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体に良いと思われているお茶、実はお茶が原因で食道がんのリスクが高くなるという論文を検証します!

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お茶は日本人にとって健康に良い国民的飲料という認識でしょう。

健康長寿がよく飲むお茶として緑茶・麦茶・ほうじ茶がよく挙げられます。

とはいえ、カフェインの多さが問題になることもあります。カフェインレスな緑茶も出てきていますね。今回はお茶が原因で食道がんのリスクが高くなるという論文について検証していきます。

お茶って体にいいんじゃなかったっけ?

コーヒーを1日何杯か飲むと死亡リスクが減少するとか、お茶を飲みすぎるとカテキンの作用によって肝機能障害が起きちゃうとか、とかく身近な飲み物にまつわる健康話が毎日のようにメディアに取り上げられています。

私もコーヒーについてはこんなことを書きました。

日本人はコーヒー1日3〜4杯で死亡リスクが24パーセントも低下する❗

日本人はコーヒー1日3〜4杯で死亡リスクが24パーセントも低下する❗

コーヒーは健康に良いとされることもあれば悪者扱いされることも。わたしたち日本人に限定して、コーヒーを1日3〜4杯飲むと死亡リスクが低下するよというお話を取り上げます。この手の話は海外の論文や研究をベースにした海外の記事を素人が適当に翻訳(意訳)して日本でニュースになることが多く、信頼度が低いものがほとんどです。

お茶についてはこんなことも書きました。

ヘルシアで肝機能障害??カテキンに深刻な副作用は本当にあるの?

ヘルシアで肝機能障害??カテキンに深刻な副作用は本当にあるの?

トクホという不思議な分類に、医師としてはあまり好意を抱いてはいません。トクホの代表とも言える花王の「ヘルシア」によって肝機能障害が引き起こされて、さらにはヘルシア4本でマウスの75パーセントが死亡した!!という記事を見つけて「いくらなんでもそこまでは⋯」と考え、この記事が掲載されたサイトについて検証してみます

医学的な統計で重要なサンプルサイズがなんと456155人という驚きの調査が論文として、今年になって発表されたのです。それが飲酒や喫煙をする人が熱いお茶を飲むと食道がんになりやすいとの医学論文。まあ、スッゲー数の人を調査していることから、感の良い人はお気づきだと思いますが、中国の研究グループによるものです。元となった論文は「Hot Tea Consumption and the Risk for Esophageal Cancer」(Ann Intern Med. 2018 Apr 3;168 (7) .) です。

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この研究ではこんなことになっちゃっているようです。

タバコを吸う人が熱いお茶を飲むと食道がんになりやすい、との論文の詳細はこれ

対象となった人は30才から79才の中国人45万6155人。9年以上この人たちを追いかけた前向きの研究なので、医療統計的には信頼度は決して低くないものとお考えください(とりあえずは)。この調査期間約9年ちょっとの間に食道がんになった人は1731人でした。それを表したのが前掲のグラフです。

この研究の驚くべき点はお茶もお酒も飲まない人と比較して熱いお茶を好む人が食道がんになるリスクが5倍❗ということと喫煙者で熱いお茶を飲む人は食道がんのリスクが2倍になる❗との結論を導き出したことです。

つまりお茶+喫煙あるいは、お茶+飲酒は食道がんになりやすいということになります。

もともと喫煙と飲酒は食道がんのリスク因子じゃなかったっけ?

健康に良いと一般的に考えられているお茶。以前は私の専門である泌尿器科領域では緑茶がひょっとして前立腺がんのリスクを低下させているんじゃないの、なんてことも言われていました。中にはこんな派手なことを書いているお茶屋さんもあります。お茶の効能「ガンの予防に緑茶が効く」との見出しとともに

このところ、ガンの抑制に緑茶が一番有効であるといった研究発表が、立て続けに出されています。緑茶に含まれているポリフェノールとカテキンが細胞のガン化を予防し、あるいは緑茶に多く含まれるビタミン類が発ガン物質の作用を抑制するというものてす。一例を紹介しますと、静岡県立大学グループは緑茶のポリフェノール・カテキン類が発ガン物質の働きを場合によっては七、八割抑えることを確認。米国・ニュージャージー州ラトガーズ大のアラン・コニー博士は「発ガン物質と日本の緑茶を一緒に飲ませたマウスは、発ガン物質だけのグループに比べ、ガンの発生率が50%以下になる」という実験結果をまとめました。

お茶の福本園

ここまで書いちゃうと薬機法大丈夫か、なんて余計な心配しちゃうじゃないですかあ。

ところで今回のお茶と喫煙、あるいはお茶と飲酒が食道がんのリスクを高めるという話はどうも納得がいきません。

だってもともと飲酒や喫煙は食道がんの原因の一つと考えられているんだもん

例えば国立がん研究センターのがん情報サービスでも

食道がんの発生する主な要因は、喫煙と飲酒です。特に日本人に多い扁平上皮がんは、喫煙と飲酒との強い関連があります。飲酒により体内に生じるアセトアルデヒドは発がん性の物質であり、アセトアルデヒドの分解に関わる酵素の活性が生まれつき弱い人は、食道がんの発生する危険性が高まることが報告されています。

国立がん研究センター

としっかり書かれています。あれっ❗さらにこんなことも書かれているぞ❗

熱いものを飲んだりすると食道がんの危険性を高める

熱いものを飲んだりすると食道がんの危険性を高める

あの〜、中国の研究者の方々、せっかく50万人以上を9年以上に渡って調査したそうですが、日本でもっとも信頼できる医学健康情報を提供しているがん情報サービスではとっくにこのような見解を明記していたんですぜ。

お疲れ様の中国研究者のこの論文のこんなところが重要です

今回取り上げた研究、これ別にお茶じゃなくて、お湯でもよかったんじゃないでしょうか的な意見をお持ちの方も多いのではないでしょうか(っていうか私だけどね)。実はこの研究のポイントはお茶の温度なんです。対象となった人たちに好みのお茶の温度を「温かい」「熱い」「メチャ熱い」の三つから選択して貰っています。

その中で

「熱い」「メチャ熱い」を選択した人の中で飲酒や喫煙をしなかった人は食道がんのリスクが高くなっていません

とのことでしたが、一方で

飲酒や喫煙習慣がある人で「熱い」「メチャ熱い」を選択した人は食道がんのリスクが高くなっています

ってことは熱い飲み物によって食道がんのリスクが高まる上に、喫煙や飲酒をするとさらに発症リスクが高まる、と解釈することができますね。

食道がんになりたくなければ、禁煙・禁酒+温かい飲み物を選択しよう❗

医師にどんながんに罹りたくないですか、と質問した場合、間違いなく食道がんは上位に入るはずです(このブログをお読みの方で食道がんを患っている人もいるので詳細な理由は省略)。今回の中国の研究はお茶と喫煙、お茶と飲酒の組み合わせでしたが,お茶が健康に良いとしても喫煙や飲酒でその効果は無になる可能性を示唆しています。食道がんになりたくない人は今日からメチャ熱いお茶は止めましょう、もちろん喫煙は×。できれば飲酒も×。ちなみに私事ですが、あることがキッカケで3650日以上飲み続けてきたアサヒスーパードライ、5月からきっぱり止めております。だーれも褒めてくれないけどね。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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