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コレステロール問題、卵は食べて良いか?NGか?

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厚生労働省は「日本人の食事摂取基準2015」で、コレステロールの摂取量に関しては上限を決めるための科学的な根拠が乏しい、との理由で一日どれだけのコレステロールを含む食品を食べれば良いかの判断を放棄しました。

しかし、一方で日本動脈硬化学会はコレステロール摂取量を1日200mg未満にすることを強く推奨しています。

コレステロール値が高い、だから卵を食べるのは控える、は正しいか?

本年になってやっぱりコレステロール値は食事と強い関係があり、コレステロールがたっぷりの代表的な食材である卵に関しては半分食べるだけで、心臓の病気の発症率が6パーセント高まる、との研究結果が発表されました。

コレステロールと食事、特に卵は1日何個までは大丈夫か、はっきりしろ❗的なご意見を日々の診察時に患者さんからいただくことも多くなっています。そんなこんなでこんな感じの健康関連記事がオッサン御用達媒体に掲載されてしまうのです。

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https://hc.nikkan-gendai.com/articles/254881

高脂血症&卵料理好きである私(もちろんオッサン)としては、お上に逆らうわけでも、学会に逆らうわけでも、権威ある医学専門誌に逆らう事無く、フラットな公平な態度でこのコレステロール値と卵問題に関してジャッジを試みてみますね。

卵は半分でも食べれば心臓の病気のリスクが高まり死亡率も高くなる

反卵陣営の論文はこれです→「Associations of Dietary Cholesterol or Egg Consumption With Incident Cardiovascular Disease and Mortality.」(PMID:30874756)で、American Medical Association (略してJAMA)という日本では米国医師会雑誌と訳されるかなりクオリティの高い権威ある医学専門誌に本年2019年3月に掲載されています。

これは米国人を対象にして行われた研究であるために、「日本人にそのまま当てはまるとは言えないじゃん❗」という気持ちを抱いたオッサン(当然卵好き)も少なくないとは思われます。

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毎日のコレステロール摂取量と心血管系の関係を表したグラフです。コレステロールを含む食品を食べれば食べるほど、心血管系の病気の発症率(青い線)が上昇していることがわかります。

そう言えば日本動脈硬化学会もコレステロール値の異常と食事の関連性を公式サイトで強く主張していますので、次に日本人の日本人による日本人のためのコレステロールと卵の関連も読み込んでみます。

日本動脈硬化学会のコレステロール値と食事の関連性についての公式見解

学会と名乗っていても同好会レベルの団体も無いわけではありません。しかし、コレステロールを含む食事と病気の関連性について、厚生労働省の見解に真正面から逆らっている日本動脈硬化学会は日本医学会の下部団体であり、この学会の見解は日本の医師の多くに支持されているとお考えください。日本動脈硬化学会の公式サイトを読むと、コレステロール値とコレステロールを含む食事との関係に対して迷走(?)する判断の経緯をある程度知ることができます。

アメリカ心臓病学会及びアメリカ心臓協会(American College of CardiologyとAmerican Heart Association)が2013年にコレステロール摂取量を減らしても体内のコレステロール値を低下させるのかについて明らかなエビデンスが無い、と発表しました。

米国の関連学会の見解の影響を受けたかどうかは不明ながら、日本の厚生労働省は前述のように「2015年日本人の食事摂取基準」においてコレステロールの摂取に関しての上限を定めないようにしました。

しかし、ここのところ多くの一般人、メディア、下手すりゃ勉強不足の医師が見落としている重要な条件があります。

コレステロール摂取量に関して、上限が科学的医学的見地から明らかになっていないのは、健常者に限られている

つまり、検査によってコレステロールの異常、特に悪玉コレステロール値が高く、高脂血症あるいは脂質異常症と診断された人に対しては、一日あたりのコレステロール摂取量の上限は存在する、ということです。

高LDLコレステロール血症の食事療法を行う場合、食事のなかの摂取バランスとさまざまな生活習慣のなかで摂取する個々の差を考慮し、我が国の平均摂取量を下回る数値を実践することで、薬物療法を始める前に生活改善による効果を確認していただきたい。

日本動脈硬化学会「コレステロール摂取量に関する声明」

高コレステロール血症と食事療法の考え方はこれ❗

まず高コレステロール血症特に悪玉コレステロールと呼ばれているLDLコレステロールの検査結果で高値を指摘された人はコレステロールの摂取に気を使う必要があると考えましょう。健康診断等でコレステロール値の異常を指摘されていない人は、あまりにも神経質にコレステロールの摂取を気にする必要はなさそうです。

というのもできたてホヤホヤのJAMAに掲載された卵を食べれば食べるほど心血管系の病気になるリスクが高まり、さらには死亡率も高まる、との衝撃的な論文もいくつか問題を抱え込んでいないわけではないと個人的(卵好き)には判断しているからです。

その理由は

経口摂取したコレステロールはそもそも全部が全部血液内のコレステロールになるのか?

という素朴な疑問があるからです。

私が医師になった当時のかなり古い論文、しかし基本中の基本の論文として「Heterogeneity of cholesterol homeostasis in man. Response to changes in dietary fat quality and cholesterol quantity.」(PMID:3584466)があるからです。この論文によれば口から入った食材のコレステロールうち、全部が全部血中コレステロールになるわけではない、と解釈できます。

卵とコレステロール、そして心血管病及び死亡率の関連性はいくら交絡因子を考慮した研究で相関関係にあったとしても、因」果関係つまり原因と結果である、との答えにはなっていないことがあります。

私の場合、遺伝的素因で高脂血症になる、と家族歴と遺伝子解析から判断しておりますので、悪玉コレステロールを下げるためにスタチン系の高脂血症改善薬を服用しつつ、むちゃくちゃではない範囲で卵料理を楽しんでおります(※個人の感想及び体験談です笑)。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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