、当時は注射器や針の使い回しが横行していました。いまでは個々の注射器も針も使い捨てのディスポを使用しています。集団接種が集団感染の原因には現在ではなりえません。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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