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妊孕力って言葉知っていますか?ART (生殖補助医療)ではあまり高齢の出産は薦めていないことの理由を調べてみました。

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生殖補助医療は一般的には人工授精ということで理解されていると思います。

人工受精といっても手技は多数ありますが、通常の性行為で子宝に恵まれない方に対する医療行為を生殖補助医療と一括りに考えても問題ないと思われます。

海外では超高齢で出産した人がマスメディアなどで取り上げれらます。日本でもかなりの高齢で出産した有名人がいますよね。

生殖補助医療ARTへの過大な期待

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インドのラジョ・デビ・ローハンさんは、2008年、体外受精により、70歳で娘のナヴィーンちゃんを出産。多分世界記録だと思います。

一方、このARTを持ちいないでも55歳ぐらいで自然に妊娠・出産した人もメディアに登場したことがあります。しかし、これは自然界で起こる極めて特殊な例であるとの認識を持たなければなりません。世界中では110歳以上の長寿の方もいますが、それは例外中の例外であることと同じです。

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一般的な体外受精です In Vitro Fertilization, IVF

しかし、人工授精の技術向上によって医学常識以上の希望をかなえようとする方もいますのでいくつかの問題がしょうじています。

出産に適した年齢ははたしていくつでしょうか?

ズバリ「生殖至適年齢は18-30歳」と日本受精着床学会などは伝えています。女性の生殖能力は「妊孕力(にんようりょく)」と医学的には呼ばれています。普通読むことも書くこともできないような字ですね。

もともと卵子は女性の体の中に出生時から存在しています。実際は卵母細胞という形で存在していますが、その数は20歳で10万個あるとされています。

45歳になると卵子の数はたったの5000個にまで減るのです。

Hum Reprod 1992; 7: 1342-1346におけるFaddy MJ らの研究によると「生殖至適年齢は18-30歳。41歳になると妊孕力はほぼ停止」するというショッキングな報告をしています。

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日本生殖医学会HP

生殖補助医療を行っても年齢が上がるほど成績が落ちてしまいます。

もちろん個体差はあるのですが、医学常識的には出産は18-30歳までが適切であり、限界は40歳と考えざる得ないのです。医学は科学の一部ですのでこのような非情ともいえる線引きをどこかではしなくてはなりません。

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寿命はのびても生殖適応年齢は変化なしの問題点

現代の女性は外見が美容医学の進歩により格段に若く見えるようになっています。

美容医学が急速に発展したのも上記の論文が書かれたあとの1990年代中ごろから今現在でも進化を続けています。

しかし、体の中での変化はあまり変わらないために女性自身が生殖年齢に対してのギャップを感じているのです。

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http://www.biomedsearch.com/

加齢と生殖年齢を表しています 左の線が41歳で100になっていますが、生殖能力の限界を意味しています。一番右の線は閉経が起きる年齢の累積数です。

通常閉経は40歳から50歳半ばに起こるとされています。日本人の場合は45.3歳で10%、56.3歳で90%が閉経していると報告されています。平均の閉経年齢は50.5歳です。

つまり自分ではまだまだ若く出産可能と思っていても実際の妊娠する能力自体が落ちているにも関わらず出産を望んでしまう傾向があることに成ります。

むりな出産の問題点

年を取ってからの出産は不妊はもちろん流産の率も高まります。しかし一番の問題は卵子の異常によって生まれてくる胎児の染色体に影響を及ぼすことにエストゲンなどの内分泌機能の低下が関連していることです。

染色体異常は417人に一人の確率で発生しますが、45歳で出産した場合はなんと20人に一人の確率で発生します。

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http://6-bit.com/

ダウン症は30歳未満の出産では1000分の一の確率ですが、45歳以上では30分の一となってしまうのです。

50人に一人がARTで出産している日本

日本では2010年に出産した赤ちゃんの数は約110万人、そのうちARTで出産した赤ちゃんは約3万人となっています。

数十年前は試験管ベービーなんて呼ばれていた人工授精による出産がいまでは普通の妊娠方法となっているのです(試験管ベービーとは特殊なARTの一つであり今現在生殖補助医療と言われている物全体をさす言葉ではありませんのでご注意ください)。

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【まとめ】私からの問題提起

不妊治療を受けている方の30%以上が40歳以上であるとの報告があります(日本受精着床学会誌による)。現在不妊治療は法的な助成を受けることができますので、受診しやすくなったことは非常に良いことだと思います。

受診者の高齢化も急速に増えている事実が第31回日本受精着床学会の教育講演で発表されました。もちろん日本人における晩婚化問題が大きく影響を及ぼしていることは間違いありませんが、注意しないといけないことがあります。

日本人の平均寿命特に女性は世界に誇る長寿である
⇒しかし、生殖可能期間は延長されていない
⇒ARTは進化を続けている
⇒高齢の出産はリスクがあることが、十分理解されていない

今後の人口が減ることが確実な日本です。人口の減少は国力の減退でもあります。

女性が安心して生殖適齢期に出産をして、子供を育てやすい環境作りを国はもっと力を入れて改善していく必要があると思います。

西洋のある国のように結婚はしないけど、子供は作るといった風潮に目をしかめている時代ではないのかもしれませんね。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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