五本木クリニック院長ブログ

甦る中世の民間療法、「カッピング」と「瀉血」。この治療は本当に効果があるの?


驚いた!!瀉血やカッピングを現代の医療機関が行なっているのだよ

先日、瀉血に関してSNSでちょっと話題になりました。瀉血なんて中世の魔術師的な医師が使っていた治療法を現在でもいくつかの医療機関が行なっています。瀉血とペアになって治療されることの多いカッピング(吸い玉治療とも呼ばれます)も古代中国の民間医療なのですが・・・。

瀉血やカッピングはプラセボ以上の効果は期待できません!!

とキッパリ言い切ります。

カッピングや瀉血は要するにおまじないと同等レベルの効果であり、リスクを考えると少なくとも現代人が選択する必然性が全く感じられない民間医療です。しかし、この民間医療を大々的に行なっている医療機関・医師が存在します。

Googleで「東京 瀉血」と検索するとこんな結果になります。全て医師が診療を行う医療機関です。

「東京 カッピング」で検索すると整体(いわゆる無資格の民間療法)と鍼灸院と、やっぱり医師が治療を行う医療機関が表示されます。

歴史上、瀉血によって救われた命より失われた命の方が多い、とまで言われています。その瀉血とカッピングを組み合わせた治療方法の効果は良くてプラセボレベル、下手すりゃ医療事故にも繋がりかねないのに。

実際にカッピングと瀉血を同時に行なった体験記を見つけましたので、何が悲しゅうてこんな治療方法を選択してしまっているのかを検討してみます。

瀉血はドロドロの血を抜くことによって、肩こりや腰痛に効果がある?

ちょっと古い記事ですが、Evernoteに記録してあったので、この記事を瀉血とカッピング療法の例として使わせていただきます。

2015年2月12日 exciteニュース「しつこい肩こりや腰痛に…“ドロドロ血”を抜く「瀉血治療」を体験してみた」(https://www.excite.co.jp/news/article/Joshispa_20150212_00193150/)。

瀉血とカッピング(吸い玉とも呼ばれる)を併用して肩や背中や腰の痛みを治療法をメディカルカッピングと呼ぶそうで、都内のある医療機関でのライターさんの体験記です。そこの医師の説明として

カップを背中にのせて真空にし、老廃物や二酸化炭素を含む血液・体液を、皮膚の表面に引き上げます。そこに特殊な細い針を、深さ1mmほど刺します。この“瀉血”によって、ドロドロになった血液(=汚血)が抜き取られ、毛細血管の血流が改善するわけです。

と書かれています。

こんな感じで治療するんでしょうね(https://www.deccanherald.com/metrolife/cupping-here-it-s-not-all-686159.htmlより)。

この医師の説明の意味が私には良くわかりません。

血液には当然二酸化炭素が含まれていますので、なぜわざわざ二酸化炭素を含む血液と言っているのでしょうか?さらに「老廃物」とは具体的には何を指しているのでしょうか?

針をさすことによってそこから血液が吸い上げられるのは当たり前の現象ですが、ドロドロになった血液とはどのような状態の血液であり、瀉血によってそのドロドロとした汚血と呼んでいる血液は何ml程度抜き取られるのでしょうか?

さらに血液が抜き取られると、なぜ毛細血管の血流が改善するのでしょうか?

などなど、たった数行の医師の説明だけでも疑問が噴出してきます。

瀉血をするとなぜ滞っていた血液の流れが正常に戻るの?

医師の謎の説明はさらに続きます。瀉血をすることによって、滞っていた血液の流れが正常に戻るそうですが、正常に戻った血液の流れをどのように測定するのか、ドップラーエコー等を使用して検査した様子もこの記事には書かれていません。

しかし、医学方面素人ライターさんはこの医師の説明を受けて期待が高まるような純情な方のようです。

記事中に私が気になった、瀉血によって果たして何mlの血液を吸引するのかの答えとして「30CCほど」と書かれています。一般的に成人の血液の総量は4ー5ℓ、なのでほんの1%程度の血液を抜くことによって、体内の老廃物が取り除かれ毛細血管の血流が改善するのでしょうか?

スッキリ感が瀉血&カッピングの効果のようです(笑)

たった一人の医学素人ライターさんの体験記は医学的なエビデンスとしては、最下位と評価されます。わかりやすく表現すれば「※個人の感想です」レベル。

さらにこの医療機関の説明と思われる記述として、円形脱毛症・アトピー性皮膚炎・更年期障害・多汗症などへの効果が記事中に書かれていますが、それを支持するまともな文献は私が調べた範囲では見つかっていません。

サイモン・シンとエツァート・エルンストによって書かれた「代替医療のトリック」という名著があります。それによれば瀉血は古代ギリシャで流行った治療法だそうです。体液(血液・黄胆汁・黒胆汁・粘液)のバランスが崩れることにより人は病気になる、という理論のもと、血液がある場所に滞ることを改善することが治療になると考えられたようです。ちなみにこの時代は血液が全身を循環していることは知られていませんでした。

その後瀉血は中世ヨーロッパでも行われるようになり、床屋さんが瀉血治療を行なっていたのです(だから赤・白・青の床屋さんのグルグル回る看板の赤は血を意味しています)。この瀉血を「ヒル」を使って行う人も当時のヨーロッパではいたようです。

この瀉血とカッピングに対する真っ当な医師の考えは米国国立衛生研究所(National Institutes of Health、略してNIH)の一部門である米国補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health、略して NCCIH)のサイトと同様のはずです。

https://nccih.nih.gov/health/cuppingより

米国補完統合衛生センターの考えは以下のようになっています。

カッピングのリスクとして、虐待の兆候とも思われてしまう痕ができる、その痕は瘢痕化してしまうこともあり、感染症を引き起こす可能性もある。さらに湿疹を悪化させ(あれ、前述の医療機関はアトピーにも効果あり、と言っているぞ)、重篤な副作用の報告もあるし、汚染された血液から感染症(多分、肝炎等)の危険性もある。

カッピングの効果に関しては研究があっても、それらはクオリティが低く、カッピングが痛みを軽減することがあったとしても、それを裏付ける証拠(エビデンス)は乏しく、カッピングが効果あることを証明した研究は無い、とのことです。

カッピングを治療の選択肢に入れる必然性はありませんし、多血症などの特殊な病気の治療目的以外に瀉血を行うことを推奨する根拠も全く現時点では存在しません。

現代に生きる私たちが、リラクゼーション効果以外は全く期待できないカッピングや瀉血をなんらかの病気の治療方法としてチョイスすることは時間とお金の無駄だと考えても問題なさそうです。

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