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医師が知らないニセ医学【その2】反ワクチンを煽る医療関係者がいるという現実

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医師のなかでもトンデモに分類されるヘンテコな人がいます。ネットで目につくのが薬剤師さんや栄養士さんのトンデモ健康記事。多くのトンデモさんは、なぜか自然派をこじらせた故に反ワクチンのポジションを取ります。人類の英知ともいえるワクチンを非科学的根拠によって拒否し、医学的には効果・効能が認められていない「免疫力をアップ」させる方法を伝授しています。

自然派メディアはワクチンをこのようなデタラメ記事にしています

医師の多くはネット上のトンデモというか、ニセ医学記事に関して無関心。しかし、患者さんはヘンテコな記事を信じ込んで来院する場合は少なくは有りません。

あまりにもヘンテコなニセ医学系の記事であるために、公開質問状をその記事を掲載した「IN YOU」及び記事を書いた薬剤師さんに出そうと考えていました。

せっかく公開質問状を用意したのに、2019年9月20日現在、なぜかその記事は削除されています。

元の記事は

子どもにワクチンを受けさせたくないと決めたなら。子どもの免疫力をあげるために今すぐできること5つ。

とのタイトルで、薬剤師さんが書いたものでした。

私のようなイチ町医者風情のツイートが原因で削除とは思えないのですが⋯。

少なくともある一定期間、トンデモというより根拠なきニセ医学と判定してよい記事をだれでもがアクセスできるサイトに公開されていたことは間違いありません。

となると、この記事によって間違った知識を得てしまった一般の方も多いでしょうし、その間違った記事に影響を受けた患者さんに臨床医は接する可能性もあります。

この記事を書いた薬剤師さんの個人情報などには触れないようにして、

ワクチンに対して間違った情報がネット上にあふれかえっている現状

を医療関係者とくに外来担当している、産婦人科以外の医師にも知っていただきたいと思います。

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削除前のhttps://macrobiotic-daisuki.jp:443/vakzin-3-166091.htmlのスクショより

ワクチンは効果が無いだけではなく、有害である、これは大きな間違い

ワクチンが効果は効果が無い❗と主張している医師は極々少数、しかし、ワクチンの効果を疑っている一般の方が少ないとは言い切れない状況を多くの医師が経験していると思います。

医療常識に反する極端な意見はメディア的にはウケが良いために、反ワクチンと呼ばれる人々が出てきてしまっているのではないかと私は判断してます。

現時点で削除されている「IN YOU」の記事ではワクチンに効果が無いことの証拠というか証明として、この薬剤師さんの個人の体験がもとになっていて、エビデンスレベルとしてはかなり弱いものです。

ある年には、薬を吸入する患者が目の前で私をめがけて咳き込んできても、インフルエンザにはかかりませんでした。

こんなレベルの個人的体験で医学を語ってはいけません

薬剤師免許を持ちながら、科学的根拠の薄い個人的体験をもとにして、ご自分のお子さんにワクチンを一本も打たないで、さらに打たせる予定も無い、と宣言しちゃう点は大いに批判してよいのではないでしょうか?

患者さんが、「薬剤師さんがワクチンは効果が無いし、その薬剤師さんはご自分のお子さんにもワクチンは打たないって言っていましたよ」とおっしゃったら、一次ソースはこのサイトの無責任な記事である可能性が高いです。

効果が明確ではない子宮頸がんワクチン、これも大きな間違い

子宮頚がんワクチン(正確にはHPVワクチン)の副作用(正しくは副反応)がメディアに取り上げられて、子宮頚癌ワクチンは怖い、と考えてしまった方も多いでしょう。国側もひるんだことも今となっては非常にマズイ処置だったと思います。

ワクチン、特に子宮頸がんワクチンの副反応に関しては、新しい情報がありますので、これは後程述べます。

「IN YOU」に掲載されている記事ではこんなことが書かれています。サーバリックス添付文書からの引用のようです。

抗体価と長期間にわたる感染の予防効果及び子宮頸癌とその前駆病変の予防効果との相関性については現時点では明確ではない。

この薬剤師さんはこの文章によって子宮頸がんワクチンは効果が明確で無い、と判断しているようですが、この人って本当に医療の知識があるんだろうか、と私は疑ってしまいました。

子宮頸がんワクチンが生涯にわたって予防効果があることがまだわかっていないということを添付文書は告げているのです。だからこそワクチン接種とがん検診がまっとうな医師によって推奨されているのですから。

さらに前駆病変と子宮頚がんの関連も、どうもこの薬剤師さんは理解されていないようです。

子宮頸がんワクチンはあくまでHPVの感染を予防するものです。HPVの中でも子宮頚がんを引き起こす可能性が高いウイルスに対して免疫を付けるためにワクチンを接種するのです。つまり添付文書にかかれているように、長期間に渡って子宮頸がんワクチンが前駆病変を防ぐか否かについては現時点では明確ではありません。そりゃそうですね、サーバリックスが製造承認されたのが2009年10月ですから。

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日本産婦人科学会「子宮頸がんとHPVワクチンに関する新しい知識と正しい理解のために」より

HPVワクチン接種によって子宮頚がんが予防できることは世界中で確認されている事実です

FDAはHPVワクチンの対象者を拡大することを承認しました。

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今世紀中に子宮頸がんが撲滅できるとの研究結果もランセットでは報じられています。詳しくは「Impact of scaled up human papillomavirus vaccination and cervical screening and the potential for global elimination of cervical cancer in 181 countries, 2020-99: a modelling study.」(PMID:30795950)を。

予防接種によって起こりうる身体への影響、これもかなり間違った解釈を誘導

子宮頸がんワクチン憎し故にか、「IN YOU」の記事では

ワクチンと自閉症の関連を伝えていますが、この説はとっくのとうに否定されています

このように今では科学的・医学的検証によって否定されている副作用を協調して記事を書く目的が気になってしまいますよね。

今は削除されていますが、記事中はいくつかの商品へリンクされた画像がちりばめられておりこの時点で、「これって商品の宣伝じゃん」と気が付いていただきたいところですが、この手法が今現在もどうどうと行われているということは、広告効果としては有効なんでしょうね。

子宮頸がんワクチンに対しては先日このような研究が発表されました。

Human papillomavirus (HPV) vaccine and autonomic disorders: a position statement from the American Autonomic Society」によればしては子宮頸がんワクチンの副反応としてメディアが大々的に取り上げた自律神経系の障害は、医師がこれらの疾患についての認識が高まったことによる、と単純明快に述べています。

お約束の免疫力アップ、なにを根拠に語っているのか意味不明

免疫力をあげればウイルス感染を予防できる可能性が高くなるのは間違いではないですね。しかし、免疫といっても様々な免疫があり、その免疫力(?)の測定を何をもってすれば臨床で役に立つのか、医学知識があればあるほど明確な指標を選択するのは難しいですよね。

しかし、ネット上ではこれで免疫力はアップするそーです。これを裏付ける根拠はありません(これはもちろん「IN YOU」の記事ね)。

  • 紙おむつを使用する⋯絶句
  • 母乳育児をする⋯ネットにあまり関心ない医師は母乳神話を知らないと思いますが、これも絶句。

母乳神話を拡散している人が利用している論文の1つが医師ならその権威にひれ伏すLancetの「Breastfeeding in the 21st century: epidemiology, mechanisms, and lifelong effect」(PMID:26869575)です。この論文は高所得国と低所得国をひとまとめにして検討したものである点に注意が必要です。

  • エアコンの使用をなるべく控える⋯いつの時代の話なんでしょうか?3歳までに汗をかく習慣がないと汗腺が発達しない説、これ戦前の研究だよ、「人体発汗器官の熱帯風土馴化」という1942年に書かれた論文が一次ソース。

この論文はどんな地方出身の兵隊さんを南方に送れば良いかを検討したものです。

これらでワクチンを必要しなくらい免疫力がつく、と「IN YOU」に薬剤師さんは書いています。

薬剤師さんの情報源はたぶん、ネット上のどっかから適当に拾ってきたもの

それを独自の考えや体験を含めて記事にしたと思われます。

ネットの厄介な点はこのトンデモ系ニセ医学記事をネタにしてどんどん間違った情報が拡散することです。

医師もソーシャルやネット上の医学風記事に時々で良いので積極的的にふれるようにしてください。ちなみに私がネットの医学記事風情報をゲットするのは朝のトイレタイムです。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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