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NMRパイプテクター騒動、関連医療機器を検証してみました。

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水道管の錆を防ぐNMRパイプテクターという怪しい商品があります。実用化は難しいと考えられているものであっても、大学等の研究機関が研究をすることは大切です。しかし、非科学的な原理のヘンテコな商材の理論として基礎研究が使われてしまうこともあります。人間は権威に弱いです、大学で研究されて論文になっていたとしても、効果が実証されたことにはなりません。

「謎水事件」NMRパイプテクターは医療にも役立つ可能性⁉

先日から「謎水」とか「NMRパイプテクター」との用語が私周辺のSNSで飛び交っています。

やまもといちろう氏がBLOGOSに掲載した「謎水事件」日本システム企画社のNMRパイプテクター事案が熱い!

私レベルの科学知識ではどう見ても、マンション等の配管に対して赤錆防止や赤錆によるパイプの閉塞を改善するとは考えられないのですが、その詳細については以下の専門家のご意見をご覧ください。

小波秀雄先生「『謎水装置』NMRパイプテクターに翻弄される人々

さらにこの小波先生の記事を公開していた左巻健男先生が主宰されている「Rika Tan」( (理科の探検) のサイト自体がなぜか表示されなくなっているのです。

プロバイダの【ロリポップ!】にRikaTanの目次から小波秀雄「「謎水装置」NMRパイプテクターに翻弄される人々」などを削除せよと要求される

このNMRパイプテクターに関しては、私は専門外ですが以前からトンデモ案件としてウォッチングしており、このNMRパイプテクターの原理(?)を応用した医療系機器があるのでご紹介するとともに、この機器が本当に酸化ストレスを減少等の医学的効果が証明されたのかを検証してみます。

私は効果や効能や作用機序に関して、門外漢というか素人さんが高校レベルの教科書や参考書で調べてわからない専門用語や専門用語風を多用するグッズは怪しい、と感じることが多いです。

論文になったから効果があるわけじゃないよ❗

私は以前から特許取得していようが、学会誌に掲載されようが、学会で発表しようが効果が証明されたことにはならない可能性が大きいことをお伝えしてきました。NMRパイプテクターの機能を応用した「Yubi-MR」は本当に効果があるのでしょうか?

血中の酸化ストレスを抑制するNMRパイプテクターの技術を応用した謎の装置の効果を実証したとされる論文(?)はこれです。

画像

http://www.jspkk.co.jp/img/attention/attention201809_004.pdf

左に奥羽大学の校章、右に書かれている「JSP」とはなんでしょうか?この論文(?)が掲載された学会のマークのようにも思われますが、私はこんな感じのデザインの学会誌に掲載された論文は勉強不足なんだろうけど見た記憶がありません。

ここに書かれているYubi-MRという装置の人体への実験は

●9人の健康者の血液を採血した。

●Yubi-MRを照射した前後のd-ROMとBAP値を調べた

●結論1 Yubi-MRを照射すると血液中の酸化ストレス(d-ROM)を減少させた

●結論2 Yubi-MRは眠気を増幅させ鎮静効果がある

このようなことを伝えています。

酸化ストレスを調べる指標としてd-ROMとBAPの測定していますが、これって本当に酸化ストレスの指標となるんでしょうか?

d-ROMによる酸化ストレス測定の問題点

奥羽大学の研究者が使用した酸化ストレス測定装置は「ウイスマー社のFRAS4」と記載されています。 実はこの装置を開発したウイスマー社は生物試料分析という学会誌に「d-ROMSテストによる酸化ストレス総合評価」という論文を投稿しています。

その論文を詳細に読んでみると「d-ROMsテストの測定単位と正常範囲」の所にこんな注意書きが⋯。

画像

http://plaza.umin.ac.jp/j-jabs/32/32.301.pdf

奥羽大学の研究者は「d-ROM テストの結果は集中的であり、CARR U は活性酸素と同じである血液中のヒドロペルオキシド値を示している。」と書いていますが、酸化ストレスの測定装置を開発した会社は「U. CARRは独自の単位」と述べ、さらに「ヒドロペルオキシド全部を過酸化水素のみに置き換えた場合の表現であり、この解釈には注意が必要である。」との注意を書き添えています。

これはd-ROMやヒドロペルオキシドや活性酸素やフリーラジカルという用語について詳しい知識がない人でも変なんじゃないの、と感じていただけるのではないでしょうか?

突然マウスの実験結果が記載されているのも、かなり衝撃的でもあります。

学会で発表されたから効果が証明されたわけじゃないよ❗

NMRパイプテクターの作用機序を応用した「血中の酸化ストレスを抑制する装置」は学会で発表されたことが大々的にプレスリリースされています。

「血中の酸化作用抑制の研究成果発表」(http://www.jspkk.co.jp/yubi/index.html)によれば、

2010年7月にデンマークで開催された「World Pharma2010 (16th World Congress of Basic And Clinical Pharmacology) 」(第16回世界臨床薬理学学会の年次総会と記事内では日本語訳されています)で奥羽大学の教授らと開発した装置の研究成果が受理され発表されたそうです。

さらに2018年7月に日本で開催された国際薬理学・臨床薬理学会議で新たな研究発表が奥羽大学の研究者によって行われる?行われたそうです(「賢者の選択」https://kenja.jp/7036_20180529/2/による)。

こうなると酸化ストレスを解消できるかもしれない装置は学会でも発表されたんだ、これは信用できるぞ❗と受け止める方多数かもしれません。

奥羽大学の「教育・研究業績集」(http://www.ohu-u.ac.jp/information/tenken-pdf/tenken-04.pdf)という文書があります。2011年から2014年の間に研究された実績が掲載されています(漏れが無いとは言い切れませんけど)。

この中には前掲の「Yubi-MR による特殊電磁波の指への照射と帯電した水からの電子の作用による血中の酸化ストレスの減少効果」は論文として見当たりません、多分この期間以外に学会誌等に投稿されたんでしょうね。

奥羽大学の研究者のサイト上に「学会発表」が記載されています。ここには何故か第16回世界臨床薬理学学会年次総会 (World Pharma2010) での発表実績が記載されていません(私が老眼のために見落としていたら後日訂正します)。

さらに2018年7月国際薬理学・臨床薬理学会議で新たな研究結果が発表されたとの記載も見つかりません(記載漏れの可能性もありますけどね)。

NMRパイプテクターに関する件、かなり厄介であることは山形大学の天羽優子先生、謎水さん、小波先生、左巻先生の経験によって十分理解しています。

私も最近ではかなり大人の対応ができるようになったとの評価(n=3) も頂いているので8月末からの騒動に関して知らん顔しようかとも悩みました。しかし、尊敬する左巻健男先生のこの文章を読んでしまったのです。

私は物理系のことや販売手法等に関しては専門外です。

しかし、医療系グッズとなると黙ってはいられなくなっちゃいました。

こんなのも書きました。

NMRパイプテクターの原理を応用した謎の「血液還元装置」を買ったエステサロン・鍼灸院の方、その後のご様子はいかがでしょうか?

NMRパイプテクターの原理を応用した謎の「血液還元装置」を買ったエステサロン・鍼灸院の方、その後のご様子はいかがでしょうか?

NMRパイプテクターという配管の錆防止商品は、科学の専門家から「効果があるはずない」と認定されている代物です。非科学的な理論のNMRパイプテクターを今度は医療機器として販売しようとされていました。論文で効果が証明されているとメーカーは必死に述べていますが、そも論文は論文と呼べるような内容でなかったことをお伝えします。

読んでいただけるとうれしいです。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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