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さようなら「機能性表示食品グルコサミン」さま、やっぱり効果が無かったのね。

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現政権が打ち出した日本の今後の戦略の一つとして「機能性表示食品」があります。巷にあふれかえる健康に良いと考えられている食品にお墨付きを与える制度です。一方でトクホと呼ばれる食品もあります。トクホの正式名は「特定保健用食品」。「機能性表示食品」と「特定保健用食品」、似ているようで違った分類が混乱している方も多いのではないでしょうか?

首相官邸主導の機能性表示食品が消えていく⁉

安倍首相が進めて来た成長戦略の一つとして健康食品に対する「機能性表示解禁」。首相官邸側は日本の戦略として世界に先駆けるぞ❗レベルの気合いで始まったものですが

機能性表示食品、どうもこれしりすぼみになる可能性が出て来ています

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http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2013/0605speech.html

薬でもない、トクホでもない、機能性表示食品ってどんなものかご存知でしょうか?

私がSNSでこの広告手法ってどうなのよ的に取り上げて来た山田農法場の「グルコサミン」、これは以前機能性表示食品と書かれていたような記憶があるのですが、現時点ではそのような表示はなくなっています。

グルコサミン界の雄とも言える「ぐるぐるぐるぐるグルコサミン」の世田谷自然食品のグルコサミン+コンドロイチンは以前から健康食品という位置付けで機能性表示食品とはなのっていませんでした。おんなじような成分なのに、方や普通の健康食品、方や物々しい名称のいかにも効果がありそうな機能性表示食品⋯この官邸主導で行われて来た成長戦略の一環である「機能性表示食品」はなぜどんな理由で密かに退場しているのでしょうか?

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サプリ方面の研究者の方々に同情してしまいます

身近な食材から有効成分を抽出して、悪さをする作用を取り除き体に良さそうな成分だけにして販売されるのが、本来ならば健康食品と大きなくくりで分類されるサプリメントだと考えられます。

サプリよりちょっとばかり効果・効能が明確であると考えられているのがトクホと呼ばれる特定保健用食品。さらに効果・効能・副作用・適用量が厳密に調査研究されたものが薬です。

なんとなーく薬を飲むのは嫌だけど、って考え方をする方に人気があるのがトクホ・機能性表示食品そしてサプリメントと考えられます

近年、医学ではエビデンスに基づいた医療であるEBM(Evidence Based Medicine) の重要性が叫ばれています(それだけ現実には根拠のないトンデモ医療が行われている)。その影響もあってか、トクホにしろ機能性表示食品しろサプリにしろ、一見医学データ風のグラフ等を入れ込んだ広告が目立ちます。

中には5人程度の方に服用してもらって「効果を実感」を大々的に喧伝しているものもあります

これなんか医学的な解析手法としてはダメダメ❗でも一般の方は白衣を来た研究者が「こんなに効果がありました❗」と言っていると効果・効能を信じてしまうのもしかたのないことです。

研究者からは「こりゃまだ商品化するのは早いです」「このデータだけじゃ効果を主張できません❗」との悲痛な叫びが出ているはずの、一見効果を示したように見えてしまうデータ、これを「早よ、製品化せんかい❗」との強硬な指示のによって、データをいじくりまわしてしまう研究者のジレンマに同情を感じえません。

グルコサミンは権威ある医学専門誌で効果なしと判定されました

さて、なんとなーく機能性表示食品と明記された健康食品の広告が少なくなっている理由ってなんでしょうか?関節痛等に効果がありそうな雰囲気を限りなく醸し出しているCMを打ちまくっているグルコサミンというサプリメントがあります。

私も家で階段の上り下り時に「イテテ」なんか言おうものなら、家族から「パパもグルコサミンかねえ」とからかわれること多し。

グルコサミンの成分や作用機序、そして効果効能は各自調べてくださいませ。グルコサミンに関しては非常に権威ある医学専門誌であるBMJ (イギリス医師会の雑誌である「British Medical Journal」の略)に2010年に、こんな論文が掲載されています。「Effects of glucosamine, chondroitin, or placebo in patients with osteoarthritis of hip or knee: network meta-analysis」(BMJ 2010; 341)。この論文は股関節・ひざ関節の痛みに対してグルコサミンやコンドロイチン、あるいは両者を組み合わせたサプリメントがこれらの症状を改善するかを世界中の論文を集めて解析したものです。

結論としてグルコサミン・コンドロイチンは関節痛を治さない❗という非情の結果になっています。

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こんな有名な論文があるのになぜ首相官邸は国家成長戦略の一つとして機能性表示食品を推進してきたのか不思議でしかたありません。さらに当然この論文をご存知であったと思われるサプリメント業界の研究者の苦悶をおもんばかると可哀相になってきてしまいました。

研究者やサプリメント会社の良心の呵責、あるいはどっかからの苦情によって機能性表示食品を表示しなくなったのかなあ⋯。

今後の健康食品業界の動きは⋯やっぱり右肩上がりかなあ?

普通の健康食品や機能性表示食品よりは審査も厳しく、お墨付きを得るには多大なデータと費用が必要な、大企業じゃないと取得は無理と思われるトクホでさえ、データを詳細に検討すると「研究者の方、無理しているなあ」と見ることもできる商品が含まれています。

前景のグラフからわかるように健康食品市場は右肩上がりと判断して差し支えない状況です。厳密に評価すれば確実な市場を抑えて、あとは業界同士のパイの取り合い。そうなるとどうしても「ああ、健康食品ね」という地位から「おっ、官邸主導の機能性表示食品じゃん」さらには「これはトクホだから効果あるんだよね」という流れになり、中小のサプリメント業界はトクホのお墨付きを得るための費用負担に苦しむことになります。そんな理由で安倍首相は機能性表示食品というカテゴリーを設けることによって、小さな会社でも頑張れば市場に強気で打って出られるよ、と解釈したのだと予想します。

しかし、機能性であろうとトクホであろうと、効果効能に関しては医薬品に敵うわけがありません。さらにその医薬品が保険診療で使える処方薬となったら売り上げはサプリメント系の比ではないはずです。首相官邸主導の機能性表示食品、どんどんこの表示を控える会社が出てきていることはあまり大メディアは取り上げていませんよね、そりゃそうですよ、メディアの収入源の大スポンサーなんですから。

先日、信頼度の高いメディアを調査したデータを見かけました。それによると信頼度はテレビ>ネット>新聞の順になっていました。新聞の報道姿勢に対して様々な意見が出ています、信頼度に関しても問題が提起されています。

私としては

ヘンテコリンなサプリメント会社の広告の出稿量がメディアの信頼度の指標の一つになる?

なんてことを一瞬考えましたが、某サプリメーカーの偉い人から伺った話によると「新聞やテレビで名前を知ってもらい、折り込み広告で最終的に顧客をゲットするのが通販業界の王道」らしいです。

このブログをお読みになったあなた、もし、家族がしげしげと折り込み広告を眺めていたら、「ちょっとネットでこの会社のサプリの研究データを見てみようよ」とアドバイスしてください。なかにはある程度の効果があると判断できるものもあるはずですし、研究者の方の本意ではないご苦労を知ることもできます。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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