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今年から4価のインフルエンザワクチンが使用されるけど、価格の上昇が気になる方へ

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「今年のインフルエンザの予防接種って昨年と比較して高くね?」という声が聞こえますが、その一因として昨年使用したインフルエンザの予防接種のワクチンと今年のものはかなり違いがあります。

昨年と今年のインフルエンザワクチンは違うんだよ❗

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国立感染症研究所サイト

スーパーのお買い得情報的に言えば大増量サービス❗って具合です。というのも昨年までのインフルエンザワクチンは3価といわれ、A型インフルエンザのワクチンが2種類、B型インフルエンザのワクチンが1種類含まれていました。B型インフルエンザってのいうのは大流行はあまりしませんが、冬後半に流行することが多く、近年も春先の流行が問題になっていました。

インフルエンザワクチンを打ったのにインフルエンザに罹っちゃったじゃん、というご批判に対応するため?に本年2015年のワクチンはB型も2種類となっています(3種類が4種類になったんで実際は33.3パーセント増量かな)。

ワクチンが当たるか外れるか?ワクチンの中身は誰が決定するの?

巷で「今年のインフルエンザワクチンって外れだったのよね〜」的な会話を小耳に挟むことがあります。実際、数年前は大外れとされたこともありました。じゃあ、だれが今シーズンに流行するインフルエンザを予防するためのワクチンを決定するのか?とい素朴な疑問に答えたサイトった案外見かけません。これ公開すると某役所から強烈な嫌がらせを受ける可能性があるんですけど、言っちゃいます❗

インフルエンザワクチンの中身を決定するのは厚生労働省の健康局長が国立感染症研究所の所長に選定を依頼するって方式で決められます。この国立研究所の所長がワクチン株選定の検討会議を開催して、最終的に5月くらいに決定して、国内のメーカーが製造に入ります。もちろん健康局長単独の判断でもありませんし、感染症研究所の所長の判断でもなく、WHOが推奨するワクチンのウイルス株を参考にして、正式名称「インフルエンザワクチン株選定のための検討会議」が健康局長宛にこんな文書を報告します。

www_mhlw_go_jp_file_06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku_20140624_01_pdf

これは昨シーズンのものですから、B型は一種類になっています。ある意味お役所仕事であるので、あきらかな責任の所在として個人は特定されないようですね。

なんで今年のインフルエンザワクチンは4価になったのか?

昨シーズンはB型インフルエンザと同定された件数は7パーセント程度でしたが、その元となったウイルスは山形系統とビクトリア系統が混合して流行しました。WHOもB型を2系と入れることを2013年から推奨していること、アメリカでも2013年から4価のインフルエンザ予防接種が承認されました。

つまり世界的に4価のインフルエンザワクチンが主流になっていることによって本年2015年から日本でも4価のワクチンが製造されることになったという訳です。

2014年のB型ワクチンって「マサチュセッツ」で全然山形でもないし、ビクトリアでもないじゃん、って思われたでしょう?そもそも山形系統のワクチンのもととなったウイルス株はマサチューセッツとウィスコンシンとプーケットから分かれたウイルスなので今年のインフルエンザワクチンのB型の中身はプーケット(山形系統)とテキサス(ビクトリア系統)になってます。ウイルスって遺伝子をころころ変化しながら流行していくので、詳細な遺伝情報は各々違いがありますが、大きな系統として分類した場合、抗体を産生するためのワクチンは根元を押さえておけば効果があるんです。

最近なりを潜めている鳥インフルエンザに対しては、残念ながら今年2015年のワクチンは効果はありませんのでご注意ください。

しかし、朝日新聞の報道ってどうなんだろうかね〜???

医療系の報道でもへんてこな意見がでる傾向のある朝日新聞ですが、こんな報道をしています。 「インフルワクチン、出荷見通し立たず 製造4社の一つ」 (http://www.asahi.com/より)。ワクチンを製造する会社の一つが厚生労働省のチェックに対応できないために、850万本が不足する恐れが出てきた、ってことです。これが報道された当時(2015年10月10日)は今年のインフルエンザの流行は予想以上に早く、9月からすでに長野県や愛媛県、神奈川県で学級閉鎖が報告されていました。

インフルエンザの予防接種が開始されるのが、10月1日。世の中で「今年はインフルエンザが流行するから早めにワクチンを打とう」というムードを作り出すのなら、医療関係者のひとりとして好ましい記事に思えますが、ワクチン不足の報道だけではなく、目立つ位置に「インフルワクチン、コスト高で値上がり」って文言があります。

このような報道の仕方ですと経済の原則に従ってインフルエンザワクチン不足 → ワクチンの値段上昇という図式を思い浮かべてしまいますよね。

ワクチンの値段って健康保険でカバーされるものではないので自由な価格設定ができますし、医療機関に卸す場合も値段は自由ですが、実際問題としてワクチンが不足しているから卸売価格を上げる、さらにそれを理由に医療機関での接種料金を上げる、なんてことをしたらネットで叩かれること必至です。単に3価から4価にワクチンが変更したために、各社の負担が増えて卸売価格が上昇した、って素直に受け止めてくださいませ、巨大メディア様。

おまけ1:出荷見通しが立たないと報道された化血研のワクチンですが、報道から10日足らずで出荷の自粛は解除されています⋯ワクチン不足にはなっていないのです。

おまけ2:当院への納入価格は昨年比きっちり1.5倍になっていました。だからといって接種料金が1.5倍に設定している医療機関があったらかなり疑問です。

おまけ3:インフルエンザの予防接種は高齢者等は区が補助をしています。昨年の窓口料金は2200円、区から医療機関に2432円が直接支払われました。合計4632円が予防接種一回あたりの目黒区の医療機関の収入です。本年2015年は窓口料金2500円、区からは2672円医療機関に支払われます。合計5172円が医療機関の収入になります。つまり予防接種のワクチンは原価1.5倍になっているのですが、接種料金自体は約12パーセントしか上昇していませんので、朝日の報道は大げさです。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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