fbpx

ベストセラー「医者に殺されない47の心得」の重箱の隅をつついたら⋯出てきました変なデータ

更新日:

近藤センセイはとにかくガンは見つけないに超したことはない、余計ながん健診なんて受けること自体が死期を早めているという論調であることは著作でも知られていますし、先日の「金スマ」出演時のお話からも察せられます(2014年10月8日 追記)。

心得8の「早期発見」は、実はラッキーではない⋯確かにその通りです

私の本当の専門である泌尿器科ではありふれた疾患となった前立腺がんの場合は、他のがんと比較しても超早期発見が可能となっています。PSAと呼ばれる腫瘍マーカーが簡単な採血で測定でき、CT等の画像診断ができない状態でも、がんの存在が予測できます。

PSAは4.0以上であると、がんがあることが示唆されます。がんであることを証明するためには前立腺生検と呼ばれる検査が必要になります。この顕微鏡による病理検査でがん細胞が発見されて、初めてがんと確定診断されます。初診時にPSAが100なんて方も中にはいますので、この方がもっと早くPSA検査をしていてもっと低い段階で治療できればよかったのにと悔しい思いもします。逆に早期発見の場合も悩ましい問題が発生します。

PSAが10以下の場合、手術等の積極的治療をして得られるメリットとデメリットを比較するとあまり差はないと最近の研究ではわかりだしています。生命の予後にあまり影響を及ぼさない前立腺がんまで積極的に治療してきた歴史があります。手術の後遺症、放射線治療の後遺症に悩んでいる方もいるのは否定しません。ですので泌尿器専門医は現在では監視療法という手術や投薬を全くしない治療を選択する場合もあります。ですから、早期発見=ラッキーではない、という近藤先生のお話は正しいともいえます。

でも、間違っています、近藤センセイのデータの解釈

「がんで亡くなる人は減っているのか」という問いかけがいけません。がんで亡くなる人の占める割合は減ってはいないのですが、その理由ははっきりしています。

近藤先生が目の敵にしている抗生物質(これも最近は実はあまり使わない言葉です)の使用によってまず感染症による死亡が極端に減りました。また、血圧の管理等によって心血管系の病気での死亡も減っています。つまり、万人が平等に治療を受けられる日本の医療制度によって言い方を変えれば「がんでしか死ねなくなっている」といってもいいのです。

がんは正常な細胞が何回も細胞分裂を繰り返す過程での遺伝子のミスによって発生します。このミスを増やすのが放射線であり、喫煙等の外因に左右されます。つまり年を取れば取るほどがんになるリスクは増加します。ということは心臓や感染症で以前は亡くなっていた人が健康管理によって

長生きをしても最後はがんになる確率が増えるので、がんで亡くなる人が多いのは日本が長寿になった証拠

でもあるのです。
sibouritu

厚生労働省のがん患者数の年次推移からお借りしました。

ここも残念⋯近藤センセイ、検診と健診の違いをはっきりさせないといけませんよ❗

検診はある特定の病気を見つけるために行う集団検診と考えてください。健診は健康診断の略で何かを発見する目的で行うのではなく、健康であることを確認するものです。例えば検診で胸のレントゲン検査を行った経験をお持ちの方も多いでしょうが、レントゲン車で使用されるのは間接撮影と呼ばれるもので、がんを発見するには適当ではありません。

昔結核が国民病であったときは役に立ったでしょうが、がんを見つけるなら直接撮影でないと見逃します。これは厚生労働省の開示されている文章でも明らかになっています。

「がん検診を止めた村」でがんの死亡率が激減した?明らかに時代的背景を無視したがん検診否定説

長野の泰阜村で「がん検診」をやめたら胃がんの死亡率が激減したのは事実です。平成25年4月現在の人口は1815人の村です。でも⋯逆にここの診療所の医師は個別の健康管理をそれまで以上に力をいれて「健康診断」に力を入れたのです。泰阜村の村長のブログ(※今は無くなっています)に詳しく書いてあります。がん検診を止めた自治体としての勇気は感心しますし、さらにその後の住民の健康を守る熱意は評価するべきものですが,泰阜村の発表したデータを詳しく見ると

確かに胃がんで亡くなった方は
◎昭和58年~63年は全死亡者の6.0%で、平成元年~5年は全死亡者の2.2%
6.0VS2.2 と確かに激減しています。
でも、全ての死亡者中で
◎昭和58年~63年までにがんで亡くなった方は19.9%、平成元年~5年までにがんで亡くなった方は19.7%
19.9VS19.7ということは
あれっ、がんで亡くなった人は減っていないぞ!

そうなると、

この村では急に他のがんで亡くなった方が激増したのでしょうか?特殊なガンが泰阜村で大流行したんですか?

泰阜村だけでなく、この時期は日本全体でも胃がんで亡くなる方は極端に減っています。
このグラフは縦軸が等間隔でないので注意してください。
↓  ↓  ↓  ↓  ↓

無題

このあたりを突っ込みますと私も猛攻撃を受ける可能性がありますので、
さらに詳しく調査をして報告します。

2014年10月3日放送の「金スマ」での近藤氏の話があまりにも世の中に間違った情報をバラまくために、2014年10月8日に一部追記しました。

関連エントリーで近藤氏の数字に対する弱さというか、甘さを指摘させていただきました〜。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

Affiliated Medical Institutions

主な提携医療機関

一般診療
診療日
月・火・水・金
9:30~12:30/15:00~18:30

土 9:30~12:30
休診日
木・日・祝
受付時間
9:00〜12:15/14:30〜18:15

泌尿器科・内科・発熱外来

フリーダイヤルがご利用になれない場合は03-5721-7000

美容診療
診療日
月・火・水・木・金・土
10:00~18:30

※完全予約制です。ご予約はお電話ください。
休診日
日・祝
受付時間
10:00〜18:30

美容外科・美容皮膚科

フリーダイヤルがご利用になれない場合は03-5721-7015

© 2023 医療法人社団 萌隆会 五本木クリニック