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若返りしたい方に大人気の再生医療の罠・闇を暴きます(幹細胞編)

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幹細胞、幹細胞と騒いでいる美容家と称する人が見受けられます。幹細胞と聞くと最先端の医療との印象を受けますよね。

目新しいもの好きの美容皮膚科医は当然のごとく幹細胞による若返り効果に注目しています。

ところで皆さんは幹細胞ってどんなものか知っていますか?

特に女性誌に登場するような自称他称美容家の方々って本当に幹細胞のことを理解しているのだろうか、と常々疑問を感じています。幹細胞の定義は自己複製と分化の二つの性質を持っている細胞であり、幹細胞の種類は造血幹細胞・神経幹細胞・間葉系幹細胞・ES細胞・ iPS細胞として医学的・科学的には認識されています。

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厚生労働省「ヒト幹細胞の定義

2012年10月8日に山中伸弥iPS細胞研究所長がノーベル賞を受賞したことによって、多くの一般の方が再生医療という医療の新分野に興味を持つことにより、iPS細胞をはじめとした幹細胞というキーワードが広く知れ渡ることになりました。

どの業界でも新し物好きはいますし、私も新し物好きではあっても、医学分野において新規の治療を無責任に行うことはありません。以前、幹細胞美容液というトンデモ化粧品を批判するブログを書きました。これは化粧品業界の話ですけど、美容皮膚科で再生医療を行なっているクリニックがあるようですが、「幹細胞を使って肌の若返りを❗」なんて、厚生労働省が承認することは現時点であり得ない治療なのです

治療している医師も幹細胞とはどのようなものかを知らない場合はかなり怖いことになりますね。

ワタナベ薫さんが受けた美容医療「幹細胞で皮膚を若返らせる」は疑問だらけ❗

ワタナベ薫さんが受けた美容医療「幹細胞で皮膚を若返らせる」は疑問だらけ❗

幹細胞で皮膚を若返らせるというフレーズを鵜呑みにしてはいけません。もっともらしいですがニセ医学です。幹細胞には、胚性幹細胞(ES細胞)、成体幹細胞、iPS細胞などに分類されます。ざっくりと幹細胞と言われても具体的ではありません。美容の世界でなぜ幹細胞というワードが多用されるのか?なぜ効果ないといえるのか解説しましょう。

多分、この美容家兼作家さんの場合は幹細胞という定義をご存じなく、ご自分が受けている治療方法を「幹細胞による美肌治療」と勘違いされているとは思います。

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https://learn.genetics.utah.edu/content/stemcells/quickref/
 

これは 体性幹細胞の可能性を図にしたものです。近年は間葉系幹細胞が注目されています(私が学生のころは発生学で間葉系という用語はなかったと記憶しています)。

最先端の治療と思われがちのために、幹細胞を夢の治療法的に扱った医師が過去にはいました

フライングスタートを再生医療分野で行なったクリニックは間違いなく厚生労働省の指導が入るはずです。多分、このクリニックが行なっている治療は線維芽細胞を利用した肌の再生医療なんじゃないかなあ⋯。

なぜ私が再生医療に関してうるさく言うかは、厚生労働省によって再生医療が届出制度になる以前にこんな危なっかしい治療が平然と行われていたからです

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NHKクローズアップ現代「追跡 再生医療トラブル ~体性幹細胞治療の闇~」

体性幹細胞は造血幹細胞や神経幹細胞のことであり、がん化することが少なく安全性が高いと判断され、白血病などの治療方法の一つとして期待されてます。

しかし2013年にクローズアップ現代で取り上げられたクリニックで喘息やアトピー性皮膚炎、さらには幹細胞を使った豊胸手術まで行なっていました。こんな無責任は発言も紹介されています。

糖尿病にも効くし、リウマチにも薄毛にも効くし、近視にも効くんじゃないかと投与した。

これじゃあ、厚生労働省も動きますよ。

補足:造血幹細胞は今は保険適用となっています。

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http://shirobon.net/30/ika_2_10_2/k922.html

幹細胞治療と称している美容クリニック、線維芽細胞は幹細胞じゃないよ❗

ひょんなことから医学の素人さんが「私が受けている幹細胞による美肌治療はここです❗」と自信ありげに某美容クリニックを教えてくれました。

そこのクリニックが行なっている皮膚の再生医療は「自家培養真皮線維芽細胞移植術」だと思います。念の為、厚生労働省の再生医療等提供計画の一覧表で自家培養真皮線維芽細胞移植術を行なっているクリニックを調べたところ、かなりの数の美容クリニックを確認することができました。どう考えても自家培養真皮線維芽細胞移植術は幹細胞を使っていません

私が探せた範囲では、美容分野における線維芽細胞の研究論文としては、この論文が代表的だと思います。

「Can Platelet-rich Plasma Be Used for Skin Rejuvenation? Evaluation of Effects of Platelet-rich Plasma on Human Dermal Fibroblast」(PMID: 22148008

日本語に訳すと「多血小板血漿は皮膚の若返りに使用できるか ヒト皮膚線維芽細胞に対する多血小板血漿の効果の評価」ですね。ここにある「多血小板血漿」は正式には「Platelet-Rich Plasma」であり頭文字をとってPRPと呼ばれています。

PRPはすでにスポーツ医学分野や美容医療で使用されているものではあるけど、厚生労働省へ届ける必要がある再生医療です。

この医学論文では

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とのグラフを記載してPRPを使用することによって線維芽細胞が増殖することを証明しています。

しかし、しつこいですけどこの研究はPRPをヒトが線維芽細胞を増加させることを試験管ベースで証明したものであり、幹細胞の研究ではありません。論文中に幹細胞つまり「Stem Cell」という言葉は一切書かれていないもん❗

幹細胞を使って美肌治療は現時点ではウソ、インチキの可能性が大なのです❗

研究ベースであったとしても臨床応用を行うには厚生労働省へ届ける義務があります。もし、幹細胞を使って●●●と耳障りのよいことを連呼している美容クリニックがあるのなら、思いっきり眉に唾をつけて良いと判断します。それが医療機関ではないお店でしたら⋯残念ながらお話になりません、はい。

線維芽細胞を使った再生医療、これは幹細胞治療と呼ぶのは大間違い

幹細胞を使った皮膚の再生医療は着々と臨床への応用が研究されているのは間違いのない事実です。しかし、幹細胞の代表でもありiPS細胞の本場でもある京都大学のサイトではこのように伝えています。

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iPS細胞を含む幹細胞を使用した再生医療はまだまだ研究の途上にあるのです。幹細胞の代表であるiPS細胞、そしてそれを開発して研究している京都大学の公式見解でさえ研究中と述べている

幹細胞をそんじょそこらの美容クリニックが利用できるワケがないじゃん❗

と私は判断いたします⋯もし、幹細胞を使った肌の若返り治療をしているクリニックがあったら、ごめんなさい。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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