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中国でペスト感染者❗ペストって過去の病気だと思っていたけど⋯。

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世界に冠たるローマ帝国を滅亡させた原因の1つとしてペストの恐怖、中世ヨーロッパでは人口の三分の一の死者を出したと考えられているペスト。でも、ペストって昔々の病気なんで、ペストなんて知らないよ、って人も多いではないでしょうか? 北京で肺ペスト発生 感染力強く致死性もというニュースにびっくり。実はアメリカでもペスト感染者が出て死亡者も出てるので過去の病気では無かったペストということです。

ペストは黒死病と呼ばれた昔の感染症だと思っていたら⋯

人類を大量に死に至らせた感染症としてペストは認識されていると思います。世界に冠たるローマ帝国を滅亡させた原因の1つとしてペストの恐怖、中世ヨーロッパでは人口の三分の一の死者を出したと考えられているペスト。でも、ペストって昔々の病気なんで、ペストなんて知らないよ、って人も多いではないでしょうか?

でもねえ、最近こんなことが報道されているんですよ。

北京で肺ペスト発生 感染力強く致死性も

(2019年11月14日 AFP https://www.afpbb.com/articles/-/3254629 )

この記事にはこんなことが書かれています。

中国・北京市の病院で、患者2人が肺ペストと診断された。病院のある区の当局が12日、ウェブサイトで明らかにした。肺ペストは発生こそまれなものの感染力が強く、治療を怠れば死に至る。

北京で肺ペスト発生 感染力強く致死性も 2019年11月14日 AFP

ペストの感染力が強くても、今ではほとんど感染した人の話を聞いたことがない、少なくとも日本でペスト感染者なんて耳にしたことが無かったので、ちょっと調べてみました。

ペストって飛沫感染するの?

極めて感染力が強く、「人から人へ飛沫(ひまつ)感染し、深刻な流行を引き起こす可能性がある」という。

ペストってネズミが病原菌を運んでくると思っていたら、この記事にはこのように書かれていました。

改めて自分自身の勉強不足を感じたので、ペストについて自分なりに調べてみました。

ペストを感染経路はこうなっています

手元にあった、細菌学の教科書のうち、一番薄いもの「微生物学 モダン・ナーシング・シリーズ8」があります(ちょっと古いかも)。ペストに関しての記述は約8センチ程度(どんな尺度かよ)であり、あまり重要視はされていない様子。ペストの感染経路は

ネズミ→ノミの吸血によって感染拡大→そのノミが人に吸血→人に感染(腺ペスト) 

というルートと

ネズミ→ノミの吸血→そのノミが人に吸血→人に感染→感染した人の飛沫から人に感染(肺ペスト) があるのです(医学部で学んだ記憶はとっくに消失)。

別の文献によると、そもそもの感染経路は

ネズミ→ノミ→ネズミ であって、人類において大流行するのは

ネズミ→ノミ→ヒト→ノミ→ヒト

との考え方もあるようです(「ペスト」-中世ヨーロッパを揺るがせた大災禍 モダンメディア56巻2号 2010[人類と感染症との闘い])。

今回、中国で感染が確認されたのは「肺ペスト」ですから、後者の参考文献の感染経路は含まれていないようです。

一番情報として信頼度が高いと考えられている国立感染症センターとそれをもとにした東京都感染情報センター(http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/plague/)のサイトで確認してみると

ノミに吸血されて感染するのが腺ペスト、その結果としてリンパ節が腫れて敗血症になってしまうのが敗血症ペスト、肺で菌が増殖して第三者に感染を拡大してしまうのが肺ペスト

ってことになっています。

補足
手元にあったもう少し、しっかりした教科書「標準微生物学」によるとペストは感染症法によって病原細菌としてはただ1つ「一類感染症」に分類されていると書かれています。他に一類感染症に分類されているのはエボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう、南米出血熱、マールブルグ病、ラッサ熱ですから、ペストなんて日本はあまり関係ないよ、と考えてしまっても致し方ないような気がします。

滅多にお目にかからない、だけど世界は狭くなっているので、頭の片隅には入れておくべき疾患です。

過去の病気では無かったペスト

日本でペスト感染者が確認されたのは1926年以来はゼロですが、例えば米国ではこのような状況になっています。

画像<

div class=”imgcap”>https://www.bbc.com/news/magazine-34398099

BBCがCDCのデータをもとに作成したグラフです。

アメリカでは今でもペスト感染者が出て、死亡者も出てる❗

ということをですね。ペストなんて過去の歴史上の感染症であって、現代では消え去った病気との認識を改める必要がありそうです(だからこそ、AFPが大々的に記事にしたんでしょうね)。

気になるペストの治療法

AFPの記事中にあるように、今回中国で発生したペストは極めて感染力が強く、ペストの流行の形態としては最悪の肺ベストです。

前掲の薄い教科書によれば、ペストの治療方法としては抗菌剤(抗生物質)の投与が効果的であり、これらの抗菌剤は普通ありふれたもので大丈夫とのことです。東京都感染症情報センターも、抗菌剤が奏功すると書かれていますので、結論としては

中国でペスト感染者が報告されたとしても、必要以上に恐れることは無い

と考えて間違いなさそうです。

しかし、「この人ってひょっとしてペストかな?」と考える医療従事者って皆無のような気もします。

感染予防は極めて当たり前のノミやネズミの駆除であり、ワクチンはありません。私は勉強不足なのかもしれないけど、目の前にペストに感染した患者さんがいてもペストと確定診断する自信はありません。でも、いろいろな情報を目にすることによって、「ひょっとしてペストかな」程度の記憶は残ると思います。

ちなみに検疫というシステムは、ベネチア共和国が東から船に乗ってくる人々から黒死病が持ち込まれているのではないか?、と考えたのが始まりです。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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