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目黒区で細菌性赤痢が集団発生❗赤痢の症状や重症化の可能性、そして予防方法に関しての情報です。

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目黒区で細菌性赤痢が集団発生したことを受けまして、一般の方に知っておいていただきたい赤痢に関する基本的な知識・予防方法についての情報をまとめました。まず、赤痢は治療方法はきちんと確立されていますのでご安心ください。

目黒区保育園で細菌性赤痢が集団発生、この詳細

昼休みに医師会からファックスが届きました。そこには目黒区内で細菌性赤痢が発生いたしましたとの文言と目黒区が報道発表資料としたプレスリリースが添えられていました。細菌性赤痢❗と多くの開業医が驚いたと思います。細菌性赤痢なんて過去の感染症と少なくとも私は捉えていました。

風疹やインフルエンザの流行拡大が叫ばれている昨今、そこに細菌性赤痢が蔓延したらそれこそパニックになる、と考え早速ツイートをしました(赤痢って細菌性とアメーバ性がありますことは後述)。

私が「赤痢が目黒区で集団発生しました」とツイートしたところ、瞬時にして拡散し、多くのご質問をいただきました。

一つ一つのご質問にお答えすることが難しいので「赤痢」に関してブログとしてまとめましたので、お読みいただけたら幸いに存じます。

目黒区内の赤痢の発生日

目黒区内の保育園に通園している園児が下痢と血便で医療機関を受診して10月12日金曜日に細菌性赤痢と診断され、目黒保健所に発生届が出されました。

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TBS NEWSより

赤痢と確定診断する上で便の培養検査が必要となり、結果が出るには開業医の場合は数日かかります。この園児の発症した具体的な日付は10月12日と報道もありますが、確定的では現時点ではありません。

集団感染した人数

10月23日現在(園児の感染が確認されてから10日以上経過)、目黒区で赤痢と判明している感染者は園児20名、職員1名。

感染した方の病状

園児のうち2名が入院しましたが幸いにも重症ではありませんでした。なお、調理に関わっていた方からは感染者は出ていません。

以上の詳細は目黒区役所「目黒区内保育園における細菌性赤痢の集団発生について(平成30年10月23日)」をご覧ください。

赤痢とは

赤痢と聞いて過去の病気、結核や梅毒のように捉えている方も多いようです。ここ数年結核も新規の感染者が多く確認されていますし、梅毒に至っては右肩上がりで患者さんが増えています。

赤痢の種類

赤痢には原虫が病原体となるアメーバ赤痢と赤痢菌による細菌性赤痢があります

細菌性赤痢

細菌性赤痢の感染源はズバリ人間です。細菌性赤痢に感染した患者さんや症状が出ていない保菌者の便や便が付着する手で触った食品からも感染します。園児の場合、自分でトイレをした後の手に赤痢菌が付着して、その手で遊具等を触り、それを触った他の園児がその手を口に入れる、あるいは飲食することによって集団感染したことが予想されます。1960年代までは下水施設が普及していなかったことや、衛生環境に対する関心が低かったことのより、多数の細菌性赤痢感染者が報告されています。

2000年以降も細菌性赤痢は報告されていま

IDWR 2012年第25号<速報>細菌性赤痢より

2000年以降も細菌性赤痢は報告されています。

アメーバ赤痢

アメーバ赤痢は赤痢アメーバと呼ばれる原虫が病原体となって発症する、現在では発展途上国に多く見られる感染症です。日本では関係ないや、と思われがちなアメーバ赤痢ですが、実は2006年753名の感染が確認されています。

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国立感染症研究「アメーバ赤痢」http://idsc.nih.go.jp/disease/En-histolytica/sokuho0744.html

赤痢はコレラとは違います

ツイッターを見ると赤痢とコレラを同じものだと捉えている人が見受けられました。コレラも赤痢と同じように細菌による感染症です。赤痢菌とコレラ菌の違いはあっても、症状は似たような激しい下痢を伴います。潜伏期間は赤痢より短く1日以内のことが多いです。驚くべきは下痢の量で国立感染症研究所のコレラの項目には数十ℓにもなるようです。東京都感染症情報センターによれば2009年に16例の報告があります。感染源は全症例が海外の開発途上国への旅行あるいは滞在中に感染したとされています。赤痢とコレラの鑑別診断は培養検査によって行われます。目黒の集団感染はコレラではなく、赤痢です。

過去の赤痢集団発生の状況

細菌性赤痢なんて下水道の普及と衛生観念の発達によって、過去のものと考えている医師も少なからずいます。調べてみると近年も細菌性赤痢の集団発生は報告されています。

赤痢の歴史⋯以前は猛威をふるっていた

国立感染症研究所のサイトによると

わが国の赤痢患者数は、戦後しばらくは10万人を超え、2万人近くもの死者をみたが、1965 年半ば頃から激減し、1974 年には2,000人を割り、以降1,000人前後で推移している。

細菌性赤痢とは

過去には年間2万人が細菌性赤痢で亡くなった方がいたのです。抗生物質を使用した治療方法の確立により近年では死亡者は減少しています。

国内における最近の細菌性赤痢集団感染例

2012年3月2日大阪府枚方の保育園で細菌性赤痢の集団発生が報告されていて、19名の感染が確認されています(IASR Vol. 33 p. 245-247: 2012年9月号)。

2014年10月5日からの北九州の幼稚園で細菌性赤痢の集団感染が報告されています。17名が細菌性赤痢と確定診断され10月25日の感染例を最後に終息しています(IASR Vol. 38 p.103-104: 2017年5月号)。

2017年9月21日に佐賀市内で細菌性赤痢の集団発生が報告されています。この集団発生はフィリピンに滞在していた園児が下痢の症状で医療機関を受診して9月21日に赤痢菌が確認されました。症状が出たのが9月14日、医療機関を受診したのが9月18日、検便を実施したのが9月19日との経過が目黒区のプレスリリースより詳細に発表されています。その後感染は拡大し、最終的には2名の感染が確認されています。※同一感染経路で2名以上感染した場合を集団発生と定義しています。

2018年10月10日に山梨県の宿泊施設でも集団発生が報告されています。

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山梨県 食中毒の発生について 記者発表資料

予想外に細菌性赤痢の集団感染は全国で発生しているのです。

細菌性赤痢の感染経路

細菌性赤痢は先ほども述べたように感染者の便を介して感染が拡大します。また、便に接触したハエからも感染が広がることもあります。細菌性赤痢は少量の赤痢菌でも感染が確立するので、注意が必要です。

料理する人の手指

目黒の集団感染では幸い調理に関わった方からは赤痢菌は検出されていません。発展途上国の場合は衛生面に問題がある場合が多いために、生ものは避けましょうとアドバイスされるのも、細菌性赤痢の感染経路が調理をする人の手指であるためとお考えください。

オムツ

便に原因菌が潜んでいますので、オムツの処理をした後はしっかり消毒する必要があります。

プール等

池や塩素消毒していないプールの水から感染する場合もあります。

赤痢の病状と予後

一番気になるのが感染した場合の初期症状だと思われます。

赤痢の症状

潜伏期間 1ー4日です。

症状 お腹の痛み、急に便意をもよおすに始まり、下痢症状が酷くなり粘液性の下痢や膿が混じった下痢、そして血液を含む下痢症状が出ます。発熱は必ずしも認められない場合も成人では見られます。

詳しくは以前はメルクマニュアルと呼ばれていたMSDマニュアルの信頼度が高いと判断します。

赤痢の死亡率

近年では抗生物質を使用した治療法が普及されていますので、脱水や電解質異常による重症化に気をつけることで死亡率は減少しており、最近の感染例では死亡例は報告されていません(IDWR 2012年第25号<速報>細菌性赤痢 より)

赤痢の治療方法

抗菌薬を中心とした治療方法が確立されていますので、まずはご安心ください。

赤痢に感染した大人の治療方法

下痢止めは積極的には使用しません(脱水症状が激しい場合は医師が判断します)。対症療法的に整腸剤を使用しながら、ニューキノロン系特にフルオロキノロン系の抗菌剤を投与します。脱水や電解質異常は重症化につながりますので、必要に応じて補水や電解質の調整目的で点滴をする場合があります。

発熱に関してはアセトアミノフェンが使用されています。

赤痢に感染した子供の治療方法

下痢に対する治療は成人と同じです。抗菌剤は子供の場合、安全性が確認されているニューキノロン系は少ないために、バクシダール(ノルフロキサシン)が使われているようですが、ホスミシン(ホスホマイシン)の方が安全性の面では安心です。

赤痢の予防方法

残念ながら細菌性であろうとアメーバ性であろうと予防接種、いわゆるワクチンはありません。細菌性赤痢の予防方法は感染経路を阻止することです。上下水道の整備されている日本の場合は、感染症予防の基本中の基本である正しい手洗いを行うことが予防方法としては有力です。

感染症予防のための正しい手洗い方法

石鹸と流水を使用して正しい手洗いを行いましょう。

  1. 爪は短く切っておきましょう
  2. 手を洗う前には時計や指輪は外しましょう
  3. 手のひらや指の腹の部分をしっかり洗浄
  4. 手の甲や指の背部もしっかり洗浄
  5. 指の間、付け根もしっかり洗浄
  6. 指先もしっかり洗浄
  7. 最後に手首も洗いましょう

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厚生労働省「手洗い手順リーフレット」より

子供の場合の手洗い方法

現実問題として上記のような手洗いを小さなお子さんに実行してもらうのは難易度が高いです。アルコールを含む消毒剤等を使用したり、市販の手指消毒剤を使って保護者が手伝ってあげてください。

イラストはインフルエンザの予防方法として書かれたものですです。しかし、感染症予防のための手洗いに関しては同様とお考えください。

医療機関を受診する方へのお願い

今回、当院が開業している目黒区でおきた細菌性赤痢の集団発生。地元密着型のこじんまりしたクリニックを営む私としては、集団感染のプレスリリースをツイートしただけでは、人の役に立つのはごくごく微力と思い、自分なりに赤痢に関して正しい医学情報をお伝えいたしました。

もし自分や家族が赤痢の症状と似ている、と思われた方で医療機関を受診する場合は前もって電話でその旨をお伝えください。医療機関内には重い持病をお持ちに方や乳幼児もいます。細菌性赤痢の原因菌は少量でも感染力が強いのでご協力をお願いいたします。

明日は木曜日で医療機関が休診のところも多いですし、週末が近づいて不安に感じている方も多いと思いますので、追加情報がありましたら追記させていただきます。

追記:どこの保育園なの?とのご質問があります。集団発生した保育園は特定されていますが、様々な問題が発生する可能性がありますので、区等の行政が公式的に発表しない限りは私はお伝えいたしません。

追記:なせ人騒がせなツイートをしたか、とお叱りもあったようです。麻疹に始まり今風疹、そしてインフルエンザが流行してきました。これらを予防する基本はワクチン接種です。細菌性赤痢の場合はワクチンは存在しませんので、各自の手洗いやトイレ使用時に気をつけることである程度の感染拡大は防げると考えました。また、目黒区、目黒保健所、そして目黒医師会が例外とも言えるプレスリリースの発表と医師会会員あてのファックス通知、これは目黒で感染を押さえ込もうとの意気込みだと判断し、目黒区医師会の地域医療公衆衛生委員である私が感染情報をツイートいたしました。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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