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梅雨は食中毒の季節です❗って本当かな〜⁉

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高温多湿の梅雨時は食べ物が腐りやすい(昔の人を傷みやすいと言っていた)というおばあちゃんの知恵的常識って本当なんでしょうか?というのも厚生労働省の発表している「食中毒発生状況」によれば5月、6月、7月が年間を通して特に異常値と言えるほど食中毒が多く発生しているとは思えないからです。

梅雨時は高温多湿で食中毒が多発❗って本当??

www_mhlw_go_jp_file_05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka_0000041449_pdf
https://www.mhlw.go.jp/より

このグラフからは年によっては違いがあるんですが、ざっくり見まわしたところ12月が好発時期であり、梅雨時だから食中毒が多発とは言い切れないように見受けられます。

じゃあ、おばあちゃんの知恵は間違っているんでしょうか?民間療法のなかでもおばあちゃんの知恵が大好きな私としては調べずには入られませんので、この不思議の解明を試みました。

食中毒とは⋯まずは定義をはっきりさせよう❗

物事を検証するためには、検証する対象の定義をはっきり決める必要があります。食中毒は口から入った微生物等によって消化器(胃や腸)が調子悪くなる病態を示しています。原因として主なものは腐った食べ物はもちろんのこと、食品に含まれる寄生虫、あるいは毒性をもった食べ物の摂取が上げらます。つまり

◎放置して腐敗した食品⋯常温多湿で細菌が増殖した食品
◎寄生虫を含む食品⋯サバなどの生食によるアニサキスが有名
◎もともと人体に対する毒を含む食品⋯毒キノコ

食中毒を起こす病原体としてはウイルス、細菌、寄生虫、毒が考えらえます。

毎年、冬の時期に猛威を振るう「ノロウイルスによる感染性胃腸炎」、病原体としてはウイルス、感染経路としては腐敗した食品というより、ウイルスが付着した食品類の摂取、あるいは飛散したノロウイルスが意識しないうちに手指に付着して、その手で食べ物を触って口に入るるために感染するのです。

つまり、病原体も様々ですし、感染経路も様々ですので特に梅雨の時期に食中毒が起こりやすいと断言することはできないような⋯おばあちゃんの知恵を否定もしたくないし⋯。

病原体の性質に注目をしてみると、時期的な違いがあるんだよ

もともと毒があると知られているフグの肝や毒キノコの摂取による食中毒はひとまず置いといて、集団感染を引き起こす可能性が高い細菌とウイルスによる食中毒を考えてみます。ウイルスと細菌って同じようなもの、目に見えない小さな病原体ではあるんですが、大きな違いがあります。微生物の感染に対して効果があると一般的に解釈されている抗生物質・抗菌剤はウイルスには全く効果がありません。

逆に抗ウイルス効果のある薬(タミフル、イナビル、バルトレックス)は細菌感染には全く効果がありません。だから、風邪(多くの原因はウイルス)に対して医師が抗菌剤を処方するのは無意味、医師の金儲けって言われてしまうんです。汗 ウイルス感染した風邪の場合は扁桃周囲炎と言って弱ったところに、追い打ちをかけるように細菌が侵入してくる場合もありますので、一概に抗菌剤の処方が間違っている、とは決め付けられないのですけどね⋯。

細菌性の食中毒(感染性胃腸炎)は食品の腐りやすい梅雨時期に発生しやすい

というおばあちゃんの知恵は正解です。

一方、ウイルス性の食中毒(ノロウイルスなどのよる感染性胃腸炎)は湿気に弱いウイルスの特性上、高温多湿の季節より、乾燥気味の冬に流行しやすい、という傾向があります。つまり、梅雨時も冬も原因となる病原体に違いがあっても、同じように流行する可能性があるために、月別にわけても食中毒(感染性胃腸炎)自体の発生件数にあまり違いが出ない、という厚生労働省のデータもそれを裏付けているわけなんです。

おばあちゃんの知恵は間違っていませんでした、ホッ。

豚肉の生食問題

焼肉屋さんのユッケで犠牲者がでて、独特な感性をお持ちの社長が号泣しながら会見したことを記憶している方も多いと思います。その後、ナマ肉の提供が禁じられ、厳しい規制のなかで一部解禁されています。

今度は6月12日から豚肉の生食を禁止して、飲食店では加熱を義務づける食品衛生法が2日告示されたことに対して様々な意見が出てきています。食べ物はその国、民族の間で長年続けられてきた文化ともいえますので、法律で厳しく規制するのもどうか、という考え方もできます(捕鯨等に対して強硬な団体が日本を攻撃するなんてもってのほかです)。しかし、牛肉や馬肉を生食する文化は国・地方によってもともとあるもですが、

豚を生食する文化ってもともとどこの国、どこの民族にあったんですか?

と素朴の疑問を抱いてしまいます。豚肉の生食はE型肝炎ウイルス感染のリスクがありますし、赤肉にも有鉤条虫という寄生虫が存在する可能性があります。

おばあちゃんの知恵の「豚肉は火が通っていないとことは食べてはいけない」「豚肉はしっかりと火を通して」という解釈は間違っていません。人様の食に対する嗜好にとやかく意見を述べる趣味は持ち合わせていませんけど、豚肉生食で食中毒になっても、提供した飲食店を逆恨みしてはいけませんし、医療機関を受診しても「豚肉を生でたべちゃったの??」的な対応をされても怒ったり、訴えたりしないでくださいね❗当然、知っているべき知識を知らないで、食のチャレンジャーとなったんですから。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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