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強く頭を打った時「CTお願いします」は間違いです❗検査によって「がん」の危険が高まる??

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放射脳さんが喜びそうな話ですけど、CT検査ってかなりの放射線を被爆しますので、将来の発癌と強く関連していると考えられています(詳細は後で書きます)。

安易なCT検査は「がん」のリスクが高まります⋯頭を強く打った時に注意すること

酔っ払って転倒して頭を強打したオッサンが救急病院を受診して呂律の回らない言葉で「シーティーケンサはやんねえのか~」なんて喚いているとの話を耳にしましす。お子さんが何らかのトラブルで頭部を強く打った時などは親御さんも心配で「頭のCTはやんないのですか?」と言いたくなる気持ちも十分に分かります。

救急救命という救えて当然、万が一残念な結果になったら猛烈な抗議を受けやすい現場の医師はどのような基準で「頭を強く打っているけど、CT検査は必要ありません」と毅然と答えているのでしょうか?CTが必要か必要でないかの見分けガイドラインがあるんです。「カナダ頭部CTルール(Canadian CT Head Injury/Trauma Rule) 」を指標としてCTの必要性を判断しています。

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CTの必要性を見分けるポイントは

海外では保険会社が医療費を支払いますので、できるだけ無駄な検査をなくそうという動きがあります。特に必要のない検査を行わないことによって保険の支払いを削減できる、という非常に資本主義・自由経済的な考えから「カナダ頭部CTルール」は作成されました。一時期は都内にあるCTの数はヨーロッパ全体のCTの数と一緒と言われた時期があるくらい日本ではCTが普及しています。

頭を打って軽症と思われた場合でも意識が無くなったりボオッーをしてる様子の場合はCT検査が必要となります。グラスゴー・コーマ・スケールは意識の状態を見分けるもので声をかけて目を開くか、しゃべれるか、手足を動かせるか、によって点数を付ける方法で点数が少なくなるほど重症度が高くなります。

  1. 頭を打って2時間経ってもグラスゴー・コーマ・スケールが15未満
  2. 頭蓋骨の骨折が疑われる
  3. 頭蓋底骨折の症状がある(脳髄液が鼻水のようにでる、目の周りが黒くなる)
  4. 2回以上の嘔吐した
  5. 65歳以上

このような症状がある場合はいくら痛みが弱いからといってもCT検査が必要です。逆に言えば意識の消失がない頭部の外傷の場合は「CT検査の必要はありせんよ」と言わることが多いはずです。

子供の場合、頭を打ったけどタンコブができたら安全は間違いです❗

昔から頭を強く打っても「タンコブができているから心配ないよ」って言わることがありました。でも、これは間違いです。タンコブは皮膚のしたの組織がダメージを受けて血液が溜まった状態の「皮下出血」の結果できるものです。頭を強く打ったら当然タンコブはできますので、頭蓋骨の損傷も考えられます。となると精密な検査としてCTが必要になる場合もあります。

しかし、ここで問題になるのがCTによる被爆です。「Cancer risk in 680 000 people exposed to computed tomography scans in childhood or adolescence: data linkage study of 11 million Australians」(BMJ 2013;346:f2360)という論文があります。この論文は

20歳未満の人がCT検査をうけると、検査回数に比例してがんの危険が増える

という衝撃的な内容です。この論文の対象となったなかで頭部のCT検査は59.6%とトップになっています。論文が書かれた時点より医療機器は進化しているので、CTによる被爆の量も少なくはなっています。でも、将来の発がんのリスクが無くなったわけではないので、検査による利益がリスクを確実に上回ることを判断してCT検査を行う必要があります。ですから、ご自分の子供が頭を打ったからといって心配だから、万が一のことを考えて「CT検査をお願いします」と言われても医師が同意しない場合もあるのです。

子供の場合、頭を強く打った時は驚きと痛みで泣きじゃくることがほとんどです。カナダ頭部CTルールで判断すること自体難しい状況になります。中には泣き疲れてねちゃう場合もあります。頭をうったことを見てた人にくわしい状況を聞いて、意識を失っていた時間があるようだったらCT検査は必要となります。特殊な例としては頭を強打して、その衝撃が強すぎて泣くことさえできない場合もありますので、子供の頭部外傷は医師泣かせだともいえます。頭のキズだけではなく、全身状態を慎重に診察してCT検査の必要性を判断しなければなりません。

酔っ払って頭を強打したオッサンの場合はどうすればいいか?

酔っ払って転んで頭を強打したオッサンの場合は、グラスゴー・コーマ・スケールを試しても頭部外傷のためなのか、酔っ払ってレスポンスが悪いのかの判断が難しくなりますよね。脳に損傷がある場合は嘔吐が症状の危険度判断の目安になります⋯でも、酔っ払ったオッサンの場合は単なる飲み過ぎかもしれません。

小さなお子さんの場合は医師もCT検査が必要か必要でないか、いくらガイドラインがあっても考えこんでしまう場合もあります。酔っ払ったオッサンの場合は困ってしまいます。そんな時は頭部CTのガイドラインとしてニューオリンズ基準というのがあり、それでは「アルコール依存症の場合はCT検査を行う」となっています⋯でもこのニューオリンズ基準ってカナダ頭部CTガイドラインより精度が落ちるとされています。

とにかく酔っぱらいのオッサンのCT検査は医師泣かせです。

CTがらみでこんなの情報はいかがでしょうか? 『タトゥー(刺青)を入れているとMRI検査が受けられない、という話は本当かな?

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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